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卒業式の日に「ずっと友達」と言い合った仲間と、ずっとは一緒にはいられない


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記事:土田ひとみ(ライティング・ゼミ)

 

「卒業してもずっと友達だからね!」

 

涙を流しながら友達と抱き合った。これから先、遠く離れる者も、近くに住む者もいる。高校の卒業式となれば、幼稚園の頃からずっと一緒だった友達もいる。そんな仲間と、初めて離れ離れになり、新たな地へと旅立っていく。

 

お弁当を一緒に食べて笑い合った。

同じ人を好きになってギクシャクしたこともあった。

喧嘩もしたけれど、仲直りした時にはもっともっと好きになった。

 

そんな友達と「ずっと友達」でいたいと願うのは当たり前のことだ。

 

「遠くに行くけど、メールするからね!」

「夏休みには絶対集合しようね!」

 

涙で崩れたメイクを何度も直しながら、記念撮影をしまくる。

 

「卒業しても、うちら、ずっと友達だからね!」

 

何度もハグをし、そして、それぞれの道へと旅立った。

 

 

高校を卒業してから15年が経つ。

15年経ってみて思うのは、あの時笑い合った友達と「ずっと一緒につるんでいる友達」ではないな、ということだ。悲しいけれど、私はそうだ。

 

高校を卒業した後、大学に行く人もいれば、私のように専門学校に行く人もいる。地元に残る人もいれば、遠くに行く人もいる。

どんなに仲が良くても、遠くに住んでいればいつもつるむことはできない。失恋して泣きたい時に、時々電話することはあっても、「今日ご飯行こう」という誘いをすることはできない。そうすると、どんなに仲が良かった友達でも自然に疎遠になってしまうのは当たり前のことだ。

 

新しい学校でうまくいっている時はそんなに気にならない。だけど、何かにつまづいた時や、新しい友達とうまく馴染めなかった時は痛感する。

 

「こんな時、高校時代の親友がそばにいてくれたら……」

 

センチメンタルになり、親友にメールをしてみる。

 

「元気? 久しぶりに写真見てたら懐かしくなったよ」

 

送った後、なかなか返ってこないメールにへこむ。高校時代はどんな時も速攻、返事が来たのに。一人暮らしの部屋で、ポツンと卒業式のアルバムを見ていたら、懐かしくて、寂しくて、涙が滲んでくる。

涙が溢れる一歩手前で、ケータイが鳴る。親友からのメールだ。

 

「元気だよー。どうしたー? 私もいつも思ってるよー、アイシテル!」

 

男の子には恥ずかしくてなかなか言えない「アイシテル」を女同士なら気軽に使える。アイシテルと言い合う私たちは、今でも「ずっと友達」、両思いだ!

嬉しくなった私は、アイシテルと言ってくれた女を愛おしく思い、思わず電話をかける。

 

プルルルル……

「私もアイシテルよー! さみしいよー!」

 

親友が電話に出た途端に、思いっきり甘えてみる。

が、もうれつに温度差を感じる。

 

「ごめん、今さ、サークルの飲み会に来てて。どうした? 何かあった?」

 

飲み会で飲んでいるはずの彼女の声は思った以上に低く、シラフのはずの私の声は馬鹿のように高かった。

急に冷め、恥ずかしくなった私は、私も忙しいのだ、という風に話して早々に電話を切った。

 

「なんだよ。アイシテルんじゃないのかよ……」

 

一人でいじけ、それからアイシテルはずの彼女に連絡することはあまりなくなった。

 

卒業後、初めての夏休みに、いつもつるんでいたメンバーで集まることになった。

「ずっと友達」と言い合っていた仲間だ。何も言わなくても通じ合っているだろう、と思っていたが、甘かった。

 

高校卒業した後、大概の大学生は見た目が激変する。

大人しそうだった子が金髪になっていたり、制服をカッコよく着こなしていた子が意外と地味になっていたりする。話す話題も、進んだ進路先で大きく変わる。女子が集まれば必ず花が咲く「恋バナ」でさえも、近況報告をしているチームと、していないチームでは、話がついていけなくて分裂してしまう。

「ずっと友達」と言っていたはずなのに、高校時代のようには通じ合えない。そのことがとても寂しくて、私は永遠なんてありえないのだと絶望した。

 

社会人になり、結婚する人がちらほら出てきてライフスタイルが変わり始めたら、ますます「ずっと友達」のはずの仲間とは疎遠になった。「毎年夏休みには集まろうね」と言っていた約束も、一人抜け、二人抜け、いつのまにかなくなってしまった。

それはそうだ。

子育てに追われている友達に、不倫のドロドロした悩み相談なんてできないし、結婚を早くしたいと嘆いている友人に、子供の教育については話ができない。みんなそれぞれ、生きているステージが違うのだ。だから、自然と付き合う友達は、似たような境遇の友達に偏ってきてしまう。家庭環境も、経済状況も、取り組んでいることも、全てが違う仲間とは、積極的に会おうとはしなくなってしまうのは避けられないことだ。

 

友人の結婚式があれば再会することもあったけれど、結婚ラッシュが過ぎてしまえば、めっきり会う機会がなくなってしまった。

 

「卒業してもずっと友達か……。あの時は言ってたな」

 

そんなことを思いながら、私は実家にしまいこんでいたアルバムを眺めていた。

出産を控えた私は、久しぶりに長期間実家で過ごすことになったのだ。退屈しのぎに何度もアルバムを開いているうちに、写真の中にいる友達に会いたくなってしまった。

 

「思い切って連絡してみよう」

 

かつて「アイシテル」と言いまくっていた友達たちに、一斉に連絡をした。

 

「出産のためしばらく実家にいます。久しぶりに会おう」

 

そして、何年かぶりに友人たちと再会したのだ。もちろん、彼女たちの今生きる道はそれぞれだ。私とは全く違う人もいれば、共通したところがある人もいる。久しぶりに会った彼女たちと話す話題といえば、一緒に過ごした高校時代の話だ。

 

「あの時ああだったよね」

「あの時めっちゃ笑ったよね」

「あの時なんで喧嘩したんだっけ?」

 

ただそんなことだけを話していた気がする。別に悩みが解決するわけでもない。仕事に活かせるわけでもない。だけど、あの頃を思い出して笑ったり、ちょっとだけ切なくなったりして、とても楽しかった。

 

彼女たちとまた会いたいと思った。

正直、また来週すぐに会いたいとは思わないけれど、また来年、こうして昔話ができたらいいな、と思う。一年後、もしかしたら数年後になるかもしれないけれど、また彼女たちと再会して、高校時代はああだった、こうだった、と同じ話をしたい。何も進歩がなくていい。ただ、高校時代のように笑い合いたい。

 

ライフステージが変わっても、遠くに住んでいて疎遠でも、「ずっと一緒にいる友達」ではなくなっても、「何年ぶりに会ってもずっとあの時のままの友達」でいられたらいいな。

 

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2017-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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