メディアグランプリ

姪っ子についた、たった一つの嘘


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:Shinji(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
今年も1年で1番頭を悩ます日が近づいてきた。
クリスマスである。
また、世界中の大人が嘘をつく時期でもある。大人はサンタさんをエサに数週間、子供に言うことを聞かせようとする。
 
「早く寝ないとサンタさんが来てくれないよ」
「兄弟喧嘩をやめないとサンタさんがプレゼントを運んで来てくれないよ」
 
こんな言葉で僕も素直に親の言うことを聞いていた。普段しない掃除やお手伝い、宿題など、言われるままに良い子であろうとしていた。
しかし、今思い出してみると、いつの頃からか嘘だとわかっていながら、騙されているフリをしていたものだ。
確かに嘘をつくことはいけないことだ。でも、この時期恒例のやり取りでは誰も傷つかない。幸せ溢れる騙し合いである
ところが、昨年、ついに嘘がバレそうになった。
 
僕には小学校2年生の姪っ子がいる。クリスマス当日直前になると、人気のあるプレゼントは店頭から姿を消してしまうため、いつも早めに準備するようにしている。このプレゼントを選ぶことが1年で最も頭を悩ます瞬間であり、最も楽しい瞬間でもある。
 
作戦は、まずバレないように何が欲しいのかリサーチする事から始まる。
「今年はサンタさんに何をお願いするの?」
これでうまく聞き出せる時は良いが、ここ最近は
「秘密。サンタさんにだけお願いするから」
と言ってくれないことが多くなって来た。
したがって次々に周りの大人が同じ質問を繰り返し、情報を入手した者がみんなに共有するシステムが導入されている。
それでもダメな時は、親に頼って最近何にハマってるのかを日頃の生活から推測してもらうことになる。
こうして何が欲しいかがわかると、次は、その商品を調べる作業に移る。
 
「自転車が欲しい」
「色鉛筆が欲しい」
 
と言うわかりやすいものならともかく、
小学校で流行っているものは得てして知らないものであることが多い。
実際、男の子の人気ナンバー1である戦隊モノは現在何レンジャーか知らないし、女の子人気ナンバー1のプリキュアも今は何プリキュアか知らない。だからこうやって商品のリサーチをする工程が必要となる。
 
商品が何か突き止めて、ようやく次の作戦に移る。
大人同士の談合である。
プレゼントが被らないように慎重に担当を決める。最後までヒヤヒヤするのは、その談合に参加していない大人の当日緊急参戦である。この可能性もできるだけ考慮して被らないように配慮する必要がある。また口の軽いスパイが潜んでないかにも細心の注意を払う。
 
次の作戦は、モノの入手である。子供にバレないように購入するのが意外と難しい。あまりに人気がある商品は売り切れるので、店頭で入手するのは困難が伴う。
必然的に近頃の入手ルートはインターネット経由となる。そして入手後の隠し場所も重要である。子供の嗅覚は思ってるより鋭いため、ここにも注意が必要だ。
 
無事購入が済み、手元に届いたらいよいよ最後の作戦。
ブツの受け渡しである。
ここがまさにヤマ場で、ここで見つかったら今までの作戦が台無しとなる。慎重に演出し、気づかれずに25日の朝目覚めると、サンタさんからプレゼントが届いてる風に見せなくてはならない。
昨年、事件はここで起こった。本当はうまく行くはずだったのに。
 
遡ることクリスマスの1週間前に届いた姪っ子用のプレゼントは明らかにサイズ違い。お店に大至急連絡を入れると
「ハンドメイドのドレスにつき、作り直すのに時間がかかります」
と言われた。製作期間と配送期間を考えると、直接姪っ子の家に配送するしかなかった。
「なんとかクリスマスまでに届けて欲しい」
とお願いしたところ、頑張ってくれて、前日の24日に届いた。しかし、その荷物が届いた所に姪っ子が居合わせたのだ。
「これ何? 誰のもの?」
薄々自分がもらえるものだと気づいているのだろうか、執拗な質問ぜめにあったらしい。
「これはお仕事で使うもの」
とごまかしたらしいが、うまく信じてもらえない。
普段家に届いたものを開封する係が何を隠そう姪っ子であったからだ。明らかに不信感を募らせた姪っ子はその後も
「開けて良い?」
と言い続けたそうだ。
一応「仕事で使うものだから開けちゃダメ」と言い張り、事なきを得たように思えたが、翌日僕の元に姪っ子から電話がかかって来た。
 
「お母さんに言わないでね。ねぇ、サンタさんって本当にいるの?」
 
ついに来るべき時が来たと思った。いっそ白状してしまおうかとも考えたが、その告白をするのは少々荷が重く、結局定型文通りに
「うん。サンタさんはいるよ。今年は何が届いた?」
と答えてしまった。
 
大人になりかけてる姪っ子よ。
ごめんよ。おじさん1つだけ君にウソをついてるんだ。
サンタさんはね、キミのいうとおり、ホントにいるんだよ。
ただね、トナカイにのっては運んでないんだ。
もうサンタさんもだいぶ「おじいちゃん」だからね。
だから、最近のサンタさんはトナカイにのって配らずに、
「アマゾン」をつかうんだ。
よくおぼえときなよ。
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/zemi/40081

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2017-10-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事