ふるさとグランプリ

素朴なあなたを愛しています《ふるさとグランプリ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講申込みページ/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変える!「天狼院ライティング・ゼミ」《日曜コース》〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
【東京・福岡・京都・全国通信対応】《日曜コース》

記事:ばんり(ライティング・ゼミ)

 

「大分の名物といえば?」

大分県民以外の人にこう聞けば何て回答が返ってくるのだろう?

筆頭候補はからあげだろう。

今や大分はからあげの聖地と言っても過言ではない。

最近は、中津からあげや宇佐のからあげなど大分の地名と共にからあげを見かけることも多くなった。

コンビニに行ってもレジの前にはドーンとからあげが陣取り、コンビニでは外せないスナックとなっている。

一口かじるとサクッとした衣にジューシーな鶏肉、嫌いな人はいないんじゃないかと思うほど、からあげは魅力的だ。

 

また、からあげに似た鳥天を知ってる人がいるかもしれない。

鳥天はからあげと違い、小麦粉をつけ揚げるのではなく、天ぷらのように水で溶いた小麦粉に下味をつけた鶏肉をいれ、さっくりと揚げる。出来立てをじゅっと言わせながらポン酢の小鉢へ投入。衣がふやける前にさっと引き上げ、少しのからしをつけ、頬張る。

何とも言えない幸福感が口の中に広がる。

やっぱりからあげと鳥天は甲乙つけがたい大分の名物である。

 

今日はそんなに魅力的なものではない。

 

おそらく大分県民以外はほとんど知らないであろう大分のソウルフード「びっちょ」について紹介しようと思う。

びっちょと聞いてまず食べ物だと想像できる人がどれくらいいるのだろう? おそらく1割にも満たないと思う。

びっちょとは各々の家庭で古くから作られるきしめんのような小麦粉料理のことを指す。

材料は至ってシンプルで、地粉と呼ばれる田舎の小麦粉、ひとつまみのお塩、水を適量入れるだけだ。3つの材料を混ぜ合わせ後は耳たぶの固さになるまで力を入れて「ぎゅっぎゅっ」とこねていくだけである。

こね終わったらウィンナーの一回りほどの大きさに丸めぎゅっとしぼったさらしを上にのせ、30分以上休ませる。

 

休ませたあとは楽しい成形タイム。

細く長くちぎれないように丁寧に伸ばしていく。

生地は休ませれば休ませるほど伸びがよくなる。

 

幅は2、3cmおおよそビニールテープぐらいにし、細くなりすぎないように気をつける。そして、長さが40cmぐらいに出来ればパーフェクトだ。

 

このびっちょをそのまま熱湯で茹で、

きなことお砂糖であえれば、

昔ながらのおやつ、大分名物のやせうまの完成。

 

茹でたてのあつあつをきなことお砂糖で味わうなんとも素朴なおやつだが、たまに無性にたべたくなるふるさとの味である。

 

 

また、寒い冬には大分名物のだんご汁もはずせない。ごぼうや人参、里芋、干し椎茸など好きな具を入れた汁を用意し、そこにびっちょを投入し、ゆであがる直前に味噌をとく。

栄養もボリュームも満点なだんご汁の完成だ。

冬になるとよく母が作ってくれたが、外気にさらされ冷えた体をあたためてくれる冬の定番のお汁だった。

 

びっちょには唐揚げや関アジのような派手な魅力はない。

 

びっちょそのものが主役になることもないし、一口食べて驚くような感動を味わうこともない。ただひたすらに素朴で、ほっこりとしたまろやかさが残るだけである。

 

しかし、私は思う。

びっちょは大分の家庭料理の中で、大変重要なポジションを占めている。

 

なぜなら家族で作ることのできる料理だからだ。

 

お母さんと娘と行った親子や、夫と妻といった夫婦。また、おばあちゃん、お母さん、子供の三世代でびっちょを伸ばし作ることが出来るからだ。

 

母が台所にたっている手伝おうとしても、包丁を持っていたり、油で何かを揚げていたりして手伝えないことが多い。

また、手伝う機会があっても母はフライパンで何か炒め物、私はシンクで野菜を切ってサラダ作りと言ったようについつい分業になりがちである。

 

でもびっちょは別だ。

 

びっちょを伸ばすだけなら台所じゃなくても居間で出来るし、みんなで話しながら和やかな雰囲気で作ることが出来る。

「見てみて、お母さんよりきれいに伸ばせた〜」

「う〜ん……失敗した、こんなに短く切れちゃった」

こんな風にびっちょには自然と会話は弾ませ、みんなを笑顔に出来る魔法がある。

 

小学校の頃の親子料理教室の写真。

りんごほっぺに丸顔の私が三角巾とエプロンをつけ、

一生懸命母や友達と作っていたのもびっちょを入れただんご汁だった。

 

ただ毎日ひたすらに友達と笑っていた高校時代。

クラスのみんなでおそろいのTシャツを着て、

段ボールで作った看板を掲げながらピースをしていた写真には、

やせ馬一皿100円の文字があった。

 

こんな風にびっちょはいつも笑顔とともに思い出の中にあった。

 

素朴なびっちょがいまだ大分県民に愛されているのは、

びっちょから伝わる愛情があるからだと思う。

 

べつに特別に美味しくなくてもいい。

 

家族や友達とともに伸ばしたびっちょや

お母さんが家族を思いながら伸ばしたびっちょには

たくさんの愛情が込められてるからこそ美味しいんだと思う。

 

そこに各々の家庭オリジナルのみそ汁や具材、きなこの甘さが

加わり、私だけの特別なびっちょになるのだ。

 

私もいつか大切な人が出来たら、からあげだけでなくびっちょを作ってあげたい。たくさんの愛情のこもったびっちょをね。

子供ができたら昔の思い出を話しながら、子供といっしょにそーっと長く伸ばすのだ。

 

でもまずは今度のゴールデンウィークにしようかな。

「お母さん、久しぶりにびっちょ一緒につくらん? お父さんも一緒にね」

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/fukuten/33767

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



関連記事