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プロフェッショナル・ゼミ

「世の中は汚いものだ」と思っていたけども……《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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【東京・福岡・京都・全国通信対応】《平日コース》

記事:kiku(プロフェッショナル・ゼミ)

「世の中は汚い……」
小学生の頃から私は薄々そう感じていた。
子供の頃から映画ばかり見ていたので、人間の欲望にまみれて堕落していく姿を早いうちから見て、影響を受けていたのかもしれない。
なぜか、私は、世の中は汚いもので、人間は欲望にまみれていると思えて仕方がなかった。

小学生の時などは、本当に私は生き急いで、空回りばかりしていたと思う。
同級生たちと話していても、他人の顔色や考えていることが気になってしまい身動きが取れなくなってしまったのだ。
人と話をしていても、些細な顔色の変化や、口の動きの違いで
「この人はこう言っているが、本心ではこう考えているのではなかろうか?」
「きっと頭の中では別のことを考えているに決まっている」
と勝手に考えがぐるぐると巡ってしまい、私は教室にいるだけで、無駄に精神エネルギーを使ってしまい、ぐったりとしてしまっていた。

なんでこの世はこうも生きづらいんだ。
私は人生の早い段階から常にそう感じていたのだ。
今なら、軽い自閉症というふうに判断されるかもしれないが、小学生だった頃の私はそんな症状も知らない上、親も割と私を普通の子だと思い、育ててくれた節があった。

きっと自分の考えすぎなんだろう。
みんな私と同じように、どこかしら悩みをもって生きているんだ。
自分だけではない。
そう思って私は気にせずに小学生時代を過ごしていった。

クラスメイトの中でも小学校高学年になると、荒れてくる生徒も出てきていた。
教室の中で常にリーダー的な存在であり、常に人を引き連れて問題行動ばかり起こす彼らを見ていると私は本当に羨ましく思えてきた。

きちんと自分の意思をもって大人たちに反抗しているのだ。
授業なんて出たくないと主張し、ボイコットしている生徒もいた。

先生たちはそんな不良となった生徒たちの扱いに苦労しているようだったが、きちんと自分たちの考えを、行動をもって主張している彼らを私は憧れの目で見ていたのだと思う。

決して、不良になりたかったのではない。
きちんと自分たちの意思を行動で伝えられているのが、羨ましかったのだ。

なんで自分はモヤモヤしている感情を表に出せないのだろう。
誰か私を見てよ。
このモヤモヤをどこに発散すればいいの。

そう思った私は一度、精神的な限界がきて、家から動けなくなってしまった時があった。
3、4日学校をサボっていたのだと思う。
親は早く学校に行きなさいと言っていた。

どうしても私は学校に行きたくない。
いや、行かないことで先生や大人たちも私のことに振り向いてくれるはず。

きっとクラスにいる不良たちと同じように私のモヤモヤを聞いてくれるはずなんだ。
そう思って、意地でも私は登校を拒否する日々が続いていた。

一週間経ってから、親に強制的に学校に連れてかれる。
教室に入って先生の声がかかった。
「おい、お前、風邪大丈夫か?」

「あ、はい」
普段、クラスの隅でじっと座っているだけの存在だった私は、ずる休みしているとは思われてなく、ただ単に風邪で学校を休んでいるということになっていたのだ。

なんで誰も私の主張を聞いてくれないの。
モヤモヤを抱えた私ははち切れそうになった。
大人は決してわかってくれない。
わかろうとしているのは、不良たちのように、目に見える問題行動を取っていく人たちだけだ。

私はその日からどこか大人に対しての諦めの感情が芽生えてきたのだと思う。

「戦争は絶対よくないものです。戦争だけはしてはいけません」
学校の担任から口うるさくそう言われてきたが、私は戦争なんてなくならないもんだと小学生ながら思っていた。

人間の奥底にある感情は醜いもの。
決して戦争はなくならない。
現にその当時、イラクではアメリカ兵が進行してイラク戦争が勃発していた。
ニュースをつけたら毎日のように爆撃していくアメリカ軍の姿が映し出されていて、子供ながら、戦争ってこういうことなんだと思っていた。

