社会は戦場だ。モビルスーツを乗りこなせ!
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記事:サンディ(ライティング・ゼミ日曜日コース)
我々の住む社会は戦場だとつくづく思う。
大学卒業時は、社会人生活がこれ程辛いとは思わなかった。
日々、成果を求められ、当然納期遅れは許されない。やっと築き上げた信頼関係も1度のミスで台無しになってしまう。そしてプロジェクトが完了し、次のプロジェクトが始まれば昨日まで共同で仕事をしていた仲間が説得の対象、つまり敵になってしまうことだってあり得る。まさに戦場だ。
このような経験は社会人であれば多かれ少なかれ誰にでもあると思う。
皆、当たり前のように淡々と仕事をこなすように見えて、スーツや作業着といった戦闘服に身を包み、日々見えない敵と戦っているのだ。
そんな社会の中、共通にして最大の武器がある。
どの職種にも当てはまる最強の兵器、それが「才能」である。
「才能」という言葉はやや漠然としているが、細かい定義はここではしない。
敢えて言うなら先天的、後天的にかかわらず、
「努力しても、この人には追いつけない」
と思わせてしまう力という意味でこの言葉を使う。
実際に私は自分の「才能のなさ」に随分と苦しめられた。
頭の回転が遅い、資料作りが下手。
ある程度「慣れ」や「努力」で克服できるものの、「圧倒的にできる人」を前にすると自分の無力さに絶望的な気分になる。アホくさいことに嫉妬までした。
勿論、理想に近づけるように努力はする。
しかし、才能があると私が思っている人達との差は開く一方だった。
毎年、毎年苦しかった。
1年が過ぎ、新しい後輩が入ってくるたび、部署異動で新たな出会いがあるたびに周囲の人が放つ眩しい才能に憧れ、嫉妬し、同じようにできない自分を責めた。
だが、ある時ふと思った。
一体、私は何をやっているのだ。
人を羨み、自分を蔑みながら毎日を過ごして何が楽しいというのか。
そんな自問自答を始めたのである。
きっかけは当時の職場の事業所長に飲みにつれていってもらった時である。
当時の事業所長は「ポンコツ社員」の代名詞であった私を「珍しい奴」「面白い奴」という理由で何かと気にかけてくれ、よく仕事帰りにゴルフや飲みに連れて行ってくれた。
部署異動で離れてしまった今でも、感謝しきれないくらいの恩人である。
その事業所長と、私と、先輩社員の3人で飲んでいた時に学歴の話になった。
そこでの事業所長の持論はこのようなものだった。
「学歴というのは幼少期から大学を卒業するまでの間、せいぜい20年弱の知識の総和だ。しかもその知識のうち、仕事で役に立つ知識は一部分だ。一方、社会人として働く時間は約40年ある。子供の頃の20年で学んだ知識の一部で勝負する人と、社会に出てから40年間、学び続ける人、どちらが勝つと思う?」
要は学歴だけで仕事の能力を決めるのはナンセンスだという話だった。
目から鱗だった。そして私の悩みも似たようなものだと気付かされた。
私の目的は輝かしい肩書や能力、才能を誰かに見せつける事ではない。
あくまでも仕事で必要とされるよう、他人に負けない成果を出すことだ。
ならば、他人の才能を羨むよりも、自分に残されたものをいかに使って組織に貢献するかを考えるべきだ。そう、才能はあくまでも強力な武器の一つ、「機動戦士ガンダム」で言うところのモビルスーツ(ガンダムやザクといったロボットの事)でしかない。
「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないという事を教えてやる」
一部のマニアが泣いて喜ぶあのセリフにも代表されるように、才能があったとしてもそれを上手く使いこなせなければ意味がない。逆にずば抜けた才能がないなら、それに代わる武器をこの長い社会人生活の中で身に着ければよいだけの話だ。
そう考えた私は少しずつ働き方を変えていった。
周りの人が話した面白いと思う考え方、アイディアを手帳に書き、少しでも仕事で上手くいかいない事があれば、先輩や仕事の出来る同僚にアドバイスを貰い、その中で真似できそうなものを自分の仕事に取り込んでいった。
どうやら私は一人で何かを成し遂げる才能には恵まれなかったものの、わがままや面倒をかけても見捨てられず、可愛がってもらえるという地味な才能があったらしい。
そう、私にも乗れるモビルスーツはあったのだ。
肝心の私がその操縦の仕方をわかっていなかった。ただそれだけの事だ。
傲慢で忘れやすい私が、今も気を付けていること。
それは、自分が輝く時は常に輝かせてくれる人がいるという事。
何も出来ない自分が、唯一持っている武器、「支えてくれる人がいる」という感謝を忘れたらこの過酷な戦場で私が生き抜くことはまずできない。
ところで、「ガンダム」に詳しい人はもう気付いているかもしれない。
モビルスーツは改造し、バージョンアップする事で弱点を克服し、パワーアップするのだ。
私もいつまでも人に頼ってばかりいるのも情けない。
そろそろ、「人を支えられる能力」と「人に支えてもらえる魅力」を持った大人に近づけるように新たな「才能のバージョンアップ」を図っていかなくてはならない。
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