メディアグランプリ

山を作ろう。塵も積もれば山となる、訳ではない。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:津山隆平(ライティング・ゼミ 平日コース)

 

福井生まれで京都に嫁いだ母は、よく喋る。

京都弁なのか福井弁なのかもよくわからない。

時々、おかしな事を言って人を笑わせる。

笑わせているのか笑われているのか判然としない場合多いのだが、本人は至って真面目に喋る。

そして、言葉に対する独特の感覚を持っている。

 

 

お正月には、おせち料理のうんちくがいくつも出てくる。

「なんでゴボウを食べるか知ってるか? 穴から将来を見通すためやで」

毎年説明してくれるので、母がゴボウをお箸で持ち上げた時には、すでにその言葉が浮かぶぐらいには将来を見通せるようになった。

 

 

東京に遊びにきて山手線に乗っていると、「へー、ササキって駅があるんやな」。

「いや、ここはヨヨギって言うんやで」と孫達に指摘されていた。

放送で駅名は流れていると思うのだが、「そうか、紛らわしいなぁ」とあっけらかんとしている。

 

ボクが就職して東京に行くことになった時には、「どんなことでも、毎日コツコツやらなあかんで。そやけど、チリも積もれば山となるっていうのは嘘やで」──。

 

 

ボクがライティング・ゼミで勉強すると決めたのは、自分や家族の爪痕を自分自身の言葉で残したいと思ったことが大きな理由だ。

 

小学生の時から本屋さんに行くことも本を読むことも好きだった。でも、本を論評することは、考えもしなかった。面白いものは面白いし、興味のないものは面白くないという感覚だけで判断していた。

 

日常の小さなことを面白おかしく話をすることは嫌いではないのに、文章を書くことは、どうも気が進まなかった。特に「読ませる文章」となると何から手を付ければよいのか、さっぱりわからない。

 

ボクにとって「文章を書く」ということは、山をつくるようなものだ。

ましてや「読ませる文章」となると、それはそれは大きな山だ。

 

初回の講義を終えた後に「課題は毎回、必ず提出してください。 第1回の提出期限は、次の月曜日、23時59分です」という優しい言葉を聞いた時のボクの感想は、「えー、そんなん書けるわけないやん」だった。

 

しかし「書くことで文章力が向上します。 文章を書かないと、いくらゼミで話を聞いても向上しません」という、これまた温かい言葉を聞いた時に、母が言っていた「チリも積もれば山となるっていうのは嘘やで」という言葉を思い出した。

 

母曰く。

「チリは積もっても山にはならへんで。 実際、チリが積もって山になったなんて聞いたこと無いやろ。 せいぜい、捨てた貝で貝塚ができるぐらいや」。

 

「山っていうのは、どうやってできるか知ってるか? プレートが動いてそれがぶつかりあった時に大きな力が生じて土地が盛り上がって山になんねん。 しかも、プレートは急に動くわけではないで。 毎日、毎時間、ほんのちょっとずつ動いてるねん」

 

「プレートは、ちょっとずつ動いてるけど、はた目にはわからへんやろ。 うちの家から京都駅までの距離が変わったりしてへんやろ?」

 

「そやけど、ある日、大きな力が表にあらわれて山になんねん」

 

「山をつくるには、毎日毎日のコツコツした努力が必要や。 そやけど、その成果は、日々、見えるもんではないねん。 今日やったからといって、明日すぐに成果が出るというもんではない。 そやけど、毎日毎日のコツコツした努力がない限り大きな成果は出えへんっちゅうこっちゃ」

 

「あんたは、ちょっとやったらすぐにできるタイプやとおもてるかもしれへんけど、そんなんはまだまだ小さい山や。 そやから、コツコツ、コツコツ努力して大きな山をつくらなあかんで」

ということらしい。

 

 

就職する時のボクは、「また、変なこと言うてるなぁ」と思っていた。

 

しかし、このライティング・ゼミを受講して、いざ課題をもらったことで、この言葉にすがるような気持ちが湧いてきた。

 

目標はプロの文章が書けることだけれども、いきなりそれは辛い。少なくとも現時点では、第一回目の受講をしたとはいえ、全くメドが立たない。

 

しかし、毎回の課題を提出することは、ボクにもできるはずだ。

もちろん、簡単なことではない。

成果はすぐに現れないのかもしれない。

しかし、毎回の課題を提出するという「プレート」を動かしていければ、いつかは「小山」ぐらいつくれるはずだ。

 

チリは積もっても山とはならない。

プレートを動かせば山となる。

語呂が悪いのだけれど、「プレート」を動かせ。

 

 

やっと第一回目が書けたと思い、注意点などの抜け漏れがないか受講時に配られた「ライティング・ゼミを受講されるみなさま」を読み返して打ちのめされた。

 

「できれば毎日記事を書いてください」と書いてあるじゃないか。

確かに母は、「プレートは毎日、動いている」と言っていた。

やはり山をつくるには、毎日、相当なエネルギーが必要だな。

 

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2017-10-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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