メディアグランプリ

ファッション的職業価値観


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【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:よひら(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
電車の窓は疲れた顔を反射している。冬の太陽は寝るのが早いのかあたりはすっかり暗くなってしまった。家に帰り厚手のスーツとコートを脱いで、ようやく一息つく。
そうそうにシャワーを浴び、テレビを見ながら遅めの晩御飯をかき込む。
幸い、今日はまだ時間に余裕がある。寝る前にまだなにかできるだろう。なにをしよう、映画観るか、それとも買ったきり積読している本に手をだすか、週末の約束にそなえて調べものをするか。やりたいことは際限無くでてくるが、今日は勉強のつづきをしなければ。
勉強、と考えると自分でもちょっとげんなりした気持ちになるけれど、自分でやってみたいとおもったのだからしかたない。疲れて帰ってきて、さらに頭を使うのだからちょっと濃くて甘いカフェラテを自分にいれてあげよう。
大げさに力んでいるけれども、仕事にやくだつ資格試験や、TOEICをしているわけではないのだ。いろいろと勉強している途中だけれども今夜やるのはライティング課題の続き。
周りの友人に、ライティングを勉強していると話すと、呆れた顔で決まってこう言われる。
「なにを目指しているの?」
もっともな疑問だ。だって今の私はおおよそそういったクリエイティブな仕事とは無縁なのだから。理系技術者として半分公務員のような仕事をしているのに、ライティング技術なんて無縁でしょ、と思うだろう。
正直なところ4か月間勉強してみて、自分自身でもいまの仕事にどう活かしていけばいいのか完全にはわかっていない。完璧に身についた気もしないし、なにを目指しているのかも答えられない。まいった、この時間はなんなのだ。と思いそうになるたびにあるCMを思い出す。
「世界は、ひとりの複数形でできている」と銘打ったある企業のCMで、画面には様々なひとが出てくる。それぞれのTシャツには職業が書いてある。モデルだったりプロボクサーだったり医者などいろいろだ。おもむろに彼らはそれを脱ぐと、そのしたからはアルバイトやシングルマザー、患者などちがった文字のTシャツを着ている。
アイデンティティの多様性を表現した映像で、LGBTのひとが出演したことでも話題を呼んだ。
生きているみんなが、どういった視線、高さ、角度からみられるかによって様々な顔をもっている。私もそう、誰かの息子であり、ある会社の社員で同時にお客さんでもある。
みんな違ってみんな良い、このCMに込められているメッセージは分かりやすい。よくあるいい話。しかしながら、初めて見たときにある一人に目が奪われてしまった。そのひとの一枚目のシャツにはダンサーと書いてある、二枚目には囲碁の先生。
いやいや、そんな人ほんとにいるの? ほんとうかよ! と思いながらも妙にわくわくしてしまうではないか。だってギャップがあまりにも大きすぎる。
と同時に、自分の目指したいのはこんな人なのではないか、と思うようになった。
小さいころ「将来はなにになりたいの?」と誰もが聞かれたことがあるはずだ。幼稚園生くらいの頃は戦隊シリーズのヒーローだったり、もう少し大きくなってくれば職業名などで答えてきた。女の子ならお花屋さんが根強い人気だと聞いたことがある。
そのせいもあって、将来イコールなにかしらの職業に就くこと、が自分の代名詞だと思っていたし、会社員になればそれはひとつの会社の名刺がそれになった。
だから、基本的に職業の肩書きはひとつしかもっていないのが普通。その一つが窮屈なら仕事を変えるしかない。でも今の仕事が嫌でしかたないわけでは無いけれど、これだけで生きていくのはつまらない。
CMを見たのはちょうど、転職でもして肩書きを変えたい、と思っている時期でもあった。だから二つの職業を兼ねている彼を見たときに心惹かれてしまった。
妄想だけれども、彼はきっと生徒から人気の先生に違いない。ダンサーとしても、気の合う仲間と真剣に自分を表現する方法を探しているのだろう。そうして、友人と飲んでいるときにこう言われるのだ。
「本業はどっちなの?」と。彼はこう答える。「どっちもだよ」
自分の肩書きや姿を二兎追っているなんてかっこよすぎじゃないか。
 
だから私はライティングの勉強をしている。自分も彼のように颯爽とTシャツを脱いで、まるで服を着替えるように色んな姿を重ね着できるようになりたい。厚手のスーツとコートだけを着る毎日だけでなく、もっといろいろな服を着ることができる人生のほうが素敵じゃないか。クローゼットのなかから服を選ぶように自分の姿はたくさんあって、そのどれもが本当。
いまはまだ、厚いコートしかもっていないけれど、季節にあわせた服を着ることができるようになるために勉強を続けるのだ。ライティングの次にもやりたいことは次々にでてくる。たのしく、ゆっくり、ときどき休みながらクローゼットのなかを充実させていこう。
いつか友人に、「最近は何をやっているの?」と聞かれたら
「会社員でライターで、写真家で、たまにプログラミングをしながらゲストハウスを経営しながらあれもこれも」と話して呆れた顔をされたい。

 
 
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2018-01-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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