ふるさとグランプリ

おかえりと言ってくれるメンチカツ《ふるさとグランプリ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:カワノフミノリ(ライティング・ゼミ)

ふるさとに帰ったとき、どのタイミングでふるさとに帰ってきたと実感するだろうか。
新幹線や飛行機から降り立ったときだろうか。
家までの道の懐かしい風景を見たときだろうか。
家に着き、家族にただいまと言ったときだろうか。
私の場合はどれでもない。メンチカツを食べたときだ。

私には大学生のときに常連だった定食屋がある。
その時住んでいた部屋から歩いて5分くらい歩いたところにある、見た目はただの民家ような定食屋。
近づくと玄関とは別にもう一つドアがあり、立ち看板が置いてあって、それで定食屋だと分かる。
中は手作り感溢れるログハウス風で、カウンター4席、テーブル席2卓とこじんまりしている。昼どき、夕飯どきとなれば、いつも満席だった。
メニューは、からあげ、チキン南蛮、カツとじ、焼肉などなど、どれも学生の食欲をそそるものばかりだが、行ったら必ず一度は食べるべきものがある。
それがメンチカツだ。確かに他のメニューも旨いのだが、私の中ではメンチカツが一番なのだ。
げんこつ大の大きさのものがどーんと2つと学生でも満足するボリューム。
少し硬めで、何か香辛料を混ぜているのかとても香ばしい衣。
かぶりつけば、たてまち溢れてくる揚げたての熱い肉汁。
うまい! 
食べた後は必ず毎回口に出して言わずにはいられない。間違いなく私の人生で最も旨いメンチカツだ。
初めて食べたときから、旨いものが食べたいと思ったときは、迷わずメンチカツを食べに来た。
そうやって何回も通っているうちに、自然と店の人とも仲良くなった。
物腰が柔らかく、とても話やすい女将さん。
滅多に見ることはないけど、奥で黙々と料理を作ってくれるご主人。
顔だけでなく名前まで覚えてもらって、終いには「いつもの」と頼めばメンチカツ定食が出て来るようにまでなった。
メンチカツだけでなく定食屋そのものも私のお気に入りになっていった。

その定食屋に通うようになってからの初めてのクリスマスの日。
私は当時付き合っていた彼女とイルミネーションを見にドライブに出掛けた。
けれど、私が少し遅れたせいで大渋滞に巻き込まれてしまった。
ナビに聞いてみても、イルミネーションが終わる時間までに目的地には辿り着けそうになかった。
車内の雰囲気は悪くなっていき、遅れる原因を作ってしまった私に、だんだんと隣の席から鋭い視線刺さる。
これはやばい。これ以上雰囲気を悪くすると喧嘩になるかもしれない。それにさっきからすごーくお腹も空いている。
そう思った私はイルミネーションは諦めて旨いものを食いに行くぞと、車をUターンさせた。
目的地は当然いつもの定食屋だった。
着いたとき彼女は顔は明らかに「え、旨いものってこの民家?」という顔をしていて、機嫌はさらに悪くなったようだった。
気づかないふりをして中に入ってみると、さすがにクリスマスだからか、客はひとりもいなかった。
女将さんにも
「あれ、クリスマスなのになんでうちなんかに来たの?」
と言われる始末。
ともかく来てしまったものは仕方ないし、お腹はとても空いていたのでメンチカツ定食を2つ注文した。まだ彼女の表情は変わらない。
彼女の機嫌をどうにかしなければと、食後のプランを考えていたとき、お盆に載って救世主が現れてくれた。
その救世主はいつもの姿ではなく、見たことのない特大のハート型をしていた。 
それを見た途端、彼女の表情はぱっと明るくなり
「え、可愛い、なにこれ!」
とはしゃぎだした。どうやら危機は去ったようで、ハート型メンチカツによって私は救われた。
「ハート型なんて初めて見ましたよ、どうしたんですか?」
と聞いてみると、女将さんは
「うちの主人の茶目っ気が出てしまったみたいで、せっかくのクリスマスにうちなんかに来てくれたからその御礼だって」
なんて可愛くてロマンチックなご主人なんだろう。その日は厨房の奥まではっきり聞こえるように、
「美味しかったです、ご馳走様でした!」
と彼女と二人で言って帰った。その日以来、ちょっとした記念日などは
「メンチカツ食べに行こう!」
と、彼女から進んでその定食屋に行こうと言われるようになった。
そんなことあってからメンチカツを食べるときには、ご主人への感謝も込めて食べるようにしている。

その後も事あるごとにいろいろとお世話になった。
内定をもらったときは真っ先に食べに行った。
無事、卒論を提出したときにも食べに行った。
東京に行く前日にも、メンチカツとの別れを惜しむ為に食べに行った。
その度に、メンチカツは毎回とても旨くて、変わらない満足感をくれた。
いつしかメンチカツはたくさんの出来事を経て、とても心の休まる、ほっとする場所になってしまっていたのだ。

今は東京に住んでいるから前のように通うことはできない。
けれど、福岡へ帰省する度に一度は、その定食屋を訪れるようにしている。
メンチカツを食べ終わったとき、その変わらない旨さに満足感を感じる。
今までの思い出が蘇り、そして私は心から「ただいま」を言える。

***

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