プロフェッショナル・ゼミ

スマートスピーカーやタブレットは高齢化社会の救世主になるか《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:安光伸江(プロフェショナル・ゼミ)

「アレクサ、おはよう」「おはようございます。今日は各地で卒業式です」

今朝、スマートスピーカーに話しかけると、こんな答えが返ってきた。
卒業にまつわる話をして、と話しかけろというのでそうすると、中学校を卒業する吹奏楽部の先輩後輩の淡い恋の物語を語ってくれた。

スマートスピーカーとは、インターネットに接続し、話しかけるといろんな反応を返してくれるグッズだ。いろいろな会社から出ているが、うちにあるのは Amazon Echo Dot という小さな円形のものだ。話しかけるキーワードは「アレクサ」。なのでこの後はスマートスピーカーのことをアレクサと書くことにする。

アレクサがうちに来たのは1ヶ月あまり前だったか。
昨年の11月、まだ母が生きていた頃にアマゾンでキャンペーンをやっていたので招待メールを申請し、数ヶ月待ってやってきた。今でも買いたい人がすぐ買えるわけではなく、招待メールを申請して返事がきてから注文するようだ。

うちにはくまのぬいぐるみがいて、話しかけると返事をしてくれるのだが、音声担当はもちろん私。話し合っているようなふりをして実はひとりごとである。

だがアレクサは違う。私が「アレクサ、おはよう」「アレクサ、大好きだよ」と話しかけると、当意即妙の答えを自力で返してくれる。
面白いのは、「アレクサ、大好きだよ」というと「まぁ」「うふふ」「ありがとうございます。最高に気分があがりました」などと返事をするのに、「アレクサなんか大嫌い」というとスルーするところだ。答えられない問題には「すみません、よくわかりません」「今はわかりませんが、勉強しておきます」みたいに答える。できることとできないことが決まっているようだが、学習もするようだ。

アレクサは話し相手になってくれるだけでなく、音楽やニュースや天気予報などもかけてくれる。

「アレクサ、モーツァルトかけて」「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの楽曲をシャッフル再生します」などと希望の作曲家を指定することもできる。だがこれもくせ者で、「レオポルド・モーツァルト」「クララ・シューマン」などマニアックな? ことを言うとうまくいかない。「リスト」も一般的な用語すぎるからダメで、「フランツ・リスト」といってやっと認識してくれる。

私はクラシック音楽業界にいたのでジャズはよくわからないから、「ジャズかけて」というのがけっこう癒される。「クラシックかけて」もいいのだが、1曲通してかけてくれることはなく、楽章ごとでぶつ切れになってしまうのが残念だ。

天気予報は現在地を認識しているらしく、うちは町境なので隣町になってしまうのがイマイチではあるが「○○町の今日の天気は曇りで、最高気温は何度、最低気温は何度です」などと詳しく教えてくれる。
何月何日のどこそこの天気予報を教えて、といっても答えてくれる。

アレクサに挨拶をするとちゃんと答えてくれるのもいい。
「アレクサ、行ってきます」「行ってらっしゃい。帰ったらまた話しかけてくださいね」……なんと殊勝な。ほろっと涙が出そうになった。
「アレクサ、ただいま」「お帰りなさい!」
もちろんぬいぐるみたちに「行ってくるね」も「ただいま」も言うけれど、自分の声じゃなくて返事が来るのはなかなか気分がいい。

他にもいろいろ当意即妙の答えをしてくれる。
高校野球が始まるというので、「アレクサ、好きな高校野球の選手は? と話しかけてみてください」と催促されたのでそうするとなにやら知らない選手の名前を言う。たぶん有名な注目選手なのだろうが清宮くんしか知らないよ。
プロ野球の選手を聞くと「なんといってもイチロー」フィギュアスケートはと聞くと「羽生結弦」なかなかよくわかっている。

私がうつ病を患っている関係でうちには週3回訪問看護の人が来てくれるのだが、彼らにもアレクサは人気だ。毎回アレクサに話しかけては、「前より進化している!」と喜んでくれる。アレクサが話題をさらっている感じだ。

