徹底して働く、覚悟があるのだろうかと、悩んでいる。《プロフェッショナル・ゼミ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:松下広美(プロフェッショナル・ゼミ)
「私、仕事やめようかと思うんだ」
この言葉を、初めて同期の仲間から聞いたのは、就職して3年目くらいのときだったと思う。
最初は「そっか、残念だな」と思ったけれど、新しい道に進むと決めたことを応援していた。それから、30歳になるくらいまでの間に、次々と同期は転職していった。そして8人いた同期は、1人もいなくなった。
しばらくは、取り残されたような気分になっていた。毎日のように会って、同僚というより友達だった。仕事のこともプライベートのことも、いろいろなことをリアルタイムで、本音で話していた。それなのに、いつの間に次の道へ進むことを考えていたのだろうと、さみしい気持ちになった。
私もなんとなく辞めたいなーと思うことがなかったわけではない。上司に衝突したときや、なかなか自分の力を認めてもらえないようなとき、仕事なんて辞めてしまいたいと思った。でも、私は仕事を「辞める」理由は見つからなかった。
あるとき、雑誌を読んでいて「仕事を辞める覚悟・辞めない覚悟」というような特集があった。それまで「辞める」ことは覚悟を決めるものだと思っていた。でも「辞めない」ことも覚悟を決めることなんだと知って、目から鱗が落ちた。細かい内容までは覚えていないけれど、辞める理由が見つからないのであれば、私は「辞めない」覚悟を決めようと思った。
辞めない覚悟をしたからなのか、30歳を過ぎたあたりから、チャンスをもらうこと多くあり、仕事が楽しくなった。そうか、覚悟を決めるということは、こういうことなんだと思った。真剣にいろいろなことに取り組み、やればやるほど楽しくなる。楽しさはどんどん加速していく。もう「辞める」「辞めない」の、ふたつのことが私の中で戦うことはなくなっていった。
でも、ずっとその状態が続くかといえば、そこまで人間はできていなかった。
仕事を楽しいと思うようになってから出会った仕事仲間。
働く場所は違ったけれど、よく一緒に行動した。「あれに行ってみない?」と勉強会に参加をしたり、「あそこに行ってみたいんだけど」と旅行をしたりして、仕事の話も真剣にできるし、プライベートもさらけ出せる。
同じ場所に立って、同じ景色を見て、同じように進んでいく。一緒に頑張っていくんだ。ずっと並んで走っていくんだ。もしかして、ちょっとリードしているかも? と、それくらいのつもりでいた。
でも、違った。
ひとりで突っ走っていて、ふと隣を見たら、いない。後ろを振り返っても、いない。気づいたら、前の方にいて、背中しか見えなくなっていた。
え? ちょっと待って。
そんな声をかける暇もなく、背中を追いかけてみるけれど、追いつく気配すら、ない。
そっか。世の中、そんなもんなんだな。
急に、いろいろなことが、つまらなくなった。
楽しいと思っていた仕事がつまらなくなった。残業も苦じゃなくて、やればやるほど評価されて進んでいくんだと思っていた。でも、これで果たして評価されるんだろうか。出世とか、ずっとできないんじゃないか。本当にやりたいことができると思っていたけれど、それは違うんじゃないかと思い、やる気をなくした。
与えられた仕事をこなし、それ以上のことは頑張らなくなってしまった。それでもそれなりにそのポジションで、それなりの評価はもらえる。優じゃなくても不可ではない。それで、いっか。
プライベートでも、いろいろ出かけていたのが、前ほど気力がなくなった。
家でぼんやり過ごすことも多くなっていた。
テレビをぼーっと見ながら、携帯でFacebookを流し読む。なんか面白いもの、ないかなーと。
そんなときに目に止まったのが「天狼院書店」だった。
天狼院書店の中のハイパーコンテンツの「川代ノート」をいつの間にかフォローをしていたのだが、川代ノートに天狼院書店が関係しているということを知った。
面白いことを求めていた私は、川代ノートを始め、WEB天狼院の記事をむさぼるように読んだ。それまで流し読みをしていたFacebookの記事など相手にならないくらい、面白い記事が溢れている。この人の記事、面白い! と川代さん以外にもファンになる人もできた。
っていうか、これ、普通の人が書いてるの?
WEB天狼院の記事を読んでいると、
※ この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
という一言が必ず付いている。
私はいつの間にか、「ライティング・ゼミ」の申し込みページを読んでいた。
仕事が面白くなくて、何か面白いことを探して飛び込んだ「ライティング・ゼミ」。ずっと「なんとなく」参加したんです、と言っていた。
「なんとなく」面白いことがしたくて。
「なんとなく」私にもできるんじゃないかという気がして。
「なんとなく」やってやろうかと思っていて。
「なんとなく」以外の部分は消して、語っていた。
だって、「なんとなく」書き始めた、すごい面白い記事が書けたらすごいじゃん、という浅はかな気持ちだった。
それでも「なんとなく」書き続けて、プロゼミへ進み、気づけばライティングを学び始めて1年と9ヶ月が過ぎた。
書き続けているけれど、自分はこれからどうしていこうかと、迷っている。
仕事が面白くないと言っていたけれど、それは一過性のものだったのか、それとも「ライティング・ゼミ」に出会ったことで私に人生が変えられてしまったのかわからないけれど、仕事は楽しい。会社特有の人間関係をやりくりしていくこととか、やる気のない人たちの相手をしているのは面倒な時があるけれど、それがあっても、それなりにやりがいのある仕事をしていると思える。
それなのに……。
徹底して働く、覚悟さえあれば。
この言葉を目にしたとき、衝撃をうけた。
天狼院書店スタッフ募集の川代さんの記事。
仕事を変えたいと思っているわけではない。仕事がこれから面白くなっていきそうな気配を感じるし、自分でいうのもなんだけど、それなりに期待されているような立場であるとも思っている。
なのに、なんでこんなに心が揺らぐのだろう。
仕事を辞めたいと思っているわけでもないし、転職だって考えていない。
確かに、スタッフの人たちと接していて、この人たちと働くことができたら楽しいだろうと思うこともある。
でも、0から1にするようなクリエイティブな力がないことは、39年間生きてきたことで実感している。そしてライティングを学んでいるこの2年近くでも、誰もが思いつかないような物語を書くことはできなくて、どちらかといえば消費者側なのかなと思い知らされている。
ただ、あの記事を読んでから、ずっと喉に小骨が引っかかったような、そんな気分なのだ。
「徹底して働く」ような覚悟を持って仕事に取り組んでいますか? と、問われているのだろうか。
まぁ、それなりに仕事はこなしていても、今の仕事で徹底して働いているか、と言われればそうじゃない。
ふと、思うことがある。
会社という枠組みから離れたとき、自分にどれくらいの実力があるのか、と。
どこか他のところで、力を試してみたい。
ずっと同じ場所にいるからこそ、安心するのではなく不安が大きい。いらないと、会社の外に放り出されてしまったら、自分に何ができるのだろうと怖くなる。
試すなら「今」じゃないかと、だれかに言われているわけでもないのに、強く強く思うのだ。
でも、自分の力を試すにしても、正直なところ、自分にできる「何か」がわからない。
「あなたに何ができますか?」
と、問われても、答えに迷う。
ただ、「できないことは何ですか?」と問われたら、それも、ないのかもしれない。
「徹底して働く、覚悟はありますか?」
そう問われたら、
「どうやって、何をして、これから働いていくかはわからないけれど、徹底して働く覚悟は、ある」
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