私は文章を書くのが怖かった
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記事:高林忠正(ライティング・ゼミ特講)
私は文章を書くのが怖かった。
なぜなら、いつも書こうとするとフリーズしてしまったからだ。
土井英司さんのもとで勉強をさせていただいた『10年愛されるベストセラー養成コース』。
卒業プレゼンテーションでご縁をいただいた編集者さんのもとで、「気が利く」というテーマで書こうとしたものの、どうも続かない。
全然書けないのだ。
天狼院書店さんのスピードライティングを通信で始めた今日、あらためて感じたことがある。
それは、「自分は書けない」と思い込んでいた事実だ。
自分には、三越で過去28年間にわたって蓄積してきた接客のシーンがある。
お客さまを前にすると自然に体が動き出す。
これは無意識からのものだ。
百貨店に勤務して、さまざまな経験をさせていただいた。
快楽よりも、痛い思い出ばかり。
「自分って、接客に向かないかも」ってなんども思った。
お客さまを前にするだけでドキドキした新人時代。
慣れてきたと思った20代の後半、知らずしらずに手抜きを始めたように思う。
事実をよく見ないうちに、目の前のお客さまに対して勝手に判断してしまうことだ。
「この方は、、、したいにちがいない」と、あいまいな事実でありながら、決めつけて接客をしようとしていたのだ。
当然のことながら落とし穴が待っていた。
お客さまからのクレームの嵐だ。
良かれと思って行動したことが、ことごとくお客さまを怒らせてしまう。
怒らないまでも無視されて、「もう2度とこんな店舗に来るものか」という表情をされたこともあった。落ち込んだ。店頭で販売するにあたって自信のかけらもなくなってしまった。
「自分は百貨店には向かない人間だ」
そんなとき、たまりかねた一人の先輩が私に言った。
極めてシンプルな一言だった。「お客さまを観察しようよ」と。
最初、「観察」と聞いた時、正直言って、そんなことと思ってしまった。
お客さまの姿を目で見て、ことばを耳で聞いて、身体で感じること。
観察を習慣化するだけで、心に落ち着きが出てきたのである。
「おれって何でダメなんだろう」
この気持ちは、今回の文章と共通していたように思う。
「おれって、何で文章が書けないんだろう」
いわゆる「思い込み」だ。
「接客するのは得意ではない」
「自分は、要領がよくないし、、、」
「お客さまを前に話すなんて、ムリムリ」
「おれって、お客さまを前にお世辞だって言えないし」
これらの心の声って何だったのだろう?
実は自分の思い込み。
そうであるにちがいないという単純な思い込みだったように思う。
三越時代の最後の4年間、社内公募の制度を利用して、店頭の販売から、法人外商本部という法人の営業に異動した。
仕事の内容は、飲料メーカーさんのミネラルウォーター、缶コーヒーのノベルティ(おまけ)を企画提案する営業だった。
自分にとっての三越での集大成のつもりで臨んだ仕事だった。
おかげさまで4年間で3度の社内MVPを受賞することができた。
このとき私は前を向いて、スピード感を持って仕事をしていた。
それは、「自分はできる」、「自分はできそう」、「この仕事って、自分の天職」と思い込んでいたからのように思う。
「自分はできそう」と思い込むと、どんな障害やカベがあっても超えられる、突破するぞという行動が生まれた。
ゴールに向けて、目の前のハードル越えるというよりも、走り抜けていくイメージで仕事をしてきたように思う。
あのとき、「自分はできる」と思ったように、今回、「自分は書ける」と思ってみる。
なぜなら今回、編集者さんからいただいた企画というのは
「高林だったら書ける」
「高林なら、今までの本とは別の見方でコンテンツを作ってくれるにちがいない」と思いから私に託したものだからだ。
今自分ができること。それはいただいた企画の下での、「心が動く」文章だ。
読んだ人の心が動き、それがその人の行動につながって、欲しい結果が手に入るような文章だ。
「自分は書ける」
今回の企画は自分のためのものだ。書くことで自分の人生を切り開いていきたい。
そのために今日も書く。自分にしか書けない文章を。
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