メディアグランプリ

朝起きられないのは、怠け者だからではないと思う


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:星絵里華(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「勉強しているのは当たり前。で、それ以外に何をやってきたの?」
就活が始まる少し前に、学生課の方に質問された。
 
私は、何も答えられなかった。
そして、心の中で叫んでいた。
 
「その当たり前を当たり前に出来ている人が何人いる? 多くの学生は勉強以外に明け暮れて、テスト直前にノートを借りているじゃない。理解なんてしようと最初から思わないで、過去問丸暗記じゃない」
 
「でも、単位が取れて卒業できれば、みんな勉強は合格なの? 勉強するために大学に行っているのではないの?」
 
何度も何度も心の中で叫んだけれど、現実は違った。
大人たちはみな、大学生は遊びほうけていると思っているし、それでいいとさえ思っていた。
 
今までずっと大人たちは、勉強しなさいと言ってきたけれど……
勉強なんて意味がなかった。
 
何の前触れもなく、突然勉強に専念していることを否定してきた。
 
もう訳が分からなくなった。
 
今まで正解だと思っていた「勉強すること」が、突然不正解になったのだから。
 
「生きていく上で何をやることが正解なの?」
 
私の頭は混乱し続けた。
 
もう大人たちが言う、やった方がいいことが信じられなくなった。
また、突然否定するんじゃないかと思ったら、何もやる気が起きなくなった。
 
別に私は、勉強ができたわけじゃない。
私より勉強をしている人なんて山ほどいる。
 
でも、私の人生の中での、勉強のウエイトはかなり大きかった。
だから、勉強を全否定されることは、私の人生を全否定されることだった。
 
勉強に悩んで、勉強に苦しんで、勉強で挫折した。
もちろん、勉強で知った楽しさも達成感もあった。
でも、その時思い出されたのは、勉強に悩んだ苦しすぎた日々だった。
 
「勉強をしていなければ、あれらの山ほどの苦しみを味わうことはなかったのではないか」
 
そう思ったら、苦しんだ日々がばからしく思えた。
無駄なことをやって、苦しんでいたなんて。
 
それまでは休みの日も朝早くに起きて、勉強をしていたのだけれど、それを機に起きられなくなった。
朝起きる瞬間は眠い。
それは今までだってそうだった。
でも、だから起きない、という選択肢は私の頭の中になかった。
 
良い人生を送るために、今起きて勉強することが必要と信じて疑わなかったから。
 
でも、その信じていたことが消えたとき、何のために起きるのか分からなくなった。
 
それからというもの、朝早く起きなくて良い日は、いつまででも寝ていた。
 
でも、本当は勉強を全否定された現実を受け入れて、前に進まないと就活で困ると分かっていた。だから、寝ていないで何かしなければならなかった。
 
分かっているけれど、夢の中で現実を忘れていたかった。
今日という一日が一刻も早く過ぎてほしくて、朝なんていう今日がまだまだ続く時間帯には起きられなくなった。
 
就活は、何度も全否定されながらもなんとか内定をもらった。
 
もう全否定されることはない。
残りの学生生活、やりたいことをやれる。
だから、朝も起きられると思った。
 
でも、朝起きてまでやりたいと思えることに出会えなかった。
友だちと会うのも昼からにすることが増えた。
楽しみなのに、朝起きなければならないと思うと、憂鬱で仕方がなかった。
 
そんな時から4年ほど経って、やっと少し朝起きることが憂鬱ではなくなった。
 
それまでの4年間とそれほど何も変わっていない気がするのに、不思議だった。
 
そんなある日、ふと朝起きる瞬間に思ったのだ。
 
子どもが遠足の日とか、家族旅行に行く日とか、何か特別な楽しいことが待っている日は朝だってすぐに起きるし、いい子にしている。
 
私もそれと同じなのかなと思った。
別に今日という日が何か特別なわけではないけれど、子どもの頃楽しみにした今日が訪れたようなわくわくがちょっとだけ、心の中にある気がした。
 
今までと仕事だって変わっていないし、プライベートだって劇的な変化はない。
 
やりたいと思ったことをいろいろ始めたら、朝から活動しないと追いつかなくなっていた。やりたいことだから、せっかくの休日に全部やりたい。
全部やりきった自分を想像してはわくわくする。
 
今までだってそんな日はあったかもしれない。
でも、いつも最初はやりたくて始めたことが、いつの間にか義務になって苦しくなって、頑張れなくなって、そんな自分を嫌いになって……
いつの日か、今日が始めるのが嫌になる。
だから、今日の始まりの朝は憂鬱で、起きたくなくなる。
 
最初は何も知らないから、ちょっとしたことが新しい発見で楽しい。
でも、やっていくうちに絶対に壁にぶつかる。
そんなとき、憂鬱な気分で自分を覆わないで、楽しいと感じていた頃のことや、この壁を登った先を想像して、楽しいと感じられる心を残せるようになりたい。
 
そうすれば、今日が始まる朝が楽しみになるはずだ。
 
これからもいろんなことはあるだろうけれど、いつだって早起きできる人に私はなりたい。
 
 
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2017-10-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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