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「ときめきたい症候群」のあなたへ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大北 舞(ライティング・ゼミ)

 

【ときめ・く】喜びや期待のために胸がどきどきする。「喜びに心が―・く」
―広辞苑

 

「あー! ときめきたい」
その人はわたしの髪を洗いながら言いました。毎日たくさんかわいい人に会っていながら、それでもなおときめきたいとはどういうことでしょう。

「なんか夏らしいことしたいね~海辺でバーベキューとか。暗くなったら散歩したりしてさ」
あいかわらずのチャラさ。でもそういうところ、好きです。

1か月前に会ったときも、その人は同じことを言っていました。「ときめきたい症候群」にかかっていると。でも、わたしは知っています。その人の仕事が充実していて、入籍を間近に控えていることを。さらにときめきまで欲しいなんて欲張りな人です。

「ときめきたいですね~なにか面白いことないかな。わたしにもその症候群がうつったかもしれないです(笑)」
わたしは仰向けのまま答えました。

「君のはワクワクしたいでしょ? 僕のとは違うよー」
彼は言葉遣いに敏感なのです。適当に返事をすると、それに気づいたかのように、数回に1回は指摘されます。

「じゃあ、どういうときにときめくんですか?」
「うーん、僕は字が下手だからね~字のきれいな女性にときめくなあ。それから知的な面を発見したときも。今日君がハードカバーの入った本屋の袋をもっているのを見て、なんかいいなと思った」
またそうやって調子のいいことを言う……
そう、わたしはその日、本屋で買い物した帰りに行きつけの美容室に寄ったのでした。

シャンプー台でそんな話をしてから、わたしは「ときめきたい症候群」のことが頭から離れなくなっていました。そして、気づいたら「ときめく」について考えているのです。

彼の言うように、「ときめく」と「ワクワクする」は、やはり少し違う気がします。「ドキドキ」とも「キュン」とも「萌え」とも似て非なる何か。やはり異性関係で使う言葉なのでしょうか。辞書を引いても、「喜びや期待のために胸がどきどきする」と書いてあるだけでした。語源を調べてみると、「動悸(どうき)」に「めく」がついたという説があるようです。胸の高鳴りを表す単語だということはわかりました。

それでも、言葉の認識は人によって違いますから、別の人にも聞いてみることにしました。
「ねえ、ときめくとワクワクするってどう違うと思う?」
「うーん……ときめくは恋愛で使う言葉なんじゃない? 髪型が変わったり、ギャップに気づいたりしたら、ときめくかな」
ギャップ萌えというやつですね……なるほど。

思うに、「ときめき」とは、平凡な日常に飽きている状態でふと訪れる新鮮な驚きや喜びと、そこから始まる新たな世界への期待のことなのではないでしょうか。特に男女関係において使われる言葉な感じがします。

なんとなく自分の中で「ときめきたい症候群」についての考察が一通り終わりそうになったとき、ある種のいたずら心が生まれました。
<お世話になっているあの美容師さんをときめかせたい……!>

そこからわたしは考えました。
<どうやったらときめいてくれるだろう? なにが好きだって言ってたかな~>
彼に関する記憶をいろいろ引っ張り出して練ったプランを、さっそく翌日実行に移しました。

仕事帰り、まずは彼の好物を買いに行きます。マンゴー味が好きだと言っていたから、暑い季節の差し入れによさそうなマンゴーのプリンです。それから字が上手な人が好きだと言っていたから、自分なりに頑張って最大限きれいな字で書いた小さなメッセージカードを添えました。ついでに出だしはいつもと違う呼び方です。準備をして、いざ彼の働く美容室に突撃しました。

「こんにちはー! 昨日はありがとうございました。近くまで来たので差し入れです。みなさんでどうぞ」
「えっ! びっくりした。ありがとうー! いただきます」

<よかった!>
彼は喜んでくれました。どのくらいときめいてくれたかはわからないけれど、わたしは満足です。その後、ゆるかわいい猫のスタンプとともにお礼のラインが来たので、わたしはこう言いました。
「あなたにときめいてほしくて」

そして、ちょっぴり温かい気分で家に帰ってきてふと思いました。もしかして、ときめかせたいと思ったわたしの方がときめいている……? わたしも平凡な日常には飽き飽きしていたのです。だから、誰かに仕掛けるちょっとしたサプライズが、思いがけず新鮮な喜びを運んでくれたのでしょう。

もちろん、ときめく瞬間がやってくるのを待つのもいいと思います。新しい趣味を始めたり、新しい出会いを求めたり。でも、もしかしたら「受け手」よりも「与え手」になる方が簡単だし楽しいかもしれません。「与え手」は待っている必要はなくて、なろうと思ったらすぐになれますから。

わたしは、みんなの心を動かしたいなんて大それたことは言えないけど、周りの人たちをちょっとだけときめかせられるような人になりたいな、と思うのです。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2017-07-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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