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おかあさんカエルは旅に出ることにした


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:細谷佳子(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
 こどもたちへ。おかあさんは、旅に出ることにしました。
 旅に出るといっても、今すぐにではありません。この手紙を書いている時点で、エフは5歳、エイは3歳、エイチは2歳になったばかり。せめて一番年下のエイチが小学生になるくらい大きくなってから、出発したいなと思っています。

子どもたちが小さくても旅には出られる、という人もいますが、おかあさんはまず一人で旅をしてみたい。なぜかというと自分の体を全部使って、おかあさんのペースで、行った先の空気を感じたいからです。
けれどおかあさんが一人で旅をするとなると、おとうさんは長いお休みが取れないので、あなた達だけで家にいても大丈夫だと思えないと、安心して出発できない。
そこで、エイチが小学生になるまでのあと4年ちょっとの間に、あなた達が自分のことは自分でできるように準備をしようと思いました。

そもそも、どうして旅に出ることにしたのかを、まだ書いていませんでしたね。

そのことを書くためには、去年に戻って、その頃のおかあさんがどんな状態だったかを伝える必要があります。エフは覚えているかもしれませんが、おかあさんは余裕がなくて、あなた達の些細な失敗をいちいち大声で怒り、物にあたり、いつも苛々をまき散らしていました。おとうさんは、そんな状態のおかあさんも含めた家族全員を優しくフォローしてくれていたね。おかあさんはその優しさが嬉しくもあり、辛くもあった。おかあさんだけが空回りして、家族の空気をめちゃくちゃにしていることを突きつけられているように感じたのです。まぁ、このあたりの気持ちはもっと大きくならないとわからないかな。
さて、おかあさんはこのままじゃいけないと思いました。大好きなあなた達のことを、それぞれ自由に生きていけるように応援するはずだったのに。どうしたらいいんだろうと、自分が変身する方法を探し始めたのです。

まずは本を読みました。子どもとの関わり方をアドバイスしている人達のメルマガやブログも読み漁りました。その中のひとつに「親が満たされていないと、子どもに快く与えることが難しくなる」というようなことが書いてあったのです。つまり、自分がやりたいことを我慢していると、子どもがやりたいことをやっているのが羨ましくなって「ずるい!」と感じて許せなくなったり、夢中になれるものがなくて暇だから、子どもの些細な失敗に大きく反応してしまったりするのだそうです。

これには非常に納得しました。以前エフには話しましたが、「本当にやりたいことをやっていないと、楽しい気持ちにはなれない」のです。そしておかあさんは、自分の本当にやりたいことが何かを考えないように、見ないようにして過ごしてきたなということにも気付きました。でも急に、本当にやりたいことって何だろう? と考えてもわかりません。

おかあさんは昔、図書館を使って自分の疑問を解決できる人を増やすお仕事をしていました。そのお仕事が大好きだったので、またその仕事をしたいのかな? そう思って一緒に働いていた人達に会いに行きました。ところが、自分が今やらなければいけない事かと考えると少し違うようです。他にも色々考えてみましたが、どれも、どこかに違和感が残ります。
頭で考えるだけでなくて、体が求めているもの。なんだろう、なんだろう、と自分の中を探します。やりたかったけどやらなかったこと。もっとやりたかったのに、やめてしまったこと。あなた達に覚えておいてほしい、おかあさんがなりたい「おかあさん」はどんな姿だろう?

そこで、そうか、と一つ思い当たりました。
「井戸の外を知っているカエル」になりたい。

あなた達がこの手紙を読むとすれば、その頃には「井の中の蛙大海を知らず」という言葉を知っていることでしょう。おかあさんは小さい頃から本を読むことが多かったので、色々なことを知っているような気にはなっていますが、実際のところ自分の経験としては狭い価値観の中でしか生きてきませんでした。井戸の外に本当は何があるのかを知らずに、「外にも大きい世界があるのだから、こんな狭いところ飛び出してみればいいじゃない」とオタマジャクシに偉そうに語るお母さんカエルです。
でも、外に出たこともない、知ったつもりで偉そうにしている人からそんなことを言われても、説得力はありません。困難にぶつかった時や失敗をした時に、それを乗り越えたことがない人に「大丈夫だよ」と言われても不安が募ります。ね、ここまでくればわかってきたでしょう?

お母さんは井戸の中から出たことのないカエルから、井戸の外を知っているカエルになって、外で見聞きしたことをあなた達に伝えていくことにしたのです。これからも失敗は多いと思うけれど、あなた達が「失敗はあっても、何だかんだで好きに生きていけるのは確からしい」と思ってくれるようになればいいな。

そんなわけで、おかあさんは文字通り旅に出ることにしました。いつか、あなた達の旅の話も聞きたいなと思いながら。

 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2017-08-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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