貧乳人生も悪くない《プロフェッショナル・ゼミ》
＊この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事：松尾英理子（プロフェッショナル・ゼミ）
「私の胸、ちゃんと大きくなるかなあ」
ああ、娘はまだ小学生なのに、既に心配し始めている……。女に生まれたからには、まず最初につきまとう悩み、それが自分の胸がちゃんと大きくなるか？ という心配事。大きすぎても小さすぎても悩むのだけど、「胸は大きいほうが女子として魅力的」という先入観があるから、小さいことで必要以上に悩んでしまう女子の方が圧倒的に多いのは今も昔も変わらないようです。
天狼院の川代ノートで、川代さんが時々、貧乳女子代表としてモノ申している記事が本当に面白くて、電車の中でふきだしそうになったことが何度もあったけど、あれって当人達からすると全然笑い事じゃなくて、若い女の子達は本気で悩んだり、劣等感でいっぱいになっているっていうのが現実だと思います。それは私も貧乳女子だったから痛いほど分かります。
でも、若い貧乳女子のみなさん、安心してほしいんです。逆転できるチャンス、貧乳でよかったって思える時がきっとありますから。ということで、今回は貧乳女子に向けたエールのつもりで書いていきたいと思います。
女にとっての「胸」は、特に貧乳女子にとっては、人生のステージごとに大事なことが変わっていく、と勝手に思っています。
第１ステージは、「何よりも大きさが一番」なステージ
第２ステージは、「大きいよりも出ることが大事」なステージ
第３ステージは、「重いより軽いことが大事」なステージ
第１ステージは、「胸は女性らしさの象徴」みたいに思えてしまう時期で、年齢で言えば10-20代くらいでしょうか。特に10代は「私の胸、もう少し大きくなるかも」とまだ期待を持てる時期だからこそ、豊かな胸に憧れを持つのかもしれません。最初の洗礼は、部活の合宿や修学旅行での「みんなで一緒に入るお風呂体験」でしょう。同じ女子なのに、何でこんなに違うの……。目の前であからさまに突きつけられた事実に愕然としてしまうのです。その後、もう胸が大きくなる可能性は絶たれたと思える時期からは、胸にパッドを入れてみたり、いろいろ工夫してみるわけだけど、後には虚しさばかりが残るもの。私自身、「胸が大きくなる方法」とか調べまくったし、谷間が欲しくて「谷間ブラ」の類も買いましたね。でも、当然何の変化もあるわけがなく、その度毎に打ちひしがれていたような気がします。
そして次は第2ステージ、いよいよ貧乳女子のチャンス、「大きいより出ることが大事」なステージです。
ここは、出産を経験する人たちが通過するステージです。妊娠し出産が近づくと、無条件に胸が大きくなってきます。母乳を出せるように準備するからです。その変化は半端ない感じです。妊娠出産を経験した女性なら、きっと誰もが予想以上だと思える体験をしていると思います。出産後、母乳をあげている期間は、例えばＡカップの人でもＤカップを越える大きさにまでになると思います。だいたいサイズは３つ越えが平均じゃないでしょうかね。ということで誰もが、人生最大の大きさになります。つまり、第2ステージでは、胸はある程度大きいのは当たり前なんですよね。だから、子どもを将来産みたいなと思っている貧乳女子は、楽しみにしていて欲しいです。私自身も、人生初めての谷間に、自分で見惚れてしまう毎日でした。ああ、谷間があるだけで、こんなに幸せな気分なれるものなんだ……。そんなことも初めて感じることができました。
だから、第２ステージでは大きいか小さいかより、母乳が出るか出ないかが勝負になります。貧乳だと、母乳がうまく出ないんじゃないか？ って貧乳女子が最初に悩み不安になる問題がありますが、胸の大きさは全く関係ないってことだけは確実です。心配なしです。
でも、この母乳というのが、思った以上にうまく出ないのが現実なんですよね。それで、ノイローゼになってしまう女性もたくさんいます。母乳自体が出にくい人もいれば、赤ちゃんが嫌がって吸引してくれない、ということも。ネット上にはたくさんのママの悩みが飛び交っています。でも、いろいろな情報や意見があって、見れば見るほど混乱してしまいそうになるのです。もちろん、どうしても出ないって言う人もいるけれど、ほとんどの場合はちょとした習慣や努力で改善できることも多い。つまりですね、第１ステージの胸の大きさは、持って生まれた大きさが全てで自分ではどうしようもないのだけど、第２ステージでは、努力や工夫で勝ち組に転じる可能性があるのです。
