雨の朝はアスリート
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記事:鍋倉大輝(ライティング・ゼミ日曜コース)
ジリリリリリ。
けたたましい音を立て携帯のアラームが鳴り響く。
昔は小洒落た音楽をアラームに設定していたのだが、社会人になり一度盛大な寝坊をやらかして以来、アラームの音はとことんこだわって不快な音をチョイスしている。
目覚めた時の気分は悪いが、寝坊するよりはマシである。
もし音源が欲しい人がいれば配ることはやぶさかではないが、使って見て気分を損ねても文句は言わないで欲しい。
起き方、に関しては置いておいて、起きること自体は出来るはずだ。
本来の目的に対しては十分な効果を発揮するだろうから、あいにくクーリングオフは受け付けていない。
そんな不快な目覚まし音で目覚めた今は、朝の6時。
最近私は、朝早く起きて、明け方に自分のやりたいことに集中して取り組むことにハマっている。
取り組む内容はその日によって様々で、を書くこともあれば、読書をすること、勉強することもある
ソーシャルゲームのイベントを消化するといった自己研鑽からは外れたことをする日もある。
やることは何でもいいのだ。
朝早く起きて、自分のやりたいことをこなす、というのが重要で、好きなことから一日を始めるのは気分がいいものである。
それに加えて、慢性的に帰りが遅く、夜にはあまり自由な時間が取れない私にとって、一日の始まりのこの時間はかけがえのない自由な時間だ。
この些細な時間が私にとって非常に重要で、睡眠時間を少し削ることになってでも確保することにしている。
多忙な日々の中、心の安らぎを保つにはやりたいことをやれる時間を作るのが一番なのではないかというのが私の持論だ。
そんなかけがえのない私の朝の時間なのだが、雨の日には様子が一変する。
雨の日には、私はアスリートになる。
午前6時、いつもと同じように鳴り響くアラーム。
ただ、少しいつもと違うところがある。
そう、私が起きない。
一人で虚しく鳴り響くアラーム。
諦めたかのように一度鳴り響くのをやめ、スヌーズモードに入る。
数分の間隔を起き、アラームは何度も私を起こそうとしてくれる。
おい、お前の大事な自由時間、なくなるぞ。
そう言っているかのように私の鼓膜を揺さぶる。
それでも起きない私。
自分でもイマイチ明確な原因がわかっていないのだが、雨の日はどうしても起きることが出来ない。
気圧の問題なのか、朝日が差し込まないのが問題なのか、はたまた単純な気分の問題なのか。
雨の降り注ぐ、ザーっというホワイトノイズに安眠効果があるがゆえに目覚めの妨げをするという説もある。
きっと何かしらの原因があると思うのだが、雨の日はどこか頭が重く、起きることが出来なくなってしまうのだ。
今までの体験上、雨の日には頑張っても気分良く起きることが出来ないということがわかっているため、雨の日私はギリギリの戦いを挑むことにしている。
私を起こしてくれないのであれば、望むところだ、いっそのことギリギリまで寝てやるぞというよく分からない雨に対する対抗心である。
晴れの日と同様に鳴り響くアラーム。
時間は午前6時。
当然まだ起きない。
そこから数分おきに繰り返されるアラーム。
6時半、7時、一度目を覚まし、携帯の画面で時間を確認するものの、まだまだ起きない。
よし、まだ行ける、と再び目を閉じる。
7時15分、7時30分。
そろそろ起きるモードに入らないとヤバイな、と心の片隅で思い始める。
まあ、とは言ってもまだ大丈夫だろ、と再び目を閉じる。
8時、8時15分。
いよいよ本格的にまずい時間帯になってきた。
まだ粘れるが、もう先は長くない。
数分刻みでアラームをセットし直して、ギリギリまで粘ろう。
8時18分、8時21分。
うーん、もう少しだけ粘れるな。
よし、ひとまず30分にセットしておこう。
8時30分。
よし予定通り。
一息ついて起きよう。
一瞬だけ目を閉じる。
そう、一瞬だけ。
のはずだったのだが。
9時。
思わず目を疑う。
寝ぼけていた頭が一瞬で目覚め、目の前の現実を理解する。
ヤバイ、これはヤバイ。
それもそのはず、私の勤める会社の始業は9時30分。
ありとあらゆる準備を死ぬ気で済ませ、9時に目覚めた私は9時4分に家を出る。
大通りまで走り、タクシーを捕まえ、
「一番早いルートで、お願いします」
息を切らしながらそう伝え、あとは祈るのみ。
これが私と雨の日の戦いの様子である。
いかにギリギリまで寝ることが出来るか。
自らの睡眠記録をどこまで伸ばすことができるか。
朝やろうと思っていた、あれをやめればあと数分は寝れるはずだ。
準備のスピードをあげればあと1分は寝れる。
アスリートがありとあらゆる手段を講じて自らの記録を伸ばすかのごとく、私もまたありとあらゆる手段を講じて自らの記録を伸ばしている。
気分の重くなりがちな雨の朝。
そんな雨の朝を少しでも有意義に過ごすべく私はいつも自分と戦っている。
そんな今の時間は、7時2分。
今日は6時に起床し、記事を書くことに時間を使うことにした。
外の天気は、言うまでもないだろう。
お察しの通りだ。
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