プロフェッショナル・ゼミ

あなたの家庭には、社長が4人います《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:小倉 秀子(プロフェッショナル・ゼミ)
 
「あなた様のご家庭には、社長が4人います」
 
はい???
 
社長が4人??
我が家は4人家族ですが……全員社長ですか!?
 
なぜこんなおかしな事を宣告されているのか。
私は占いの館にいた。生まれて初めて、お金を払って占ってもらっている。
 
きっかけは、親友から聞いた「算命学」というものに関心を持ったからだ。
日頃から仲良くしている親友二人が、偶然にも二人とも「算命学」で占ってもらったという。その結果、自分を知り相手を知る事で、困っていることへの向き合い方が分かり、前向きに捉えられるようになった。そして事態は好転していった、と聞いたのだ。
私も、そんなありがたい占いがあるのなら、私の困り事の向き合い方も是非教えてもらいたいと考えたのだ。そして親友が懇意にしている算命学の占い師Aさんを紹介してもらった。
 
算命学。占いに疎い私は、そんな占いがあると初めて知った。Aさんに占ってもらったとき、まず最初に算命学とはどんなものかを教えてもらった。
算命学は、中国四千年の歴史ある占星術を背景に、学問として確立された。古代の中国王朝お抱えの占い師のみが知り、王朝が栄えるための鍵を握る、秘伝の、そして一子相伝の運命学だったそうだ。
「人」は自然界の一部として、「人」の運命を自然界に置き換えて分析する。「人」そのものは星に置き換えられ、自分の生まれ持った宿命星というものが存在する。生年月日によって、一人の人に9つの星が割り当てられる。
また「陰陽五行思想」に基づいている。「陰陽思想」とは、全ての事象は、それだけが単独で存在するのではなく、「陰」と「陽」という相反する形(例えば明暗、男女、善悪など)で存在するという思想で、「五行思想」というのは、万物は「木火土金水」という五つの要素により成り立つとするものである。
これらの考え方をもとに、算命学では生年月日から、個人の性格、人生の諸段階の運命を知ることができるという。
 
元来、私は占いを信じる方ではなかった。占いによって未来を先に知りたいなんて、思ったこともなかった。もし占ってもらった結果が悪い運勢だったら、「来年あなたの運は最悪です」なんて言われたら、当然落ち込むではないか。
それに、占いに頼ることが、なにか他力本願な気がしていた。困難は自分でなんとか解決させようとするタイプで、よっぽどのことがない限りあまり人に相談した事がなかった。
 
けれど、親友たちが人に相談し話を聞くことで救われ、前向きな気持ちになれたと聞いて、そういう方法で自分の心と折り合いをつけるのもありかも知れない、と思い始めた。
 
子供達もだいぶ手が離れ、自分に使える時間が増えてきたこの頃、果たしてその時間をどう使って行こうか考えていた。家族のために精一杯使うのか、それとも外に社会のつながりを求めるのか。私はこの先の人生をどうして行きたいのか、そんな事を日々考え続けているときだった。
ただ、子供たちの手が離れたと言っても、問題が何もないわけではない。長男はもう大学生なので見守るしかないけれど、次男はまだ中学生だ。この次男も結構個性的で、目が離せない。夫はいつも協力的だけれど、こんなに自分のやりたい事を優先させる私を本当はどう思っているのだろう。
そんな風に思い悩む事が色々あって日々疲れていた。これぞ精神的どん底だと思った。
でも、今どん底なら、占いで万が一この先のことが悪く出ても、今より悪いことはないと受け入れられるかも知れない。そう思い、もしかしたら何かヒントをくれるかも知れない占いに、頼ってみようかという気になったのである。
 
そして占ってもらった結果が、「あなた様のご家庭には、社長が4人います」だった。
どういう意味か。
 
算命学では、人の運命を表す星の種類が12種類あり、その中に「一家の家長」を意味する星がある。我が家の4人はみんながみんな、これを持っているというのだ!
占い師のAさんも大変驚いていた。家族の全員が「一家の家長」の星を持っているというのは、あまり見たことがないようだった。
 
「一家の家長は、文字通り家のリーダーですから、一家にひとりいればいいんです」
 
そうですよね。
リーダーが4人も……っていうか、全員リーダーの我が家はどうすればいいんですか?
 
「息子さん二人は、早く自立させる事です」
 
なるほど。
それぞれ自立して早く一家の家長になれば、持っている星をうまく使えているという事になるんだ。
 
で、我が家の実際の家長は夫であるとして、では私はどうすればいいのでしょう? まさか、「別の家の家長になってください」なんて言わないですよね??
 
