ふるさとグランプリ

京都に来て「一見さんお断り」と言われても怒らないでほしい。《ふるさとグランプリ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ほそきはら あきとし(ライティング・ゼミ)

 

「……いつも東海道新幹線をご利用頂きありがとうございます」

「次は京都、きょうとです。 13番線に到着します」

「左側のドアが開きます。 次は新大阪に止まります」

 

みなさんは、どれだけ京都に来られたことがあるだろうか。

京都にはたくさんのコンテンツがあり、多くの人を魅了してきた。

 

その中で、異彩を放つ存在のウワサ話が広がっている。

「京都には一見さんお断りの店がある」

 

みなさんも一度は耳にしたことがあるフレーズではないだろうか。

今では、祇園白川や先斗町界隈にそれぞれ数十件しか残っていないと思うが、

世界各国、日本全国から訪れる観光客からすれば、到底理解できないことだと推測できる。

 

友人の滋賀県民、大阪府民に言わせると、京都人はこう見えるらしい。

 

「京都人はもう数百年続いている伝統を振りかざし、時代と逆行していることを平気でする」

「京都人の気質は、難しい。 性格の裏表が垣間見える」

「京都人は大人しすぎる、ノリが悪い」

 

散々な言われようだ。

 

京都に興味がある方ならご存知だと思うが、京都の代名詞となる“京の花街”の一つ、

先斗町という所は狭い路地にいくつものお店が連なってできている。

よく時代劇に出てくる“長屋”をイメージして頂けるとわかりやすいのではないだろうか。

 

そこには、すき焼きの名店、おばんざい専門店、お茶屋、フランス料理を提供するお店からスナックまで多種多様。 それぞれに個性があり、様々な嗜好をした内装の質感、おいしそうな香り、各店主との会話、そして見た目にもきれいでおいしい料理で訪れる客を五感で刺激してくる。

 

あぁ、それぞれの店舗が出す料理を想像するだけで、その妄想を肴に酒が飲めそうだ。

 

もちろん、その店舗の中に「一見さんお断り」というお店もある。

実は私もみなさんと同じく一見さんお断りの店には入ったことがない。

だって、そんな所に出入りできるような知り合いは、一般的サラリーマンの私にはいないのだ。

 

体験したことがないから行ってみたくなる。

一体お店の中はどうなっているのか? 私の好奇心をくすぐる。

 

みなさん、一見さんお断りシステムについて、どうお考えだろうか?

私なりに考えてみることにして、仮説を立てそれを検証してみる。

 

私の仮説はこうだ

“「一見さんお断り」なのは、その界隈のお店の店主たちに憩いの場を提供しているのではないか”

 

京都にかぎらず、知り合いの個人事業主は、口をそろえて休みが取れないと言っている。

身を削るように働いたあとに訪れるひとときの休息こそ、

気の合う仲間といつもの世間話や、この界隈を更に盛り上げる相談をしたいはず。

そういう話を安心してできる場を求めることは、当事者ではない私でも想像がつく事だ。

 

「それなら一見さんお断りじゃなくて、会員制クラブにすればいいじゃないか」

そう思われる人もいるかもしれないが、それでは高い入会料を払う稼ぎがある人しか入店できない。

 

しかし、私の思う「一見さんお断り」システムは、紹介制。

常連が認めて連れてくれさえすれば、若輩者でも学生でも誰でも入店できることを意味している。

もちろん常連が連れてくるわけだから、その人に関連した趣味や思考を持った人物だ。

 

……私はここまで考えてようやく理解できた。

 

“一見さんお断りの店”は、“電車の総合指令本部”なのだと

電車の総合指令本部というのは、運行している電車のすべてを監視して、快適で安全な運行を司る場所だ。

それが実現されているのは、各鉄道の総合司令室がすべての電車の行き先を把握し、

常に車掌や運転手、駅員と連携をとっているからだ。

 

しかし、その裏には、車掌や運転手、駅員を含む社員全員が普段の傾向を察知し、日々路線や運行方法の不良・改善提案に関するフィードバックを総合司令部が分析し、膨大な時間を費やして対策しているからこそ、その揺るぎない信頼性に結びついている。

 

「日本の電車運行システムは素晴らしい、どの都市の電車でも基本的に時間通りに発着する」

「しかも、たった1分遅れても謝罪してくる。 世界に類を見ないほどすばらしい、クレイジーだ」

と同僚が言っていたことを思い出した。

年間約12万本を運行する東海道新幹線の「1列車あたりの平均遅延時間36秒/平成23年度」なんて、「神ってる」と言っていい。

 

「一見さんお断り」という店の中でも、平安京に始まる“いにしえの時代”から、京都に暮らし、京都を愛する同士が集結し、最近の動向や将来展望、その街の活性化を願い、同志を集め、もしかしたら京の都自体を変えるプロジェクトを、四季を感じさせる料理とお酒を交えながら熱く語る文化があるのではないか。そしてそこから得た情報を元に自分の店や周りの店主を巻き込んで、それぞれに個性的だけど、全体として統制の取れた町並みになるのではないか。

 

だからこそ、京都が世界の魅力度ランキングでも上位を席巻し続けているのだろう。

 

そして気付いた。そうか、かつて寺田屋や近江屋で坂本龍馬が毎晩のように酒を飲みながら日本を変革するようなとんでもない計画を、わざわざ新撰組のいる京都の地でしていたのは、京都にそんな文化があったからではないだろうか。

 

だからみなさん「一見さんお断りなんです、すみません」と言われても怒らないで欲しい。

次にみなさんが京都を訪れたとき、“一見さんお断り”の店から発信された強い“意志”たちが各店舗に散らばり、京都のあちこちでより良いコンテンツに変貌し、出迎えてくれるのだから。

 

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