メディアグランプリ

世界で一番素敵な食べ物。


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記事: 猫町ふゆ(ライティング・ゼミ)

以前、中国に二週間ほど滞在したことがあった。
名目は、海外研修、短期留学だ。内容は、日本語での中国法の歴史の講義、裁判所見学、現地企業見学、観光。
勿論、メインは勉学なので、寂しいが観光はちょっとだけである。

驚きと発見だらけの中国滞在は、盛夏の頃だった。
飛行機で北京に着いたとき、想像していたよりも日本と変わらない町並みにまず驚いた。
バスでホテルに向かうときに、日本と変わらないじゃないか。良かった、といろいろ不安だった友人と一緒にほっとした。
と思った、次の瞬間。
クラクションと怒号。
中国では、日本と交通事情が大部違うようで、高速道路のようなスピードで一般道路を走る、走る。もはや、爆走。
すると、事故になりかけることもあり、また自分の意見をしっかり大きな声で主張する人が多いので、つい怒号がおきることもある、と、現地のガイドさんは苦笑しながら解説する。
そうですか、とつられて笑う私。
でも、映画の撮影並みのじゃないですか。このスリルは。
今まさに交通事故で死ぬのではないかしらん、と命の危機を数回感じた。
だが、3回までは数えて、いろいろ諦めた。
私が数えるのを止めることにしてから、しばらくして、目的のホテルに到着。
しかし、私は病人のようにぐったりしてしまっていた。
海外では、絶対に車の免許とるもんか、と心に誓ったのは言うまでもない。

そんなバスやタクシーなど交通面以外では、
映画のような命の危機を感じることなく、
テレビドラマのようなラブロマンスが生まれることもなく、
ホテルでも大学でもごくごく普通に、いたって平穏無事に過ごした。
だから、特に不便だと思うことはあまりなかった。
勿論、言語は違うけれど、私は第二外国語で中国語を選択していたし、漢字は日本のものと似ているものも多いし、通訳をして頂く現地のスタッフも常にいてくださった。
料理に関しても、どうしても味付けや現地の水が合わなくて、体調を崩してしまう人もいたが、私はけろりとしたもので、食欲がおちることもなく元気にすごしていた。
トイレなどの衛生面や、治安面での心配も多少はあったが、同行してくれている教授やスタッフ、それに現地に住む温かい人たちのおかけで、とくに苦労することなく過ごすことができた。
ある一点を除いて。

唯一の問題点は、おにぎりが食べられなかったことである。

お米は中国でも作られているので、お米が食卓に上らないことはない。
ないのだが、基本的にはおかゆなのだ。
しかも、ないときもあったりする。……かなしい。

炊いたお米も一度出てきたが、水加減かお米の種類が違うせいか、いつも食べているお米とは全く違う味がした。……かなしい。

そして、おにぎりは一度も食卓に出てこなかった……。
もしかしたら、こういう場合でないと食べられない中華料理を食べさせてあげようというスタッフさんのご配慮なのかもしれない、と思い、勇んで現地のスーパーで探してみた。
しかし、なかったのである。……かなしい。
あのパリパリした黒い海苔でまいてある、魅惑の白いお米の集合体。
うう、食べたい。
研修は充実して、とても満足している。でも帰りたい。帰って、食べたい。
でも、まだあと一週間研修は残っている! ああ!

その時、思った。
おにぎりって、生きがいだ。ソウルフード、といった方が良いのかもしれない。
無いと、生きていくのが辛くなる。
いや、もちろん、一日に必要な栄養を摂取するのに、なんの問題もない毎日だったのだが、他のものでは、このかなしい気持ちを埋めることができなかった。

誰かが握ってくれたお米。たったそれだけのもの。
だけど、そこにはお米とたくさんの思い出が詰まっていて、食べると、ほっとして嬉しくなる。なんだか、優しくなれる気がする。
すこし大袈裟かもしれないけれど、「生きてるってスバラシイ!」と思ってしまう。

それは、きっとおにぎりの包容力のおかげなのではないかと思う。
梅干し、おかか、昆布の佃煮、高菜、ツナマヨ、明太子、照り焼きチキン
どんな具材がきても、どーんと受け止めて包み込む、度量の広さ。

その広さは、並みではない。
「絶対に合わないだろう」と思うようなチーズと梅干しでも、最終的には「おいしい!」と言わせてしまうし、
海苔以外でも、お肉、しそ、何を巻いても「おいしい!」を引き出してしまう。すごい、の一言に尽きる。もはや、フリーダム。

そして、食欲旺盛な幼い子供も、忙しい大人も、あまり量を食べられないお年を召した方でも、おにぎりはすんなり食べられてしまう。
おにぎりは、食べる人に合わせて様々に変身できるからだ。
こんな食べ物は、包容力に溢れる食べ物は、きっと他にない。

おにぎりは、世界で一番素敵な食べ物だ。
そして、世界で一番、可能性を秘めた食べ物ではないだろうか。

これからもきっと、コンビニやお弁当屋さんで、今までに見たこともないおにぎりが生まれてくる気がする。
いろいろな人の好みに合わせて、変身できる力がこんなにもあるのだから、不可能ではないはずだ。

例えば、焼おにぎりがあるのだから、もしかしたら、揚げたおにぎりや、スナック感覚で食べられるおにぎりも出てくるかもしれない。

なんだか、わくわくする気持ちで、今日も私はおにぎりを食べる。
***

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2017-03-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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