メディアグランプリ

ダメ山ガールが単位を落としたワケ


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記事:山田 真知子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「山」と言ってどのようなスポーツを連想するだろうか。
私はスキーやスノーボードで、山とはリフトやゴンドラで上り、板で雪面を滑り降りるものだと思っている。
 
私の辞書に「山登り」なんて言葉は存在しない。私は山登りが本当に苦手だ。いや、むしろ嫌いだ。
山登りというイベントをことごとく回避し続けながら、雪山で挽回し続けてきて早数十年。
突然何を思い立ったか、山登りをしようと心に決めた。
自分の好きなことしかせず、自由奔放に生きてきた私が、今回この山登り通じて、
専門学校で単位を落とした過去と向き合うことになったのである。
 
「山登り」それは「専門学校」と同じだ。
みんなで同じ山頂を目指し、助け合い、学びながら登頂(卒業/資格取得)を達成する。
私がなぜ単位を落としたのか、この山登りで思い知る事になるのである。
 
 
今回の衝動的な山登りに付き合ってくれたのが、私をとてもよく理解してくれている相棒山ガールだ。
相棒山ガールはちょこちょこ近隣の山に挑戦しているようで、とても心強い。
 
私は山登りについて全く調べなかった。
「専門学校」でいえば、学校の詳細情報も知らずに試験を受けに行くようなものである。
 
そんなダメ山ガールの私が準備したものはこちら
・寅一のタオル
・折り畳み式の長袖(夜&雨用)
・日焼け止めクリーム
・シティー使用のNikeのおしゃれスニーカー
・デニム(足首丸出し)
・くるぶしソックス
・綿素材の半袖Tシャツ
水と食料はコンビニで買えばいいし、地図は携帯に入っているし、何の問題もなし。
 
山登り好きの皆さんからしたら、この無知なダメ山ガールはアホすぎて話にならないでしょう。
ただ私は本当にこれでいいと思っていた。
 
私はこの山登りにおいて全く準備をしていなかったし、達成するという強い意志もなかった。
ちょろっとやってできるものだと思っていた。
私は山への本気度が足りなかった。
 
思い起こせば、専門学校時代の自分もそうだ。
その職業になりたいという強い意志がなく、必死に勉強している友人達との温度差を感じていた。
そんなに必死にならなくても、ちょろっと勉強すればその職業につけると思っていた。
その本気度が足りなかったがゆえに、単位を落とす結果につながったと思う。
 
今回は相棒山ガールが、私の分の帽子と軍手、お水、食料を持ってきてくれたからこそ、無事に下山し、こうやって呑気に書くことができているのであるから、本当に感謝しかない。
 
 
駅から登山口まで、道路を15分くらい歩くが、急こう配の連続で運動不足の体が悲鳴を上げる。
まだ登山口というスタート地点にも立っていないのにすでに帰りたくなっている。
登山口を入るとダム横の険しい階段を上り続けなくてはならない。
景色を楽しむ余裕なし。
休むスペースなし。
相棒山ガールのおしゃべりに付き合う余裕なし。
「本当に来るんじゃなかった……」50回くらい心の中でつぶやく。
開始3分ビールが飲みたくなり、ものすごく帰りたくなった。
 
相棒山ガールが「大丈夫?休もうか?」と私に声を掛けてくる。
気を使わせまいと、ビールが飲みたいことだけ伝えてもくもくと登っていた。
本来なら、私が相棒山ガールに対して「大丈夫?」と声を掛けるべきところであるが、人を心配する余裕など微塵もない。
 
ケータイをチェックすることはおろか、おしゃれスニーカーはみるみる土まみれになり、綿のTシャツは汗でじっとりしていて、気持ちが悪い。動きやすさ重視ではいてきたはずのデニムは、伸縮性に欠け汗を吸って重いとすら感じる。「なぜランニングウエアで来なかったのか」と後悔する始末
 
お気軽に飲み会に参加するかの如く、山登りを始めた私は早々に後悔をすることになったのである。
 
このできごとこそが「専門学校」そのものなのではないかと感じた。
葛藤しながら進み、人との関わりに助けられ、一歩一歩見えないゴールを目指すことの繰り返しで、登頂(卒業/資格取得)を達成する事なのではないかと……
 
「来るんじゃなかった」→「ビール飲みたい」を繰り返し考えながら登っていると、小鳥のさえずりや心地いい風、見たことのない草花に目を向ける余裕がでてきて、次に来るときの事を考えたりする。
その繰り返しが自分自身を成長に導くのではないかと……
準備不足から多くを学び、自分の世界の小ささを痛感したこの山登りは専門学校卒業以上の何かを私にくれたような気がする。
 
人生を山登りに例える人がいるが、まだまだ人生経験の浅い私は、今回の山登りを「専門学校」ととらえたが、次回の山登りでは、また違った感覚を持つかもしれない。
山登り嫌いの私が、もう一度登りたいと思っているのだから、山の魔力(魅力?)というのは、本当におそろしいものである。
 
相棒山ガールこと、還暦過ぎた母親に感謝しつつ、登頂した達成感をつまみに生ビールを流し込もう。

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2018-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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