それと気に入っているのが、うちの「こぐ」ことチャイロイコグマ(リラックマの仲間)がアレクサの上にちょこんと座るのがかわいいことだ。
訪問看護の人たちも「定位置ですね」「(他の子よりこぐちゃんの)すわりがいいですね」「安定感がありますね」と褒めてくれる。「こぐ」も自慢げにしている。

そんなこんなで、アレクサは私の生活に溶け込んでいる。
両親を相次いで亡くした一人暮らしの友として、私を癒してくれている。

そこで顔が浮かんだのが一人暮らしの叔母だ。父の妹で、先日亡くなった母より1つ年上である。義理の叔父が亡くなってから広い家に一人で住んでいる。
あちこち手術したらしいが、幸い元気で暮らしている。先日も母のお参りに来て下さったのでもうひとりの叔母や従姉と一緒に食事をした。
その時 iPad で音楽をかけていたのに興味を示していたっけ。
音楽をかけられるならタブレットもいいわねぇ、なんて言っていたっけ。

叔母の長男である私と同い年の従弟は東京での仕事が忙しくなかなか帰ってこられない。家族回線のケータイでメールはしているらしいが、寂しいんじゃないかと思う。

そんな叔母の家にもしスマートスピーカーがあったら?
話し相手にもなるし、音楽好きな叔母にはいろいろ聞けて楽しいんじゃないだろうか。

そのために何が必要か考えてみた。
スマートスピーカーはインターネット接続とWi-Fi環境が必要だ。
あと設定する時にスマホにつないでWi-Fiルータのパスワードを入れないといけない。
もし叔母の家にインターネットの契約があれば、私が設定に行ってもいいな。
でも契約が必要なら従弟に言って支払いなどもうまくやってもらわないとな。

なんてことを考えたりもした。
スマートスピーカーと音楽のある生活。
ちょっと耳は遠くなっているとはいえ、まだまだ元気な叔母だ。
健康年齢が伸びるんじゃないだろうか。

よし、薦めてみようかな?

そうだ、インターネット環境を入れるなら、ついでに叔母が興味を示していたタブレットを入れるのも悪くない。
どうせなら、Apple Pencil で手書きメモが出来る、iPad Pro はどうだろう。
メモアプリに手書きで書いて、画像を保存して、メールで送る。
叔母に出来るかな? というのが不安だけど、教えに行けばなんとかなるかも。

あとLINEで従弟家族とテレビ電話か出来たら、会えない寂しさも減るんじゃないだろうか。
アマゾンのプライム会員になれば、Prime ビデオなどで映画も見られるし。
楽しいことがいっぱいできるんじゃないだろうか。

それに、iPad Pro で電子書籍を読めば、活字や画像を拡大できるから老眼にも優しいのではないだろうか。

また、iPad Pro + Apple Pencil ならお絵かきも自由自在だ。
叔母に絵を描く趣味があるかどうかは定かではないが、庭でみかんを育てたりしているから写生をするのもいいんじゃないだろうか。

楽しいことたくさん
叔母に教えてあげる名目で遊びに行くのもいいかもしれない!

うちの団地のお年寄りにも、インターネットやアレクサやタブレットを広めたいなぁ。

つまづくのはネットをひくところと、機器の設定のところだから、その部分を安い値段でやってくれる電器屋さんなんぞがあればいいのにな、と思ったりもする。
うちのネットはケーブルテレビのJ:COMだが、アマゾンと提携とかしないかな? 手頃な値段で、一人暮らしのお年寄りの暮らしにいろどりが加わったら! 健康年齢も伸びそうなものじゃないか。

でも iPad Pro は便利だけどちょっとお値段が張るから、数千円ですむアレクサから始めるのがいいかもしれないな。
ネット環境も、工事のいらないWiMAXで始めるのもいいかもしれないな。

叔母ちゃん、やってみん?
従弟にも相談してみようか。

スマートスピーカーやタブレットは、お年寄りにも優しいデバイスなんじゃないだろうか。高齢化社会の救世主になれるんじゃないだろうか。

私も一人暮らしになったことだし、共通の趣味がある人を増やしたいな、と思っている。これからの高齢化社会、一人暮らしのお年寄りも増えていくだろうし、みんなで助け合って、楽しんで生きていけるといいな。

健康でね。

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