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面倒見の良い少年のママ秘密


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:島田弘(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「小さい子なんだから、優しくしてあげなきゃダメだろ」
 
郊外のショッピングモール内での出来事である。
 
ショッピングモールなどに行くと、遊具などが置いてあり、小さな子供達が自由に遊べるスペースを見かけると思う。
 
事はそこで起こったのだ。
 
2歳くらいの男の子が、そのスペース内に落ちていたバルーンアートを見つけ、楽しそうに遊び始めた。
 
まもなく、
 
「それ私の。返して」
 
と小学校に上がる前くらいの女の子が近づいてきた。そして、強引に男の子からバルーンアートを取り上げた。女の子は満足気だが、男の子はいまにも泣きそうな顔に変わっていき、やっぱり大声で泣き始めた。
 
すると、猛烈なスピードで一人の少年がその女の子の前に現れて、
冒頭の言葉を発したのだ。
 
「小さい子なんだから、優しくしてあげなきゃダメだろ。風船はまたもらえるし。だからそれ、あの子に上げろよ」
 
今度は女の子は泣きそうな顔になりながらも、小さい子に風船を手渡した。
 
それを見て少年は「えらいな、お前」と女の子を褒めてあげていた。
 
しばらくこの少年を観察していると、自分の兄弟とか友達じゃない小さい子の面倒もよく見ていて、危険なことをしようとする小さい子には「それはダメだよ」と声をかけて、手を取りやめさせたり、転んだり、どこかにぶつけて泣いている子がいるとすぐに近づいて様子を確認してしていた。
 
この場にいる15人ほどの子どもの様子をよく観察しながら、自分自身も汗だくになって全力で遊んでいるのである。
 
私はこの少年にとても興味を持ってしまい、少年が帰るまでここで様子を見ていようと決めた。
 
1時間ほどの間に、何人も子供が入れ替わっているのだけれども彼の面倒見の良さは変わらない。
 
「ママのところに行ってジュースを飲んできな」と水分補給を促したり、遊具にイタズラをしている子には「これはみんなのものだから、そういうことをしたらダメだよ」と叱ったり。
 
運動量も全然変わらない。髪の毛から汗が滴り落ちるほど動き続けている。
 
私は我慢ができなくなって、この少年に声をかけてみた。
 
「えっ、2年生なの!」と思わず声を上げてしまった。
 
小学校2年生で、近くのダンス教室に通っていて、その中でいつも年下の子たちの面倒をみているってことを教えてくれた。
 
小学2年生ということは8歳。8歳にしてこの行動力、面倒見の良さ。
いったいこのリーダーシップをどうやって身につけたんだろう。
 
私が小学2年生のときを思い出してみた。学級委員をやらされたけれど、
この少年のような行動力やリーダーシップはなかった。学級会の司会や、先生から頼まれたことをしたり、伝えたりするだけの役割だった。
 
どうすれば、どんな環境にいればこの少年のような子になるのだろう?
どんな教育をしたらこの子のようになるのだろう?
この少年のご両親はどんな人なんだろう?
どんな教育方針なんだろう?
幼児教育、英才教育とか何かやったのだろう?
どんな躾をしているのだろう?
 
私は大学生の時の経験を含めると12年ほど学習塾で働いた経験がある。その時の保護者とその子供の相関関係のデータからこんな仮説を立てて見た。
 
両親は大卒。パパは真面目なサラリーマン、ママは専業主婦。両親とも教育熱心で、0歳から幼児教育を受けさせている。脳や心の発達も運動能力の発達も優れているのではないだろうか。8歳ながらも、自立をさせようとしているのかもしれない。
 
あなたはこの少年の親御さんがどんな人だと想像するだろうか?
 
遊びスペースの周囲を取り囲んでいる親御さんたちを見回しながら、どの人がこの少年の親御さんなのか探してみたが、それらしき人が見当たらない。
 
「買い物をしている間、子供をここで遊ばせているんだな」と考えていた時だった。
 
私の背後から
 
「たけし、テメェ何やってんだよ!」
 
という、それはそれは大人の私でも恐怖を感じる大音量のハスキーな女性の声がした。
 
振り返りたい気持ちがあったけれど、怖くて振り返れなかった。
 
「時間を守れよ、ぶっ飛ばすぞ!」
 
その声が私の左後方から近づいてきた。
 
そして、私の視界に入った。
 
 
そこには金髪に黒のジャージ上下、キティちゃんのピンクのサンダルのママがいた。
 
「ヤンキー?ヤンキーママの子供が、この少年なの?」
 
という私の疑問は
 
「ママ、ごめんなさい」という少年の言葉で解決した。
 
私にとって今年一番の衝撃だった。
 
 
私の興味関心は恐怖心に勝ってしまった。
 
 
「息子さんの様子を拝見していました。とても面倒見の良いお子様ですね。もしよかったらどんな教育をしているのか、何に気をつけているのか教えていただけないでしょうか?」とヤンキーママに声をかけてみたのだ。
 
すると、急に声をかけた見ず知らずの私に対して、非常に礼儀正しく、丁寧に対応をしてくれたのだ。
 
「うちの教育方針は私がセンパイから教えてもらったことだけなんです。仲間を大事にしろ。仲間を裏切るな。弱い者を守ってあげろ。これだけです。夫婦揃って中卒なので、勉強のことは何もいえないんです」と。
 
どんなセンパイなのか質問しようとしたら、それを察してくれたようで教えてくれた。
 
「私、この辺りで一番大きいレディースの元総長なんです」
と子供に聞こえない小さな声で。
 
200人をまとめていた元総長の面倒見の良さは間違いなく子供に受け継がれている。

***

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2018-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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