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魔女の一撃をくらっても、人生は変えられる!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Ranun(ライティング・ゼミ6月コース)

 
 

「あぁっ!!!」
またやってしまった。
 

激痛、それは突然襲ってくる。腰をグイっとつかまれてハンマーで叩かれたような痛さ、そしてその刹那、ガチっと何かでロックされたような痛みをともない、身動きがとれなくなる。
 

ギックリ腰だ。
ここしばらく発症しなかったから、不意打ちをくらった気分だ。しゃがみこんでスマホを見たことを後悔した。ほんの1分ぐらいだったのに、立とうとした瞬間、事が起きてしまった。
 

これで何回目だろう。7回? 8回? 年に一度あるかないかだが、今回の痛さは人生最大級かもしれない。二日たった今も激痛は続く。時々うめき声を上げながら、あらゆる体勢でこの文章を書いている
 

書きながら、改めて思うことがある。
世間一般的に言えることだが、ギックリ腰って、悶え苦しんでいる当人とは裏腹に、まわりの人の反応が楽観的すぎない? ということ。マンガやドラマなどでも、ギックリ腰は面白ネタとしてよく利用されている。
 

しかし、わからなくもない。
さっきまで元気だった人が、突然「あぁっ!」と悲痛な叫びをあげ、一歩も動けなくなるうえ、変な動きをしようとするのだから。その姿が、なんとも滑稽に映るのだろう。
 

誰かが手を差し伸べてくれると、つい頼ってしまいたくなるのだが、その支えがかえって刺激になったりする。頼れるのは頑丈な棚や机のみ。
 

それらにしがみつきながら、ゆっくりと時間をかけて、恐る恐る、そーっと座る。と、また激痛が走り「あぁっ!」と言いながら、倒れ込むように横になり、痛くない体勢をもぞもぞと模索し、やっと落ち着く、といった具合だ。
 

寝返りはうてない、靴下は履けない、トイレに行くのもハイハイだ。便座に座ったら立てなくなるかもしれないという恐怖で、水分もとれない。一寸先のスマホに手が届かず、頑張って腕を伸ばそうものなら「あぁっ!」とまた叫んでしまう。
 

言っておくが、これは演技ではない。 
そばにいた息子が、あたかも吉本新喜劇の名演技を観ているかのように、ニヤリと笑みを浮かべていたことを私は見逃さなかった。
 

だが、もうなんとも思わない。
むしろ笑ってくれと思う。
そのほうが私も笑えて、少しは気が楽になる。
しかし一緒になって笑うと、また激痛にやられるから笑わない、咳をしない、クシャミをしない、が原則である。
 

こうして力尽きてしまった私は、うつらうつらしながら「ギックリ腰」または「ギックリ」というネーミングについて考えていた。
 

なぜ「急性腰痛症」という立派な正式名があるのに、多くの人は「私ギックリになりまして……」とか、「え? ギックリなの?」と言うのだろう。私の場合、ギクッとも、ギクリとも、音が鳴ったことなどないから不思議である。
 

海外の例をみてみると、ドイツでは中世の時代から「魔女の一撃」(Hexenschuss)と呼んでいるそうだ。突然激しい痛みに襲われ、動けなくなるのは魔女の仕業に違いないと考えたのだろう。
 

これはなかなかいい。
「ギックリ」よりよっぽど神秘的ではないか。
 

「昨日、魔女に一撃されたんだよね~」
なんて言えば、妖精の国の主人公になれそうな気がする。
 

いずれにせよ、この激痛を経験したことがない人にとって、痛みや辛さを理解するのは難しいだろうし、妖精の国の物語においては、コニカルなシーンに最適な素材となるだろう。痛みの感情は共感しづらいとも言われているから、しかたがない。
 

近ごろは、出産や陣痛の痛さを体験できる装置があるらしい。日本ではその施設がまだないようだが、オランダや中国、アメリカなどでは多くの人(特に男性)が挑んでいるそうだ。それならば「魔女の一撃」体験装置も作っていただきたいものだ。
 

さて、私はなおも考える。
この恐るべき「魔女の一撃」に立ち向かうには、どうしたらいいのだろう。
 

予防として、インナーマッスルを鍛えることや、ヨガやピラティスを取り入れることが大事だとはわかっていたし、ある程度実践してきたつもりだ。
 

腰回りやお尻の筋肉量をアップさせると、背骨を支える体幹が整い、腰への負担を軽減することができる。
 

しかし年齢とともに自然に衰えていくものらしいので、もう少し強化していかなくてはならないと感じた。
 

早く治したければ、安静にするより適度に動いたほうが良いということも、今までの経験から承知の上だ。しかし今回は鎮痛剤を飲んでも、コルセットを巻いても、なかなか動けずにいる。これも年のせいか?
 

机に向かっても、長時間同じ姿勢が保てず、集中してPCに向かうことは不可能に近い。それでも私にはどうしてもやるべきことがある。2000字の文章を毎週提出することだ。長時間机に座れないなら、細切れの時間を繋げればいい。
 

そう考えて、なんとか書き進めていると、ふと見えてきた課題や反省点がある。
 

そもそも私は2000字の文章を書くのに、ものすごい時間がかかっていた。校正を含めると、恐ろしいほどの時間を費やしていた。
 

皮肉ではあるが、この座りっぱなしの姿勢が長すぎたために、腰痛を引き起こした可能性もある。
 

だったら、もう少し早く書けるようにすればいいじゃないか、となるわけだが、なかなかそうもいかない。
 

切実だ。
人生を変えるライティングのはずが、魔女に撃たれて違う人生を歩んでは悲しすぎる。2000字の文章を一気に書ききれるよう、なんとか早急に訓練したいと思う。

 
 
 
 
***
 
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2024-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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