嫌いとは、好きという意味かもしれない
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記事:ももの(ライティング・ゼミ平日コース)
「お母さん、もう……やめたいんだ」
あぁ、ついにこの日が来てしまった。8歳の娘が半年前から通っているプログラミング教室を止めたいというのだ。
娘が生まれてから、親心とばかり、様々な習い事のクラスに通った。
英語教室、書道、そろばん、ダンス教室、赤ちゃんの時から行うことができる通信教育……英語の通信教育も続けられなかったな、それから、後は何があっただろう、思い出すと情けないし、悲しくなる。
ことごとく、どれもこれも、見事な程、継続できなかった。
そして、今度はプログラミングをやってみたいという。
ゲームをするのが大好きな娘なら、ゲームを作ることもきっと好きだろうという、今考えると、非常に安易な考えで、通うことを決めてしまった。
最初に行ったプログラミング体験教室では、小学生の他の子と一緒に、簡単なゲームを作った。
子供がプログラミングを学ぶための「scratch」というソフトを使用する。
キャラクターがいくつかあり、そのキャラクターの動きのプログラムを書いていく。
ローマ字がわからない子供でも出来るように、マウスを使って、ブロックになっているプログラムを選んで設定できるようになっていた。
教室の運営は、大学生のようなお兄さん、お姉さんが親しみを込めて、
ゆっくり丁寧に教えてくれた。
教室内では、「もっち」とか、「ショコラ」とか、好きなあだ名で呼び合う。
「お稽古事の先生」という堅苦しいイメージを一切排除しているところが、娘も気に入った様子だ。
今度こそ、続けられるのか? もはや祈りに近い気持ちだった。
娘を信じよう。そんな気持ちで通うことになった。
学校が長い休みに入ると、通常の講座とは別に短期のプログラミングスクールを開講する。
2日間の集中ワークショップだ。
集中的にプログラムを作るのかと思っていたら、
最後に発表会をするので、プレゼンテーションの練習をするという。
プログラムを組んでいたのは、約半日で、残りはプレゼンの練習を行っていた。
発表するのは、自分がつくったのは、どんなゲームか、どこを工夫したか、
どこがイチオシポイントなのか? を完結にスピーチする。
待っている時の姿勢、入場の仕方、退場の方法まで練習していた。
プログラミングと、なんの関係があるんだろう、という気持ちがチラッとかすめたが、頭を振ってそれを打ち消した。なんでもいいから、なんとかして、続けて欲しかったのだ。
ワークショップの前半でモジモジして声が小さかった子も、翌日になると、自信がついてきて、堂々と大きな声で発表できるようになっていた。
娘も精一杯、自分の作ったゲームを発表していた。
私は安堵していた。今度こそ、続けられる習い事と出会えたんだ! と
正直に言うと、そう信じたかったのだ。私自身が。
その矢先である。
またもや、習い事を止めたいと行ってきた。
理由を聞いてみると、お稽古の時間が2時間あり、長すぎるというのだ。
たしかに、大人でも2時間は長い。
しかし、今度こそは! ということで、パソコンまで新調してしまったのだ。
止めるわけにはいかない。
しかも、購入したパソコンは、カリキュラムの後半になった時、iPhoneアプリの開発ができるように、AppleのMacなのだ。
私も夫もWindowsしか使用したことがなく、四苦八苦しながらセットアップしたパソコンだった。
3年間のスクールで、パソコンをレンタルする費用を計算したら、買った方がお得になりますよ、という言葉をそのまま鵜呑みして購入してしまった。
完全に親のエゴだ……ごめん、娘よ……。
こんな大人の事情もあり、どうしても、止めるわけにはいかなかった。
こうして、のらりくらり、その話題をさけつつ通っていた。
「もうすこしだけ、やってみようよ」と何度も声をかけて継続してもらっていた。
ある日、娘が通っている学校で、一人ひとり「私の好きなこと」という題材で、
スピーチをする機会があった。
娘がどんな原稿を書くのか、正直、母親の私にはわからなかった。
彼女が好きなのは、YouTube、Nintendo Switch等、学校ではあまり推奨されていないものばかりだった。その題材で書くとは思えなかった。
夕飯時、娘が話しかけてきた。
「今度のスピーチ、私の好きなものっていう題材なんだけど、プログラミングのことを書こうと思っているんだ」
正直、びっくりした。止めたいといっていた、プログラミングのことだ。
自分で、どうしてこの習い事を始めたか、プログラミングとはどのようなことなのか、どこが好きなのか、 ということをスピーチ原稿にまとめていた。
「練習するから、聞いてね」といって、原稿を読んでくれた。
発表の本番の日、緊張するなぁ、といいながら、登校していった。
帰ってきてから、様子を聴くと、上手に発表できた、と誇らしそうだった。
嫌い、辞めたいと行っていたことの中にも、隠れた「好き」がある。
まるで、昔ピーマンが食べれなかった娘に、小さく細かく切って混ぜたら
「おいしい!」と言って食べた、あの日のことを唐突に思い出した。
親の都合でなんとか、続けてもらった習い事だが、そんな中でも、「嫌い」の中に「好き」を見出してくれていることに驚いた。
こうして、隠れた「好き」を探していくのが、親の仕事なのかもしれない。
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