「あなた様のそのエネルギーを、他の事に精一杯使ってください」
 
「一家の家長」の星は、運命を表す12種類の星のうちで、エネルギーが最大なのだそうだ。その持てるエネルギーを最大に使って生きる事が、その星をよく使えている事になり、与えられた運命に沿った生き方をしているという事になる。
算命学の良いところは、「一家に家長が4人」という、一見すると皆相性が悪いと言われているように見える運命を、どう受け入れ、どう切り開いていくかを示してくれるところだと思った。「悪い」と言い切って終わりせず、いかに持っているものを上手に使ってより良く生きていくか。
決して「運勢を上げる」という事ではなく、最初から与えられた運命として受け入れる。そして試練もまた最初から与えられたものであり、自分の持てるものを最大限に使って乗り越える。
このような物事の捉え方を知っただけで、随分と気持ちの持ちようが変わってくる。今までは、「これから私はどうしたら良いのか、何をしたら良いのか」と暗中模索のような、先の見えない不安を抱えていた。けれど、「持てる家長としてのエネルギーを他の事に存分に使ってください」とはっきりと言われ、この時私は自分の目標を持ち、この先これを達成するためにエネルギーを最大限に使おうと決意した。
 
 
それにしても、我が家はみんな別の方向を向いていて、なんかバラバラだなあと息子達が小さい頃からずっと感じていた。でも「社長が4人」と聞いて、とても合点がいった。
特に子供が小さい頃は、家族一緒に行動しているご家庭が多い。週末のショッピングセンターでよくご近所の家族をお見かけしたが、うちは夫も息子も買い物に関心がないので大抵私はひとりで買い物をしていた。週末にひとりで買い物する姿を見られるのは、何だか家庭がうまくいってないみたいで恥ずかしい事のように感じていた。
「なぜ一緒に行ってくれないの?」と夫に強要し、「なぜ出かけると決めたのに急に行きたくないと言い出すの?」と気分の乗らない息子たちを無理に連れ出そうとした。
「家族は仲良く、いつでも一緒に行動しなければいけない」という私の身勝手な思い込みを家族に押し付けようとしていたのだ。そんな愚かな思い込みを、夫や息子達が受け入れる訳がないのに。しかも私はこの思い込みをなかなか捨てる事が出来ず、しばらく囚われ続けた。週末にひとりで買い物に行く度、公園で遊んでいる親子を見るたび、夕食を皆揃わずにまちまちな時間に済ますのを見るたび、「どうしてうちはこんなにバラバラなんだろう」と孤独な気持ちに襲われた。最近子供達が大きくなって、そもそもそんなに家族で行動する機会自体が減った事で、やっとあのどうしようもない寂寥感から解放されつつあると感じていたところだった。
そんな時に、「あなたの家庭には、社長が4人いるようなものだ」という言葉に出会った。「これは受け入れるべき運命で、持てるものを使っていかに前を向いて進んで行くかが大切」と教わった。
みんな社長なのだから、私の意に沿わせようなんて考えるのが間違いだったのだ。それそれが好きな事をやる。うちはこれでいい。これが我が家に与えられた運命だ。私はこれを受け入れるだけだ。
そう思ったら、苦しくなくなった。我が家はバラバラなのではない。夫も二人の息子達も、そして私も、一家の家長になり得るほどの大きなエネルギーを、運命にしたがって最大限に使おうとしているのだ。運命に沿って生きているのだから、間違っていないのだと肯定できるようになった。
そう思えるようになってから、私の心は随分と安定した。先行きのわからない不安は消えた。私が安定したからか、家庭の中も以前より穏やかになり、笑顔が増えた気がする。それぞれが好きな事をやっていて、生き生きしているように見える。長男は学校、バイト、遊びに明け暮れ、家族の用事には都合の合う時だけ参加する。次男は趣味に没頭し、外出があまり好きではないようだけれどついてくればそれなりに楽しむ。夫は週末に大好きな野球観戦に出かけ、とてもリフレッシュして帰ってくる。私も仕事に、ゼミに、食事会にと結構予定を入れてしまい、週末の夕食の支度を夫に任せっきりにしてしまう事もあるほどだ。
それでも、家族の誕生日には揃って祝う。ご贔屓の飲食店で外食する。夫の趣味の野球観戦に時々は家族で出かける。いつも一緒でなくても、あるひとときを共有し楽しめれば十分家族との繋がりを感じる事ができるようになった。
 
今回は親友から聞いた事をきっかけに算命学の教えに助けられた。これをいい教訓として、あまりひとりで何とかしようとせずに、自分以外の何かに教えを請う事も大切だと学んだ。友達から助言してもらっていいし、本などで学ぶ事もとても有意義だろう。
 
 
私の社長並みとやらのエネルギーを、自分の人生の目標のために精一杯使わなければ。
それだけ大きいエネルギーがあるなら、目標を大きく持ってもいいのだろうか?
せっかくこうして書く事を学び始め、その厳しさも、楽しさも少しずつわかりかけている。これを学んだままで終わりにせず、やはりいずれは実践の場で活かしたい。
しかも、活かすなら人の役に立ちたい。まだ人々の間に浸透していなくて、でも実はそれがあったらどれだけの人が救われるか。そんな事をテーマに、問題を抱えている人の実情や課題を知ってもらい、それを解決できる人とつなげたい。そういう人に当たらなければ、どこにその解決の糸口があるのか、書く事を通して掘り当てて行きたい。
 
このプロゼミの先に、ライターズ倶楽部という、もっとハードな実践の場が用意されているらしい。プロゼミさえこれだけ必死なのだから、それ以上にハードって、もう卒倒してしまうのではないかとすっかり尻込みしてしまっている。
でも、達成したい目標があり、そのエネルギーを持っているなら、これに挑まない手はない。
 
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