メディアグランプリ

「ルーチン」こそが最強に「クリエイティブ」な仕事である


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記事:NORIMAKI(ライティング・ゼミ 特講)

 
 
ライティングを学んでいたりすると、編集業界の人やクリエイターと言われる方々と接する機会も多くなってくる。それらの人に共通するのは、文字どおり、皆「クリエイティブ」な仕事をしていること。何が「クリエイティブ」か、定義は難しいけれど、「何もないゼロなところから、新たな価値となるイチを生み出す」といったところだろうか。外見的なところで言えば、パソコンはマック、洒落たメガネをかけ、スタバでコーヒーでも飲みながら、「ノマド」的に仕事をサクサクこなす。そんな、イメージが浮かんできたりもする。
 
これとは真逆の業界というと、どうであろうか。たとえば、役所の方。法律や規定という決められたルールに則って、誰に対しても決められたとおりの行政サービスを提供し、基本、定時になればピタッと窓口を閉めて業務を終える。そんな感じが、思い浮かぶ。言ってみれば、役所というのは「クリエイティブ」というよりは「ルーチン」の宝庫だという気がする。我々が役所でよく利用するサービスとして、たとえば、住民票の発行というのがあるが、これは「ルーチン」業務の代表格といえるかもしれない。
 
ここで、我々が住民票を手に入れるまでの一連の流れを考えてみよう。最近はコンビニでも発行可能といった市区町村もあるが、基本的には、まず役所に出向いて「申請書を記入する」ということから始まる。書き終えた申請書を窓口に出すと、担当者がいくつかササッと目を通して記入項目を確認し、奥の方へ消えていく。ここから先は想像の世界になるが、たぶん別の担当者が申請書の記入項目をダブルチェックする。そこでOKが出れば、コンピュータに入力し、再度、画面上でもいくつかのチェックを経て、住民票がプリントアウトされる。プリントアウトされた紙の状態でも、恐らく複数の人の目をくぐり、その後、「問題なし」となってはじめて、申請者の手に渡る。およそ、こんなところではないだろうか。
 
ここで大事なのは、「誰がやっても」「あなたの住民票」が「間違いなく」発行されるということだ。担当者が気分で「今日はお父さんのもついでに一緒に発行しておきました」とか、「同姓同名の人がいたので間違えちゃいました」なんてことは、絶対にあってはならない。これが起きたら、役所は存在意義を完全に失ってしまう。「定型化」「システム化」こそ役所の命と言ってもいいかもしれない。
 
ところがだ。あなたの住民票を間違いなく発行するという「結果」は、誰がやっても変わることはないが、発行までの「プロセス」は、実際は担当者によって、随分開きが出てくると考えるほうが自然だ。たとえば、名前という記入項目のチェック方法。Aさんは名前の文字を目で追いかけて、主に「視覚」を使って誤りがないかを確認するかもしれない。これを仮に「ビジュアル系」としておこう。Bさんであれば、書いてある名前を一字一句小さな声で読み上げて、主に「聴覚」を使って確認するかもしれない。今度は「オーディオ系」とでもしておこう。はたまたCさんの場合は、自分で一度紙に書き起こすことによって正しさをチェックするかもしれない。あまり数は多くないかもしれないが、これを「ライター系」とする。たまたま、今は名前のチェック法のバリエーションが多岐にわたることを例として見てきたわけだが、この「プロセス」にこそ「個性」が宿るのではないか? というのが、ここでの重要ポイントである。言い換えれば、「定型化」された業務の「プロセス」にこそ、「クリエイティビティ」を発揮できる可能性が大いに残されているのではないか? ということである。
 
さて、頭を役所から切り替え、自分の職場を考えてみよう。管理職ではなく、現場のリーダーくらいの社員であれば、上司から「これやっといて」と言われた仕事のうち、おそらく半数以上は、誰がやっても「結果」に差が出そうにない「定型化」された業務ではないだろうか。こういうときは、「また、つまらない仕事を振られた」と嫌になるかもしれない。けれど、次回からは、ぜひ発想を転換してほしい。
 
たとえばそれは、ファイル名の付け方だったり、フォントの色だったり、メールのヘッダーの工夫だったりするのかもしれない。なんでもいい。「結果」は同じでも、「プロセス」に独自の色を盛り込むのだ。そうやって、「ルーチン」を自分色に染めるという仕事のやり方を徹底していく。そうすると、それはいつの間にか自分のブランドになっていく。最近読んだ『ラクして速いが一番すごい』という本にも、そのようなことの大切さが書かれていた。また、同書には、どういう「ありがとう」を言われたいかを意識するとよいということも書かれていた。それはたとえば、「手早く対応してくれてありがとう」だったり、「隅々まで気配りしてくれてありがとう」だったりする。前者の場合は、「スピード」がその人の優位性になっていて、後者の場合は、「キメ細やかさ」がウリだったりする。そうやって「プロセス」に注目し、差別化を図ることで、自分流の仕事を確立していくことができる。今度「ルーチン」に出合ったら、「これこそ、俺のクリエイティビティを遺憾なく発揮できるチャンスだ!」と思い直してほしい。そこにはきっと、仕事の新たな楽しさが隠されていることだろう。
 
 
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2018-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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