ただ、第２ステージも、母乳が出る期間を終えたら強制終了です。１年くらい胸が大きい状態が続くので、もしかするとこのまま大きいままかもしれない、という淡い期待を持ちますが、そんな調子のいい話はなく、当然のことながら、元の貧乳に戻ります。ネットを見ると、当時の私と同様、「出産後の胸の大きさを維持する方法はありますか？」という質問を本気で投げかけているママが結構たくさんいて、笑えます。実際それは、まるでシンデレラの魔法がとけってしまったような感覚でした。ただ、呑兵衛な私の場合は、第2ステージ中はお酒が飲むことができなかったので、巨乳と引き換えに呑兵衛な私を取り戻すことができました。どちらかを選択しろと言われたら、確実に後者を取るので悔いはありません。
そして、第３ステージ。年代的にはアラフォーを超えるあたりでしょうかね。「重いよりも軽いこと」が大事なステージです。胸が大きい、イコール重いです。私の場合、第2ステージはたった１年ちょっとだったけど、人生史上最大の胸を経験して思ったのは、胸が大きいって、結構重くて疲れるってことです。胸が大きい人達も大変なんだなあ、ってつくづく思えました。それに胸が大きいと、視界の中に常に自分の胸がある感じで、これはこれでなんだか目障りと思える感覚もありました。さらに、40代も超えた頃になると、四十肩だの五十肩だのいう、肩こりのひどい症状が出てくる女子が多くなってきます。原因はいろいろあるみたいだけど、胸の大きい人の方がその症状が出やすいみたいです。なぜなら、胸って結構な重さがあるものなんです。
胸の重さは、いろいろな機関が調査した結果を見てみたら、重量とそれに相当する果物はこんな感じです。
Aカップは150グラム。みかん2個分。
Bカップは300グラム。かき2個分。
Cカップは500グラム。りんご2個分。
Dカップは750グラム。グレープフルーツ2個分。
Eカップは1100グラム。梨2個分。
Fカップは1600グラム。小玉メロン2個分。
いや〜。胸の大きい人って本当に大変ですよね。そりゃ、肩も凝りますよ。Cカップ以上の女子は、毎日ペットボトルを1本を超える重さを胸に抱えて生活しているってことでしょ。私は昔から肩こりになりやすい体質なので、もし胸が大きかったら、多分四十肩や五十肩になってたはず。だから、貧乳でよかったのかもって思えるわけです。さらに、第3ステージも後半になってくると、もうどんどん引力に逆らえなくなってくるわけじゃないですか。これまた、貧乳じゃない人は大変だと思いますね。さらにさらに、これから先のことを考えても、シニアの朝の定番「ラジオ体操」も、下着なしで飛び跳ねられるだろうし、いろいろ楽でしょうね、きっと。
と、第3ステージまで辿ってきましたが、貧乳人生も悪くないでしょ。まだまだ先の話で、そう言われてもって思うかもしれない。でも、これに加えて、人生1周どころか2周以上していると、もう胸の大きさなんてどうでもいい、と思えてくることだけは確実です。それ以上に、しょげずに苦楽を共にし頑張ってくれた自分の貧乳が愛おしくさえなってきますから。逆に、卑下して悩んじゃってごめんね、って思えてきますから。
とにかく、今の若い女子達は迷うことが多く大変ですよね。社会人の入口の時点で、ちょっと昔の女子とは比べ物にならないくらい職業や働き場所の選択肢があるし。社会人になった後も、ちょっと前までは「結婚したら半分が辞め、子供が生まれたらほとんど辞める」っていう時代が長く続いていたけど、今はそうじゃない。選択肢が増えていることは、女子にとっては歓迎すべきことなのだけど、その分、若い女子には人生でたくさん悩んでたくさん決めなきゃいけないことが、次から次へと待ち構えているものね。だから、胸のことなんかで深く悩まないでね。
くどいようだけど、貧乳人生、ちっとも悪くないです。こんな風に、今は人よりも欠点だと感じていることが、将来長所になったり、逆転することが、ほかにもいろいろあるかもしれません。どうしても、隣の芝生は青く見えてしまいがちだけど、でもいつかは、長年付き合ってる自分自身が、一番青く思えるようになってくるはずだから。
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