私は「プロフェッショナル・ゼミ」の記事が読めない
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:一宮ルミ(ライティング・ゼミ特講)
「私、置いていかれたかもしれない」
iPhoneの画面を見つめがなら、ため息をついた。
時間があればチェックするfacebookのタイムラインに、天狼院書店の「プロッフェッショナル・ゼミ」の受講生が書いた記事がどんどんと掲載されていた。
私は、それをどうしても読むことができない。
夏から受講していた天狼院書店のライティング・ゼミ。講義も終盤に差し掛かかり、私はちょっと息切れしていた。今まで、課題提出の記事を書くため充てていた週末の休みが、仕事の予定に塗り替えられ、仕方なく細切れに空いているほとんどの時間を費やし、記事を書き、常に記事のことを考えた。それに疲れていた。どうにか全ての締め切りを守ることはできたが、最後の数回になると、もうカウントダウンをしているようなものだった。
そんな頃、本気でプロを目指す人のための「プロフェッショナル・ゼミ」のお知らせを天狼院書店からもらった。
「このまま続けてみるのも、面白いかもしれない」
直感で、ほんの一瞬だったがそう思った。
けれど、次の瞬間には、
「自分にそんな実力があるはずがない」
「これからもっと仕事が忙しくなるのに、書く時間が取れるわけがない」
「もう、これ以上しんどい思いはしたくない」
「時間を気にすることなく読書やお出かけに使いたい」
「こんなことにかまけてないで、仕事もちゃんとしなくては」
いつもの「正しい自分」が姿を現し、自分を諭した。
「きっと他に書き続ける方法はある」
そう自分に言い聞かせ、申し込みはしなかった。
「あの人も書いている。あ、この人もだ」
ライティング・ゼミが終了し1ヶ月くらいがすぎたころ、プロフェッショナル・ゼミの記事がfacebookのタイムラインに表示されるようになった。表示される投稿者の名前は、お会いしたことはなくても、毎週月曜の締め切りの日に、私と同じように記事の投稿をしていて、お見かけしていた名前ばかりだった。どれも出だしの数行を読んだだけで、面白い記事であるのが分かる素晴らしいものばかりだった。
読んでみたいと画面をタップするが、数行で画面を閉じてしまった。
面白い、続きが気になる。でもそれ以上読めないのだ。
記事を読めないのは、記事のせいではない。
読みながら頭に泡のように浮かんでは消え、また浮かぶ自分の言葉に耐えられないからだ。
自分が本当にやりたいことはここにあったのではないか、自分の居場所はここにあったのではないか。
いや、いつもの自分勝手な「負けず嫌い」がでただけだ。「自分もその中に入っていい記事をかけたかもしれない」などと自分を過大評価しているだけだ。
それでもやっぱりやりたかったのではないか。
私が階段の踊り場で足踏みしているうちに、他の人はさっと決断し、上の階へ足を進めていたことを知り、ショックだった。
ぐずぐずとあれこれと考えているうちに、時間だけが過ぎていき、気がつけば、残っているのは私だけだという、焦りのような孤独感のようなもので、心がざわついた。
私にとって天狼院書店のライティング・ゼミは、初めて手にした全く新たなチャンネルだった。
地方で生まれ育ち、今も、同じところでずっと暮らしている。
就職し、結婚し、子育真っ最中で、家と職場以外の世界とほとんど繋がることのない、テレビで言えば、ずっと同じチャンネルばかり見ている自分にとって、初めて見つけた、新しいチャンネルであり「外の世界」だった。
本やテレビ、ネットでしか見たことのない世界と私をリアルに繋ぐ唯一のものだった。
ライティング・ゼミを受講している間、私はこの新しいチャンネルに夢中になった。今まで自分と繋がったことのない、いろいろな年齢、職業の人と話す機会を得た。自分の書いたものを褒めてくださった方もいた。そこには私の知らなかった世界があり、ここでは自分のような人間にも居場所があると感じた。もしかしたら、今の閉ざされた世界から出るチャンスかもしれないと思ったりもした。
しかし、受講が終わり、またいつものチャンネルだけになる。いつものように、同じところへ仕事に行き、同じところに帰る、同じ風景、同じ人。相変わらずの自分。
私が、プロフェッショナル・ゼミの記事が読めないのは、まだあのチャンネルを見ていられる人に嫉妬しているのだ。そして、新たなステージへ踏み出そうとしている人を見て、自分の決断力のなさや失敗する勇気のなさに自己嫌悪に陥っているのだ。私は何も変われていないという現実を受け止められないでいる。
あの時の直感に従わなかったことを、後悔しているのだ。
けれど、あのチャンネルを閉じたのは、自分なのだ。
ならばまた自分で開けばいい。
書くのがしんどいのは承知の上だ。
ただやってみたい。それでもいいじゃないか。
もしかすると、本当にそこに自分の居場所があるかもしれない。
私はライティング・ゼミの特講の申し込みをした。
そして、今なら、プロフェッショナル・ゼミに投稿された記事を読めるような気がする。
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