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歯の治療は人生の縮図


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記事:馬場真由美(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
歯医者が好きという人はあまりいないと思う。私も歯医者は苦手だ。
苦手な理由は色々ある。麻酔を打つのが痛いから嫌、歯を削るのが痛いから嫌、あごが痛くなるから嫌など、歯の治療は基本的に痛いから嫌である。
それでも私は歯医者に行く。物を食べない状態でも歯が痛いという状態は一人では治せないからだ。歯科の先生や歯科衛生士さんの力を借りないと歯が抜け落ちるまで痛いままだ。歯が無いとそしゃくに影響が出るからそれは避けたい。
 
歯医者にたどり着き、受付を済ませて診察室へと入る。歯科衛生士さんに案内されるがまま診察台に横たわって治療が始まるのを待つ。
この時にふと思った。歯の治療って人生の縮図だと。
 
人生というのは何が起こるのか分からない。私もちょっと歯が痛いなぁ……と思って歯医者に行ったら、虫歯がエナメル質や象牙質を突き破って神経まで進んでいるから神経を抜く治療が必要だと言われるなんて思ってもみなかった。
思ってもみなかった事に直面してさぁ、どうしようかと考える。一人で考えて一人で解決できそうなことならすぐ動く。一人で考えてこれは誰かの力を借りないとできないと判断したなら信頼できる人の力を借りる。
 
歯が想像以上に悪化していると知らされた私は一人では治せないから先生や歯科衛生士さんにお金を払って治療を任せる事にした。診察台に横たわって口を大きく開けて麻酔や歯を削る機械を受け入れる。正直、無茶苦茶怖いし痛いし嫌いだ。けれど、治療をしなければ歯は痛いまま。痛みを止める為には治療の痛みを引き受けるしかない。
 
歯の治療以外でも人の手を借りないと解決できない事は世の中に多々ある。友達に頼んでいいよー とタダで引き受けてくれる時もあれば、信頼できる個人や企業にお金を払って頼む時もある。場合によってはお金を借りる為に人を頼る事もあるだろう。
しかし無料であれ有料であれ、頼めば全てが解決する訳じゃない。悩みを解決したいという意思を持って頼んだ相手に能動的に関わっていかないとダメなのだ。
 
診察台に横たわって歯の治療を受ける患者は受動的に見えるが実は能動的だ。診察台に自ら横たわって口を開き、先生や歯科衛生士さんが治療をしやすいように全面的に協力する。キュィィィィンとか、ガガガガガガガとか口の中で機械が怖い音を立てながら動くのをひたすら耐える。
治療が始まる前に「痛かったら手をあげてくださいねー」と言われるが、麻酔のおかげで手をあげるほどの痛みは出ない。ギャーーーーーーと叫びたくなる痛みに直面した時は「これは手をあげるべき事態なんじゃないか……」と思うが、手をあげて治療が中断してしまうともったいない気もして終わるまでひたすら耐える方をいつも選択してしまう。この虫歯を治したい、先生や歯科衛生士さんが動きやすいようにするといった心の動きは能動的であり協力的であると思う。
 
世の中には親がこうしろと言ったから……という理由で進学や就職といった人生の一大イベントを決める人も多くいるだろう。そうやって自分以外の人に決めてもらった道に進んだ人の多くは自分がやりたいと思った事が出来ていないと進路を後悔する。
それに対して進学先や就職先を自分の意思で決めたり、進学先はお金を出す親の言うとおりに進んだが就職先は自分で選んだ人達は、例え進んだ道が困難ばかりで大変だったとしても後悔する事は少ないと思う。
これは自分の人生を受動的に決めたか能動的に決めたかどうかの違いだろう。親が言ったから……という受動的な態度で人生を歩むと、自分に起こる事全てが納得できない事としか捉えられず苦しい思いをする。歯が痛くなって歯医者さんが治してくれるだろうという態度で行くと、治療中の痛みに対してなんでこんな痛い思いをしなきゃいけないんだと、歯が治っても先生や歯科衛生士さんを恨めしく思う。
能動的な態度で人生を歩むと、自分に起こる事は何かしら意味があるのだろうと前向きに捉えて問題が起こった時は解決しようと動き出す。歯の治療では先生が歯科衛生士さんに協力的になって歯が痛いという問題をなるべく早く解決しようとする。
 
今の私は歯の治療に関しては能動的だが、人生においてはまだまだ受動的な部分が多い。納得がいかない事が起きると怒ってしまうし、問題を解決しようとせずに相手を責め立ててしまう事もある。そして怒ったり責めたりした自分の行為を後悔する。
少しでもその後悔を減らす為に、歯医者だけではなく人生においても能動的にしていこうと、その日の痛い治療を終え、次回の診察の予約を取るのであった。
 
 
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2017-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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