なんて大人は汚い生き物なんだろう。
大人になんかなりたくないと思っていた。

ポケモンの歌に、早く大人になりたい子供と、子供に戻りたい母親とかの歌詞があった気がするが、完全に私は大人になりたくない子供だったのだ。

大人の世界は汚いもの。
綺麗な世界だけを見ていたいな……
自分の世界だけを見ていたい。
そんな中二病的な病を持っていた私は、精神がはち切れそうになるたびに、私はもがき苦しくなっていた。

多摩川にかかる夕日を見るたびに、なんだか苦しくなってはち切れそうになってしまうのだ。

この世は汚いものだ。
そんな精神がずっと心に残っているまま、私はいつか大人になってしまった。
あっという間に学生時代が過ぎ去り、多くの人たちと同様に社会に出て、私は今、会社に所属するサラリーマンをやっている。

人でごったがえす満員電車に乗り、ぎゅうぎゅう詰めになって、体の痛みに耐えながら通勤する毎日だ。

学生の頃は、よくも毎朝こんなにぎゅうぎゅう詰めの満員電車に乗って、通勤できるよな〜と思い、決して会社勤めなんてしたくないと考えていたが、いつしか大人になり、社会の流れに飲み込まれるかのようにサラリーマンをやるようになった。

人でごった返し、暗い表情をした会社員で溢れる車内で、私はいつも体が苦しくなる。本を読んで過ごしているが、どうしても人の顔色っていうものは目に入ってしまうものだ。

あの人はきっと、昨日、辛いことがあったんだろう。
この人は20年もダラダラと仕事して気がついたら上司になっていて、部下に指示ばかり出して仕事をサボっているんだろうな。

葬式の時に飾る写真の顔色を見れば、その人がわかると言われている。
同じように満員電車の中で、暗そうにしているその人の表情を見ていれば、その人の生き方っていうものが顔に年輪として刻まれてきているものだ。

毎日、ポジティブに生きている人は顔に刻まれた年輪もどこか人と違っている気がする。
毎朝、満員電車の中で繰り広げられるデッドヒートの中で、まず表情が豊かな人なんて一人もいない。
みんな暗そうな顔で会社に向かっているのだ。

私はそんな満員電車という牢獄の中で40分過ごして、ただじっと耐える毎日を過ごしていた。

そんななんだか苦しい毎日でも、少しずつ私は変わり始めていた。
人生を変える本屋、天狼院書店と出会えたのだ。

はじめはライティング・ゼミから通い始めた。
店主の三浦さんな「書けば人生は変わる」と信じきっているようで、受講生や天狼院に集まってくる学生たちにいつも「とにかく書いてください」と太鼓判を押すように主張しまくっていた。

39歳になってからプロのカメラマンとしてデビューした三浦さんは「いや〜今度のフォト部も辛い仕事でした〜」と約24時間休みなくフルスロットルで働いているにもかかわらず、どこか表情は豊かで、楽しそうに仕事しているのだ。

何でこの人は目の前の仕事をこんなに楽しんでできるんだろう?
いつもフルスロットルで生き生きと仕事している三浦さんを見ていていつもそう思っていた。
好きなことをやっているからなのか?

三浦さんの周りには、いつも人が集まってくる。
天狼院から発せられる強力の磁場が、多くのクリエイティブ肌を持った人を惹きつけているらしく、天狼院は現代に生まれ変わったトキワ荘のような状態になっている。

なんで三浦さんの周りには人が集まってくるのか?
天狼院に行けば、ある時は本屋大賞までノミネートされた小説家に出会えたり、プロの編集者として活躍している人、広瀬アリス主演の映画を撮った映画監督などなど、多くのクリエイターとして仕事している人と出会えるのだ。

