メディアグランプリ

知らない人との会話で発見できること


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記事:木村なほこ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
はじめての出産をしたお母さんが、昼間ひとりで慣れない子育てにかかり切りになって、孤独感を感じる、という話を良く聞きます。
自分の体調もまだ万全じゃないし、お父さんは仕事に行ってしまうし。赤ちゃんは可愛いけれど、まだ慣れないと、戸惑うことも多い。
そしてなにより、赤ちゃんとふたりきりの時間があまりに長くて、世間から切り離されてしまったような、取り残されてしまったような孤独を感じてつらい、と。
特に、出産前にバリバリ仕事をしていた人は、仕事をしていたころの自分とのギャップが大きすぎて、余計にそう感じるのかもしれません。
でも、同僚や友人が出産してすぐの時には、あまりそういう話はしてくれないのです。
赤ちゃんが少し大きくなって、余裕が出てきてから、出産してしばらくがつらかった、と話してくれることが多い。彼女たちからしてみれば、私は働いているのだから、話しても理解されないだろうという気持ちがあったのかもしれません。
そんなつらい時期、赤ちゃんをだっこして散歩に出たら、見知らぬ年配の女性から
「まあ、かわいい赤ちゃん。今一番大変だろうけど、あっという間だから大丈夫よ」と声を掛けられ、とても救われたと言います。
 
私は出産の経験がないので、こういう気持ちは想像するしかないのだけど、なんとなく近いかもしれない、と思ったのが、海外で暮らしていた時のこと。
言葉もそんなに話せず、まだ友だちもほとんどいない状況の時、ものすごく孤独を感じて、自分で選んできたのにも関わらず、帰りたいな、と思ったこともあったのです。
そんな時、やはり思い出すのが、見知らぬ人との会話でした。
気軽に知らない人ともあいさつをしたりするところだったから、バスを待っているとき、信号を待っているとき、レジで並んでいるときなど、ふと何気ないときに、声を掛けてくる人たちがいました。
話の内容は、他愛もないことがほとんど。
「今日は暑いね」
「そのシャツの色、素敵ですね、似合っていますよ」
「このオレンジおいしいかしら、どう思う?」
そんなようなこと。
オレンジがおいしいかなんて知らんがな、と思いつつも、それでも、その人たちの笑顔につられて、少し明るい気分になって、今考えると、本当に救われたな、と思います。
 
小さいころ、私は人見知りをする子供で、知らない人に話しかけるなんて、全く無理でした。
母と一緒に出掛けると、時々知らない人と話しているのを見て、おばさんになったら少しはずうずうしくなって話しかけられるのかしら、なんて思っていました。私にとっては、知らない人に話しかけることは「ずうずうしいこと」と思っていたみたい。
関西の人に聞くと、電車の中でとなりに座ったおばちゃんからあめちゃんもらう、とか普通にあるなんていうので、すごくびっくりしていたのです。
 
あるとき、私はスーパーで買い物をして出てきたところで、珍しく虹が出ているのを発見しました。ひとりでいたのだけど、誰かに伝えたくなって、思わずそばにいた見知らぬ女性に
「虹が出ていますよ、きれいですね」と声を掛けてしまいました。
そうしたら、その人も、ああ、ほんと、きれい、と言ってにっこりしてくれたのです。
虹が見られた感動を、その場で誰かと共有できたことはとてもうれしかったのだけど、知らない人に話しかけるおばちゃんになったのか、という複雑な心境。
だけど、海外暮らしの時のことを思い出し、ちょっと心があったかくなったのです。
 
別に大した会話じゃなくても、心が通じ合ったと思えることって、すごくうれしいのですよね。
言葉の通じない外国人と、身振り手振りでなんとか意思が通じた、とか、ライブ会場で盛り上がって意気投合、とか、本当に人って、小さなことでも共感できるとうれしいみたい。
最近ではSNSにそういう役割があるのかもしれないけど、やっぱりライブで、その場で一緒に体験できたことの方が強いと思う。
 
知らない人に自然に話しかけられるようになった自分のことを、おばちゃんになって図々しくなった、ともとれるけれど、共感しあえるうれしい機会が増えるかもしれない可能性の方が、ちょっとうれしい。
そして、もしかして自分にとっては他愛ない会話であったとしても、相手からしたらとても心に残る機会になっているかもしれない。
新米お母さんが声を掛けてもらったときのように。
異国で寂しい思いをしている私が救われたときのように。
だからもっと、気軽に話しかけて見ようと思う。

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2018-02-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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