社会人になって半年過ぎた私が、「お金」と「信用」について3人の大先輩から学んだこと《プロフェッショナル・ゼミ》
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記事:田中望美(プロフェッショナル・ゼミ)
社会人になり半年が過ぎた。
私はやっと、ある言葉と向き合うことになる。
そいつはいつもつきまとってくる厄介者のはずだった。
だけど、今回はちょっと変わった形をして、私に向かってきた。
それは、「お金」だ。
しかし、お金ではない。
「信用」ともいうそうだ。
私はこれまで消費する側でしかなかった。
しかし、社会人になって半年が過ぎた今、ようやく提供する側としての「お金」の意味を理解し考え直さなければならない時がきている気がしてならない。
なぜそう思うのかといえば、それは、やたらお金と信用について考えさせられる機会が押し寄せてくるからだ。
ある女性が言った。
「お金って信用だよ。だからこの世に存在するお金って本当は幻なんだよ。
だって、私最近次元の違うすごい人に会ってきたんだけど、キャッシュレスだったもん。
お店に入れば食べ物が出てくるし、うん十万円の宿泊先が用意される。
なぜなのかって、その人自身に価値があるからだよね。
その人お財布持ち歩いてないんだって」
本当にそんな人がいるんだ……ど呆然として聞いていた私のように、彼女もその人と会話していたという。
だが、彼女だってすごい。おそらく彼女は彼女自身の名で何万人というファンを持っている。
名もない彼女は、自らの手でダンスカンパニーを立ち上げ、来場者数500人の旗揚げ公演を大成功に収め、なんとNYのオフブロードウェイ公演を依頼されるチャンスまで掴んでいるのだ。
そんな彼女曰く、その方は次元がもうぶっ飛んでいたけど、お金を持たずに生活するということは、不可能なことではないと言う。
彼女がSNS上で妊娠してツワリが酷いと言えば、色んなところからフルーツやグッズなどが贈られてくる。それはそのくらい彼女が、何かしてあげたいと思うほどの価値を持っているからだ。
だから、
「私は徳を積んで生きていく」
彼女はそう言った。
それが人への信用に繋がり、それを得ることで「お金」というモノが必要性がなくなるからだ。
彼女が徳を積み、お金ではない価値のある何かを提供すれば、彼女が必要とする時、必要なものが勝手に舞い込んでくるようになる。
それは、お金ではなく、人であったり望んだモノであったり、コトであったりする。
だから彼女の夢はどんどん現実化しているのだ。
もはや、彼女さえお金を必要としていない。
私は、ゴクンと唾を飲んだ。
理解は、できる。
でも、どうしても違和感を感じてしまう。いや、違和感というより未知なるものを知って、実感を得たいけど得られないもどかしさだ。ワサビとリンゴと酢を混ぜたものと言われれば、大体というか、絶対顔がひん曲がってしまうほどの味であろうと想像がつく。だか、それ以上に論理的に説明されているものの実感が湧かない。
目に見えない自分の価値や徳がお金を必要なくさせる??
現状、お金がない、稼がなきゃ、節約しなきゃと、お金の問題にいつも頭を悩ませられている私がその体験を想像するのは安易なことではない。
でも、人に何かを提供するというのは、そういうことなのだ。例えば舞台のチケットを売るにもそこには買いたいと思ってもらえるような人でなければならない。お金あげるからチケットを買ってとはならないのだ。
この人だから。あなただから私のチケットを買ってくれる。
要は、チケットではなく、その人の価値を買ってくれているのだ。
この時初めて、私は消費者としてではなく、提供する側としての「お金」の思考を持った。
今までの私は、消費者としての「お金」としか向き合ってこなかったのだなぁ。
じゃあ私はどうすればいいのか??突然姿を変えてしまった、提供する者としての「お金」とその視点。私の目の前には乗り越えたくても乗り越えられない壁が立ちはだかっているように思えた。
そんな時SNS上でこんな記事が流れててきた。
絵本作家でもあり芸人でもある何かと話題のにしのあきひろの記事だ。
私の目に飛び込んできたのは、やはりあの言葉だ。
「お金は信用を数値化したもの」
1日50円でなんでもしますというホームレス芸人を例に挙げ、お金はなくても信用持ちであれば幸せな生活が送れると説明していた。ホームレス芸人は、1日50円でなんでもすることをして、ご飯を賄ってもらうことから、クラウドファンディングで結婚式の資金を150万円集めてしまうのだ。今まで1日50円で自分を買ってくれた人が、彼の人柄などを見て信用し、クラウドファンディングでたくさんの資金をしてくれる。
だからこれからの時代、お金ではなく信用を稼ぐことでお金を稼ぐことができるのだと言う。
なるほど、私がすべきことは、「信用」を集めることなんだ。
私はこの2人の言葉と行動が一致した姿をみて、勝手にその気になっていた。私も信用を集めれば、お金に困ることはなくなる。そうかそうか、と道が拓けた気がした。
だが、それは気がしていただけで、なんの解決にもなっていなかった。
はて、信用ってどうやって集めればいいのか?私はその信用をどう活かせばいいのか?
