カメラを買った。見えている景色を自分の思うように調整出来ることを知った。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山田あゆみ(ライティングゼミ・日曜コース)
「やっぱり、マニュアルじゃないと。それが写真を撮るということですよ。AUTOじゃそれは、貴方の写真ではなくて、カメラメーカーのエンジニアの写真ですよ」
最近、一眼レフカメラを買った。
買ってからちょこちょこ写真を撮り始め、どんどんとカメラを持ち出すのが楽しくなってきている。
先日、プロカメラマンの方に写真撮影の基本について教わる機会があった。
買ったばかりのカメラを抱えて受けた講義で一番印象に残ったのは、マニュアルで撮影した方が絶対に良いという部分だった。
私は今までAUTOでしか写真を撮ったことがなかった。
そうか、これまで私が撮ってきたのは私の写真ではなかったのか。
ちょっとショックだった。
でも折角の機会だ。マニュアルでの撮り方を勉強しようと思った。
マニュアルで写真を撮る際には、3つの要素を変えることが肝であるという。絞り値、シャッタースピード、そしてISO感度だ。
絞り値を変えることで、レンズを通る光の量を調節できる。値を小さくすればするほど、連像を通る光を多くすることが出来る。
シャッタースピードというのは、シャッターを切るスピードのことだ。シャッターを切るスピードが速ければ速いほど、被写体がぶれなくなる。ただ、その分暗いために光の量は少なくなる。
ISO感度は、カメラが取り込んだ光の量をどれだけもっと多くするかを調整できる。暗い場所でもISO感度を上げると、明るい写真が撮れる。ただ上げ過ぎると荒い画像になってしまう。
これらの3つの値を調整することで、写真を明るくしたり暗くしたり、柔らかい雰囲気にしたり、シャープにしたりできる。
初めてマニュアルモードで撮影した写真をプレビューで見てみると、ただただ真っ暗だった。この3つには相関関係があり、これをうまく調整しないと、何も写らなかったり、白くなってしまったりするのだ。
初めのうちは、この3つを変えてちょうど良い明るさの写真にするのが、なかなか難しくてめんどくさかった。
AUTOだと、何も考えずに写真が撮れるというのに、マニュアル撮影ではいちいちシャッターを切る前に設定を変えなくてはならない。
AUTOだったら問題なく撮れるのだから、もうこれでいいのではないか、と何度か諦めそうになった。
けれど続けていくうちに、マニュアルで写真を撮ることにはまってきてしまった。
物凄く面白いのだ。
何が面白いかというと、見えている世界を自分の思うように調整できることだ。
これまでは、カメラというのは、目の前に見えている景色を切り取る道具だと思っていた。
でもマニュアルモードで撮ったら、その見えている世界を、その景色の姿を自分で調整できるのだ。撮りたいように調節できるのだ。
暗い場所なのに、明るく見せたり、光をいっぱい入れることで写る物の輪郭を柔らかくしたりできる。わざと暗くすることも出来る。
面白い。
今では、これまでAUTOで撮っていたことが信じられないくらい、すっかりマニュアル撮影の虜になっている。
ふと、もしかしたら、本当はカメラを通してみる世界だけではなくて、現実の世界も同じように調節できるのかもしれないな、と思った。
心の状態によって、目の前の風景が違って見えることがある。
失恋して心が泣いている時には、目の前に広がる世界もどこか虚ろになる。
仕事で進めてきた大きなプロジェクトが大きな成功を収めて、嬉しい時は、見るもの全てがキラキラと美しく見える。
人生における大事件や、ビッグイベントが発生しているわけではない普通の日でも、心の状態で、目の前に起きている光景のとらえ方は変わる。
良い気分の時は、世界は輝いて見えるものだし、人に優しくしようと思える。
ちょっと憂鬱だと陰ばかりが目について、ふさぎ込んでしまう。
目の前に広がっている景色をカメラの設定を変えることで違って見せることが出来るように、私自身が自分のモードやテンションや理性のスイッチをちょうど良い明るさになるように調整出来たら、もう少し生きやすくなるかもしれないと思う。
例えば、カメラのシャッタースピードは、心の気持ちの切り替えのスピードだ。切り替えを早く出来たら、見えている世界は、きっともっとくっきりしたものになる。切り替えが遅かったら、見えている世界はどこかに残してきた気持ちを残している分、ぼやけたものになるかもしれない。
絞り値は、視野の広さだ。狭く狭く、自分の周りしか見えていない時の絞りだと、映る写真は暗くなりがちかもしれない。でも、その分深く、内省が必要な時には、このモードを使うのもいい。もっと明るい世界を見ようと思ったら、視野は広げてみたらいい。もう一度この世には沢山の可能性があることを思い出したら、見えている景色も明るくなる。
ISO感度は、外に対する心の開放度合いだ。思う存分に楽しみたい時は、心をオープンにしてみよう。ゆとりと隙がある方がいい。ここ一番の集中力が必要になる時は、心は外へ向けるのではなく、内に向けた方が、頭をクリアに出来るかもしれない。
その時、その時で移り変わる心を見つめつつ、自分の心の状態を自分の思うように変えていくのに、カメラを操作するイメージは、上手く作用するかもしれない。
気分が落ち込んでしまった時、心の絞り値、シャッタースピード、そしてISO感度を見直してみたい。
目の前に映る景色は、自分の調節次第で変えられるはずだから。
そう思っているだけで、少し心が軽くなる。
いつだって、世界をどう見るかの主導権を握っているのは、私だ。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/40081
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。