三浦さんから発せられる異常な「熱」に吸い寄せられるようにして、今天狼院に多くの人が集まってきている。

フルスロットルで働いている三浦さんを見ていると、なんでこの人はこうもエネルギーがあるのかといつも驚いてしまう。

そんな三浦さんだったが、去年の末からやたらと太鼓判を押して勧めているコミックがあった。

それは「キングダム」だった。

「みなさんキングダム読みましたか! 超面白いですよ」
天狼院に集まるお客様一人一人に言っていたんじゃないかというくらい、「キングダム」の話ばかりしているのだ。

「キングダム超面白いですよ」と、どこに行っても
キングダム! キングダムだ。

キングダム以外に話すことはないのかと思うくらい、キングダムを読みまくり、研究しているという。
今46巻出ている単行本だが、もうすでに5周くらい読んだらしい。

私は「キングダム」という漫画の存在は知っていた。
昔、「アメトーク」に紹介され、全国的に爆発的なヒットを飛ばしている人気漫画だ。

多分、面白いんだろうなとは思っていたが、表紙からくる絵のインパクトや戦争シーンが多くガヤガヤしている感じがしていて、いつも読むのを躊躇してしまう自分がいたのだ。

三浦さんに影響されてか、天狼院に集まるお客様の周りにも「キングダム熱」にハマっていく人が続出していった。

「キングダム超面白いですね」とお客様の間でキングダムトークが繰り広げられるのだ。
そんなに面白いのなら一度読んでみるか。
そう思った私はゆっくりとだが、満員電車の中でキングダムを読み始めることにしたのだった。

満員電車の中は人でごった返している。
朝の渋谷となると人混みで溢れかえり、普通に歩いているだけで、肩に人がぶつかったり、睨まれたりするものだ。

「キングダム」片手にすこしずつ読んでいったが、人でぎゅうぎゅう詰めの電車の中で読むのは辛いものだ。

少しずつ、少しずつ……秦の始皇帝と下僕の身分から天下の大将軍にまで上り詰めていく青年たちの物語を夢中になって読んでいった。

面白いのだ。
とにかくめちゃくちゃ面白いのだ。
20巻目くらいからもう止まらなくなった。
毎朝、通勤カバンに「キングダム」4巻くらい突っ込み、通勤時間に読むのが楽しみで仕方なくなったのだ。

私は表紙からくるインパクトから、どこかドロドロした人間ドラマが繰り広げられる戦争ものの漫画なんだろうなとしか思っていなかったが、実際読んでみるとそれは、魂を揺さぶるようなエネルギーの塊みたいな漫画だった。

戦争というものこそ、人間の醜い感情がぶつかり合うものだ。
人は戦争という場面でこそ、その人の真価が問われるのかもしれない。

ある者は友を助けるため、自らを犠牲にしたり、家族を敵国の侵略から救うため戦い抜いたり、自らの命の灯火を懸命に燃やして死んでいった古代中国の戦国時代の物語がそこにはあった。

39巻を超えたあたりから、私は涙なくして読むことができなかった。
本当に帰りの帰宅ラッシュの電車の中で号泣してしまったのだ。

これなんだ。
私がずっと抱え込んでいた悩みはこれだったんだ。
ずっと大人の世界は汚いものだと思っていたが、人間の本質っていうものはこういうことなんだ。

どんなに人間の醜い感情を間近に見ていても、決して自分を見失わなかった人だからこそ語れる言葉がそこにはあった。

人間の本質……それは「光」だと。

どんなに醜い人間にも、その人の心には光を持っている。
人は厳しい現実の中でも必死に己の光を懸命に輝かせて生きている。
人が闇に落ちるときは、己の光を見失うときだと。

どんなに醜い感情を持っている人で、心の奥底では光を輝かせたいと願っているはずなのだ。

私は人間の本質について語られた一文を読んだとき、思わず涙が溢れてきてしまった。

この世からたぶん、戦争をなくすことは難しいだろう。
戦争が起こる一方で、軍需特需から経済的に潤いをもたらすからだ。

戦争は経済だと言われるように、人間社会の仕組みの一部になっている。

戦争はきっとなくならない。
だけど、人の心は決して闇に飲み込まれることはない。

どんなに毎朝、辛い表情で満員電車に乗っている人でも、きっと家族や両親のために、会社に文句を言われながらも耐え、自分の給料を稼いでいるのだ。
毎日のように起こる辛い出来事にも耐えて、必死に毎日を生きているのだ。

私はキングダムのこの一文にとても救われるような気がした。
社会をどう捉えるかはもしかしたら本人次第なのかもしれない。

社会というものは汚いと思っている人には、社会はそう見えるだけなのだ。
会社がつまらない……大人の世界は汚いと思っている人にとって、社会はそう見えているだけなのだ。

三浦さんはもしかしたら、どんな苦境にも耐えながらも、ずっと光を見失わなかったからこそ、今自分がやりたいと思っていたことを思う存分できているのかもしれない。

人の本質的な部分にある光を知っているからこそ、三浦さんの周りにはいつも人が集まってくるのだ。

私は「キングダム」のこの一文だけは決して忘れないようにしたいと思う。

人間の本質は「光」だ。

この言葉を本当に大切にしたいと思うのだ。

***

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