筆力不足な私だが、書く理由はそれなりに有ったりするのだ《プロフェッショナル・ゼミ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山田THX将治(天狼院ライティング・ゼミ プロフェッショナルコース)
今年も、新語・流行語大賞の季節になった。
その候補に、将棋の加藤一二三九段の愛称“ひふみん”が選ばれたと聞いて、何だか嬉しくて仕方が無い。
特に普段から、将棋が好きと言い切れる訳ではない。勿論、駒の動かし方位は知っているが、俗に言う「玉より飛車を可愛がる」ヘボ将棋だ。
ヘボ将棋の私にも“ひふみん”の凄さは、少なからず理解は出来る。
残念に思うのは、将棋界では‘レジェンド’と称される加藤九段が、一部マスメディアの影響なのか“ひふみん”の愛称が一般的となっていることだ。その肥満した体躯も相まって、いわゆる‘ゆるキャラ’的な扱いを受けていることだ。
加藤九段自身が、“ひふみん”と呼ばれることを嫌がっていない様だが、私には少々失礼と感じるのだ。
私が感じる加藤九段の印象は、どちらかというと‘格好良い’レジェンドだ。
先ずもって、当時、史上最年少の‘中学生プロ棋士’としてデビュー間も無く付いた呼び名、“神武以来(じんむこのかた)の天才”が格好良い。「以来」を「いらい」ではなく「このかた」と呼ぶなんて、他では聞いたことが無い。第一、サムライに通じるであろう戦いを仕事とするプロ棋士には、そうした時代掛かった呼び方が、実に格好良く思えるのだ。
そして、加藤九段が現役を退いて直ぐに、NHKのEテレで放映された特番での言葉が、これまた深く印象に残っている。それは
「ハイ、これまで2,505局将棋を指して参りました。これは、史上一番で御座います」
というものだった。この発言には上乗せが有り、羽生永世七冠が加藤九段の言葉を受けて
「2,505(局)って数字は、それこそ空前絶後ですよ!」
と驚いてみせたのだ。
実はこの、2,505局という数字には、‘1,180敗’という裏腹な数字も存在する。1,180敗は、勿論、史上最多でこれまた多分、空前絶後だろう。
ただ、こうした裏腹な数字を加味しても、自分の数字を堂々と誇っているところが、私には格好良く見えてしまうのだ。
残した成績よりも続ける勇気に、誇りさえ感じてしまうのだ。改めて、続ける大切さを教えて頂いた感じがした。
これより以前、加藤九段と同じ印象を感じた男が二人居る。
元プロボクシング世界ライト級チャンピオンのガッツ石松選手と、元プロ野球近鉄バッファローズの大エース鈴木啓司投手だ。
今の若い方々には、ガッツ石松というと「OK(オッケー)牧場!」とか訳の分からないギャグを飛ばす面白いオジサンまたは、テレビドラマ『おしん』や映画『戦場のメリークリスマス』に出演した木訥(ぼくとつ)な脇役といった印象を持つだろう。
ところが、ガッツ石松が現役の時を知っている者からすると、目立つ成績ではなかったものの、当時‘史上最強’といわれていた世界チャンピオン、ロベルト・デュラン選手と途中まで五分に渡り合い、惜しくも敗れた世界タイトルマッチを戦った勇敢な選手といった印象があるのだ。
ただ問題は、31勝(17KO)14敗6分けという、おおよそ世界チャンピオンとは思えない、勝率が6割そこそこの生涯成績が残っていることだ。今でもそうだが、ボクシング世界チャンピオンの成績といえば、殆ど負けていないことが常識だ。二桁も負けているガッツ石松選手の様な者が、世界チャンピオンになった例は実に稀だ。
デュラン戦の後、ガッツ石松選手が別の協会のチャンピオンに成った時、こう言ったことを覚えている。
「こんなに弱い(負けが多い)選手に、チャンスを与え続けて頂いて感謝します。
へこたれそうな僕を、いつも励まし続けてくれたトレーナー(故・エディー・タウンゼント氏)のお蔭です」
栄光まで上り詰めたモチベーションを、誇ることなく周りへの感謝とすることが、彼の人間性を表している様に思えた瞬間だ。
一方、“草魂(そうこん)”と自ら称した鈴木啓司投手は、日本では4人しかいない‘300勝投手’だ。勿論、生涯成績は目を見張るものが有る。
これも引退後のインタビューで、こんなことを彼は言っていた。
「近鉄という弱小球団に入団出来て良かったと思っている。甲子園に出ていない俺なんかは、巨人や阪神といった有名球団からは御声が掛からなかった。
でも、弱小球団だっただけに、いくら撃たれても、いくら負け続けても使って(登板させて)もらえたから、300も勝てたんだ。もし、有名球団だったら、2・3年でクビだったよ」
