それでも時間は過ぎていく、電車のごとく
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【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:松田紗也加(ライティング・ゼミ日曜コース)
「えっ……」
めまいがして、携帯を握りしめたまま道に座り込んでしまった。
その電話は、妹が白血病と診断され、無菌室に入院したという知らせだった。
「2カ月前、お正月に会った時はピンピンしてたのに、信じられへん……」
それから2年間、壮絶な闘病生活が続いた。
そして、昨年の9月に、妹は天に召された。
まだ若かったし、こんなに早く別れの日がくるなんて、まったく想像していなかった。それは受け入れ難い現実で、「あれは夢の中の出来事だったに違いない」と思うくらい現実感がなくて、でもやっぱりそれは現実で、夢遊病者のように、深い深い悲しみの中を長い間彷徨った。
あれから、8カ月……。
ようやく最近、現実なのだと、受け入れることが少しずつ出来るようになってきた。
それと共に、「人生は有限である」ということを、はっきりと感じるようになった。
今までも、生まれたら死ぬということは、頭では理解していた。だけど感覚としては、延々と続くように思っていたし、そんな日々の過ごし方をしていた。朝起きて、出勤して、帰宅して、ダラダラダラダラ……、惰性で過ごしていた毎日。幸せになるには、どうしたら良いのか? と思いつつも、明確な目的もなく、なんとなく日々が過ぎていった。いつまでも続くこんな人生、つまらないとさえ思っていた。
だけど、妹が入院してから、ふと道を歩いていた時、「自由に外を歩けるって、幸せやなことやなあ」という気持ちが浮かんで来た。なんでも好きな物が食べられることも、桜を愛でたり、祇園祭に行ったり、好きな時に好きな所へ行けることも、「なんだか、有難いなぁ」と呟いている自分がいた。そして、あんなにうっとおしいと思っていた仕事でさえ、「元気に仕事が出来るって、なんて有難いことなんやろ」と、そんな気持ちまで出て来るようになった。
と、同時に、「病気って、突然やって来る。もっとしっかり生きなあかん」と思うようにもなった。
だけど、妹のことが心配で心配で、弱っていく姿を見るのがこの上なく辛く、やり切れない気持ちが襲ってきて、そんな感謝の気持ちは、すぐにかき消された。
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だけど今、だんだんと思うことがある。
人生は、「たとえば、京都から東京へ行く電車の旅と似ている」と。
電車内で、食事をしようが、寝ていようが、本を読んでいようが、人と言い争いをしていようが、電車はただ終着駅の東京へ向かって走り続ける。車内の出来事など一切関係なしにだ。そして東京に到着したら、その電車の旅は終わる。
人生も、自分が何をするかに関係なく、時間は終着駅である「死」に向かって進んでいく。どこで何をしても、時間は平等に過ぎていく。自分の置かれた状況に関係なく、時間は刻々と過ぎ去っていく。
そうすると、過ぎ去る「時間」に関係なく、車内(空間)でどう過ごすかが大切になってくる。そう、気づいた。
今までは、ゴールに到達したら楽しいけど、その道のりはしんどくて当たり前だと思っていた。あんまり吟味することなく、何かを始めて、登山とか、マラソンのような心境で、ひたすらゴールを目指して頑張るものだと思っていた。けど、ゴールに到達しても、思っていたような感動がなくて、がっかりして、また違うことを見つけて、ゴールを目指してひたすら走るの繰り返し。「なんだか疲れるわ」と思っていた。
だけど……、そんなことをしても、人生のゴール(死)に到着したら、何も持って降りられない。それを妹の死を通して、まざまざと見せつけられた。
妹が人生を賭けて教えてくれたことを、これから大切に生きていこうと思う。
人生という空間の中で、「どんな体験をするか」意図的に選ぼう。
そう考えると、そんなにたくさんの事が選べないことに気づいた。
やっぱりある程度極めないと、本当の楽しさはわからない。何かを極めるには、一万時間という期間が必要であるという「一万時間の法則」というのがある。となると、仕事以外で1つのことを極めるには、10年かかるということだ。そうすると、5つ位しか選べないではないか! 人生の短さに驚いた。
これは、ボヤボヤ、ダラダラしていられない。
私は、子供の頃から本が好きだった。父の書斎には、遊びに来た友達がびっくりするほどたくさんの本があった。「文章を書きたい……」
「美味しいもんを食べてる時、みんな、ほんまに幸せそうな顔しゃはるなあ……」サザエさんのまあるいちゃぶ台で家族でご飯を食べながら、小さい頃そう思った記憶がある。「お料理の腕を極めて、心がほっこりするお料理をみんなに振る舞いたい……」
やりたいことが、ポコン…ポコン…と浮かびつつある。
なんにもしなくても、それでも時間は過ぎて行く。
泣いても笑っても一生は一生だ。
終着駅に着いた時、「楽しい旅やったなあ」と笑って電車を降りられるように。
「何をして過ごそうか……」しっかり決めて、人生という電車にゆられて行こうと思う。
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