頭の中にまた、ぐるぐると「お金」と言う言葉が回る。
ダメだ、ダメだ。お金ではなく、「信用」を考えなければ。お金は信用を数値化したものなのだから。
「じいちゃんは何もないところから始めた人たい」
父に父の会社について聞いた時のことである。父の会社はじいちゃんがつくった。いわゆる起業だ。私は工業系の大学へ行き、じいちゃんの会社を継いだ時に、経営のことも学んだのか気になって尋ねたことがある。その時父は、そんなもの勉強するもんじゃなかと言った。どうしたらお客さんが買ってくれるのか、契約を続けてくれるのか。それらを考えながら、修理をしたり、付き合いのゴルフに行ったり当たり前のことをやるだけなのだという。何か特別なことではなく、当たりまえのことを続けること。じいちゃんが地道にコツコツと契約を結んでくれたお客さんを逃さないように父は、不安を抱えながらも働いているように見えた。
知り合いも誰もいないところから、じいちゃんは地道な営業でお客さんを集めた。そこには多分、「信頼関係」しかなかったはずだ。この人なら。そう思ってもらえなければ、お客さんになってもらえるはずがない。お金を出そうとは思わない。父はその姿を見て、手伝っていたからこそ、そのお客さんの信頼を断ち切ってしまわないよう気をつけているのだという。その「信用」がお金を生んでいる。一番身近な父親がそう話してくれたことで、実感がわいてきた。
ダンサーが舞台に立つとき、日常と変わることはほとんどない。違うのは集客くらいである。あとは、レッスンに、ストレッチに体調管理にあいさつ、スタジオの清掃、近況報告など変わることはない。その積み重ねが舞台の集客に直結する。日々みられている意識をもって過ごしたかどうかが、ファンの数にも影響するのだと思う。私自身も素晴らしいと思うダンサーや女優さんは容姿だけでなく、ネットから収集したり、実際に舞台を見て会いに行ったりしたときに知った生き様や考え方に尊敬できるかが重要になってくる。あの人だから観に行きたい、会いに行きたい。会社の仕組みと同じなのだ。やはり、お金は信用であり、信用がお金になる。そして、信用は、みんな地道にコツコツ、当たり前のことを続けていくことで得ている。
社会人になって半年が経とうとしている。
私はようやく提供者としての「お金」の本当の正体について考えることができたようだ。
自分が稼ぎたいこと、稼いでいる分野で当たり前のことを続けているだろうか? 慣れてきたから、とおろそかにしたり、省いてしまっていることはないだろうか? そう自分に問いかけてみる。スタジオの掃除、日々の体のメンテナンス、先生に対する礼儀。当たり前のことを続けるのは意外と難しい。気づけば周囲の雰囲気に負けて怠惰になってしまっていることがある。でも、できないことではない。できるからこそやらなくなってしまうのかもしれない。
当たり前のことを続けて、信頼を築いていく。そうすることで自分自身の価値が上がり、私の価値に期待をもって、誰かが私を買ってくれる。
そこから始めよう。稼ぎたい分野、稼いでいる分野で当たり前に必要なことをすることから。
「お金」と「信用」。目に見えないよくわからないものの答えは、いたってシンプルなものだった。だからこそ、結果に差が出る。私にそのことを教えてくれた3人の大先輩の背中を見て、私は今日という日、そしてこれからを過ごしていこう。
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