クリスマスだから妄想が止まらない
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記事:西田ひろ子(ライティング・ゼミ平日コース)
いつからだったろう。私にはずっと心に決めていることがある。それは、私の宝物をいつか現れるはずの素敵な旦那様に見せるということ。そして、それを見た旦那様は絶対に喜んでくれるということ。
私の宝物は、実家の私の部屋にある棚の奥にこっそり置いてある。まだ私が中学生だった頃、技術の時間に作った、木製で小型のジュラルミンケースみたいな、その小さな箱に宝物は入っている。
その小さな箱の中には、『あゆみ』とA4用紙を四等分したようなサイズのペラペラの紙に『〇〇さんの魅力』と書かれたものと小学校時代の名札(全学年分)と中学校時代の生徒手帳が入っている。
『あゆみ』は、私が幼稚園の年長さんだった頃のもので出欠状況をシールで管理したり、幼稚園での私の日常生活ぶりを毎月、先生がコメントしてくれていて、言ってみたら、小学校で使われる連絡帳のような機能を果たすものだ。私の幼稚園での日常生活が、私の視点ではなく、先生の視点で書いてあるので、成長過程で読み返す度に色々な発見があり、楽しめる。当時、自分では気づかなかったこともたくさん書いてある。大嫌いな水泳教室でズルしたことが実は先生にはバレていたこと、当時、好きだった男の子の話を先生にしていたこと、私が自信を持って取り組んでいたことや私の基本的な性格に至るまで赤裸々に……。
それから、『〇〇さんの魅力』は、小学校6年生の時、卒業前に担任の先生が一人一人クラス全員にくれたものだ。小学校卒業間際に当時、毎日行われていた「帰りの会」というホームルームで「〇〇さんのイメージを配られた紙に書いてください」という時間が設けられた。出席簿順にクラスメイト全員(確か、日に2人ずつだったと思う)がその日の主役となり、小さな紙にその主役の子のイメージを無記名で書いて先生に提出するのだ。それを集めてその場で先生が読み上げてくれるのだが、私があるクラスメイトの男の子のイメージに「カッコつけ」と書いて、それを先生が読み上げたので、その男の子が「誰だよっ!!!」と立腹していたのを鮮明に覚えている。無記名なので私とはバレてはいないはずだ。それを後日、担任の先生がワープロ(当時はパソコンがまだ普及していなかった)で『〇〇さんの魅力』として、箇条書きにまとめてくれたのだ。私がクラスメイトの男の子を怒らせてしまったように無記名なので率直なクラスメイトの私に対するイメージが箇条書きに記してある。私の場合、思いのほか、良いところがたくさん記されてあった。もちろん、「キツい」みたいなドキッとするようなコメントもあったが、当時、自分を客観的に見るという発想のなかった小学生の私にとって、卒業間際に自分がクラスメイトにどう見られているのかを知ることは良い意味で衝撃的だった。
小学校時代の名札と中学校時代の生徒手帳はそれぞれに思い出があって、なんとなく捨てられなかったものだけれど、『あゆみ』と『〇〇さんの魅力』の存在は長い間、私を助けてくれた。
自分に自信がなくなったときや自分がよくわからなくなったときには私は宝物に立ち返って来た。どんなことがあっても、『あゆみ』と『〇〇さんの魅力』に記してある私の性格や特徴は大事にしたいと思って生きて来た。
高価な宝石やバッグが宝物とか、カッコイイことを言ってみたいが、この一見するとがらくたのようなものこそ、私の宝物だ。
大人になるにつれ、自分を良く見せたいという欲が湧き、自分を良く見せれば見せるほど、嘘をついているような気持ちになることがある。そして相手のことを考えれば考えるほど、本心を出せずに演技に終始してしまうことがある。本当の自分すら自分でわからなくなることがある。
自分を良く見せるという概念がなかった頃の私については『あゆみ』と『〇〇さんの魅力』に記してある。
だから、私の宝物を見れば、未来の旦那様は今の私と変わらない部分(もちろん変わった部分もあるだろう)を見て安心するし、絶対に喜んでくれると思うのだ。
『あゆみ』と『〇〇さんの魅力』に記してある私を見せたいと思い、見せることが出来る人が現れた時に私は結婚するのだろうなといつからだったろう。ずっと思っている。
そして、この文章も見せたいな。それは、私の宝物を見せるにあたっての序幕となり、自分の興味のあること(ライティング)を知ってもらえる良いきっかけになるだろうから。たくさんの思いが詰まっている私の宝物を恥ずかしくて自分の口で上手に説明できるか自信がないから。
これは完全に私の妄想です……。
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