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メディアグランプリ

80歳のスマホデビュー


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ももの(ライティング・ゼミ平日コース)

「公衆電話から着信!? 誰だろう?」
出てみると、母だった。
「電話かけられなくなっちゃったの、どうしよう」と母。
ついに、この時が来てしまったか……。と心の中で覚悟する。

80歳を超える母に、スマートフォンを持ってもらおうと決めたのは、1年前。
シンガポールに住んでいる私の姉が、無料通話アプリで連絡を取りたいから、
母にスマートフォンをもたせてほしいと、連絡が来たのだ。

80歳超えてからの、スマホ利用は正直、難しいのではないか? と思っていた。
スマートフォンの初期設定をした時、この小さなコンピューターを母が使いこなすことができるだろうか? という不安が、私の中に広がっていくのを感じていた。
ついに、それが現実化したのだ。
母は、スマートフォンから電話することできなくなり、公衆電話から私に助けを求めて電話してきた。

契約したショップの店員さんには、一日何回も聞きにいっており、もうこれ以上、恥ずかしくて聞けない、と母。たしかにそうだ。いくら契約しているとはいえ、何回も聞きにいくのは恥ずかしい。

電話がかけられない? 母のスマートフォンの中で何が起こっているのだろうか? 検討がつかなかったので、私が直接、スマホを確認することにした。
スマートフォンのアプリをひとつひとつ、確認していく……。
たしかに、通話するアプリが消えている。
よくよく、目を凝らしてみる。すると……

電話のアプリが新しく作った空のフォルダの中にはいりこんでいるのだ!
これじゃ、みつからないはずだ。

無料通話アプリにおいては、アプリケーションを削除してしまっていた。
私は絶句した。 この動きを想定していなかった。
アプリケーションを削除してしまうなんて、想定していなかった。

高齢者である母にとって、タップする、スライドする、という作業は、とても難しいようだ。
母はすっかり、落ち込んでしまった。
「スマホノイローゼ」にかかってしまい、夜もよく眠れなくなってしまった、と愚痴をこぼしている。

その上、シンガポールに住んでいる姉からは、無料通話アプリ内で「既読」となっているのに、返信がないとは、なにが起きたの! 読んでるの? と、やや怒りぎみのメールまで私のところへ来るようになってしまった。

姉からすると、どうして、こんなに便利で簡単なものを使えないのか、理解できないらしい。

いつから、こんな厳しいものの見方をする人になってしまったのだろう、私はつい、悲しくなってしまった。
現代では便利の代名詞のようなスマートフォンだが、高齢者である母にとって、スマホは、生活を脅かす小さな悪魔となっていた。

私は、電話のアプリケーションの位置を元にもどし、無料通話アプリを再インストールした。長押しはどのぐらいの長さなのか? ということを詳しくレクチャーし、帰宅した。
今まで、「長押し」が、どのぐらいの秒数、画面を押さえておく必要があるのか、考えたこともなかった。
なにげなく使っている、操作ひとつひとつを考えされられた。
タップは、どのぐらいの速度でタップすると、機械が反応するのか?
なんて、考えたことなかった。
そのひとつひとつの馴染みのない動きが、母を苦しめていたのだ。

母の周りでスマートフォンをつかっている人がいるか、尋ねてみたところ、
ほとんど使っている人はいない。母と同世代は、ガラケーをつかっている、とのことだった。
その後、半年ぐらい経っただろうか、母は周りの知人、友人の助けを借りて、めきめきと、スマートフォンを使いこなしていった。
いつの間にか無料のスタンプを手に入れ、送ってくるようになった。
さらに、この通話アプリ内の「ニュース」の記事を読めるようになった。
いまでは、スタンプで、大体のコミュニケーションをできるようになった。
そして、無料通話アプリからの着信にも即座に応答できるようになった。
すごい適応力だ。
いつの間にか、母のアイコン部分の画像が変わっている。
どこで習得したのかわからないが、写真から、画像を変えるということまで、できるようになっていた。
助けてくれる方に感謝したい。おそらく、母が通っている、手芸の教室の先生か、スポーツクラブのスタッフ達が助けてくれたのだろう。ありがたい。
この場をかりて、お礼を伝えたい。
電話をすると、いろいろと愚痴っぽくなる母だが、スタンプによるコミュニケーションは、どこかユーモアがあり、つい笑ってしまう。
スマートフォンは高齢者である母からみると、恐怖の玉手箱のようだ。
仕組みがわからないし、何をしたら、どうなるのかさっぱり検討がつかない。
私は、スマートフォンのことを、1タップで何でもできる魔法の箱のように感じていた。同じ箱でも、私と母では大きく認識が異なっていた。
今日も、母からはコミカルなスタンプが送られてくる。今ではそれを見るたびに、母が元気でいてくれている証拠のように感じた。

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2018-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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