また鈴木啓司投手は、生涯成績で唯一日本記録として残っている“560「被」本塁打”について問われると
「(打者に対し)逃げずに真っ向勝負した投手の‘勲章’だ。勝負師として‘男の本懐’だ」
と涼しい顔で答えた。
負けと正面から向き合い、それを誇りにすらする、実に格好良い光景だった。
加藤一二三九段、ガッツ石松選手、鈴木啓司投手といったレジェンド達と、比べる実績も何も無い私だが、年齢も上がって来たこともありこのところ思う事がある。天狼院のゼミで記事を書き続けているが、何の“為”に書いているのかということだ。
実際いつまで経っても、筆力が上がってくる実感が湧かない。
でも、書き続けたい気持ちは有る。
ライティング・ゼミのプロフェッショナルコースを受講している割には、プロになれそうな気配すらない。その上、周りの受講生の様に、プロの書き手としてやっていかねばといった、切迫感のかけらも無い。いくつもの事業に、首を突っ込んで居るからだ。
では何故、今でも天狼院のライティング系ゼミで書き続けるのか、自問自答してみた。
先ず、プロを目指す者として足りないものは、真っ先に分かっている。自覚している。それは、ストイックさだ。ストイックに成り切れるほど、書くことが‘好きだ’と言い切れてはいないことだ。元々、ストイックに何かに向かう姿を、決して格好良いと思わない変なテレが邪魔をしているからだ。
当然外からは、プロを目指している様には見えて来ない筈だ。
しかも元々、自分勝手に書き散らかしていた癖が抜けず、いつまで経ってもゼミでの教えの通りに書くことが出来ていない。年齢のせいには出来ないが、若い頃に比べて集中力が格段に落ちている。
でも、何かを表現したい、どこかでアウトプットしたい気持ちは、相変わらず旺盛だ。目立ちたがり屋な性格は、生まれ持った物だからだ。
だからこれからも、天狼院でのゼミ課題は、必ずこなす気持ちでいっぱいだ。
初期の頃からの天狼院ライティング系講座を受講している私は、投稿数だけは多い。既にこれまでに、優に三桁は投稿している。掲載率の悪さから、掲載“不可”の数が多いことも容易に想像出来る。
でも、へこたれない。諦めない。
いつか必ず、加藤九段やガッツ石松選手、鈴木啓司投手の様に、掲載不可の数が“空前絶後”となる頃、きっともう少しマシな記事を書くことが出来る様になっていることだろうと信じているからだ。そうすれば多分、現役の天狼院ゼミ受講者のまま、天狼院の“レジェンド”となることが出来るだろうし、なってみたい気もしている。
もう一つ、天狼院で書き続けている訳が有ります。
天狼院で、一番の常連と認めて頂きたいのです。
天狼院を楽しむには、顧客として参加するのが一番です。天狼院は書店の為、最も根幹と思われる活動は、“ファナティック読書会”だと思います。他の読書会との違いは、その‘熱狂さ(ファナティック)’を見れば分かります。しかし私は、恥ずかしながら書店の常連として胸を張れるほどの読書をしてきませんでした。それと、日曜日の午前中に開催される“ファナティック読書会”には、朝寝坊な私には不向きなこともあります。ここでは、存在感を残す事は出来ません。
フォト部も、天狼院が開店して間もなくから有る、名物部活です。実際、フォト部出身と言っていい三浦店主が、プロカメラマンになったことから、こちらも重要な活動であるばかりか部員の多くがプロ並みの腕を持っていると思われます。これは、SNS等で垣間見る、部員たちの作品を観るとその素晴らしさで十分理解出来ます。全くの素人である私が、この期に及んで一から学んだのでは、他の部員達の足手まといにしかならないだろうとも考えて、これから参加するのも躊躇しています。
そこで、今の私が、天狼院を最も楽しむ顧客として誇りを持つことが出来るとすれば、少しでも‘爪痕’を残して来たこのライティング系講座しか無いと思うのです。三浦店主が、プロのライターであり、その店主が直接指導して下さるのだから、しかも天狼院は書店であるのだから、ライティング系ゼミも天狼院の中心である筈です。
今後は、この緊迫感を持って書き続けて行くことをここに改めて宣言します。
私が書く理由。
それは、天狼院の“ひふみん”と認めて頂ける迄、ここに居続ける為です。
天狼院を一番楽しんでいる顧客の座は、誰にも渡す気はさらさら在りませんから。
これからも、頑張ります!
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