『邦』という漢字を調べて得をした
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記事:奈良坂愛美(ラィティング・ゼミ日曜コース)
邦楽とは何かと聞かれたとき、私は迷うことなく「日本の音楽だよ」と答えることが出来る。
それはなぜか。
常識だからだ。
邦楽オリコンチャート、邦楽ヒットソング、テレビやラジオで毎日のように耳にする『邦楽』という言葉の意味を知らない人間は日本には居ないのではないかと思われるくらいにその言葉は常識だ。
しかし先日、私はこの『常識』を知っている『つもり』なことに気付かされた。
知っていると思っていたのに、知っているつもりだったのだ。
皆さんは『邦』という漢字の読み方をご存じだろうか。
あるいはこの漢字の使い所でもいい。
私がパッと思いついたのは『邦楽』『邦画』『異邦人』などの言葉で、読み方もやはり『ホウ』しか分からない。しかし、『ホウ』以外の読み方が分からずともそれらの言葉の意味は分かるから使われている漢字については知ろうとなんてしない。そして知らなくても困らない。
漢字と漢字が組み合わさった言葉の完成形が分かればそれで良しなのだ。
しかし先日、読んでいた本の著者である『邦彦』という人について調べようと思ったときに『邦彦』を何と読めばいいのか分からなかった。
『ホウヒコ?』
絶対に違うだろう。
困った私はこの時なってようやく『邦』という漢字を図らずも知ろうと思ったのだ。
そして調べた結果分かったのが――『くに』という読み方だった。
『くにひこ』とどうにか著者の名前が読めるようになった私だが、その時は最早そんなことはどうでもよくなっていた。
そうか――『邦』は『くに』と読むのか。
この時の私は、目から鱗が落ちるということわざを初めて体感した気がした。
『邦』には『くに』の意味合いがあるから、『邦楽』は国の音楽のことを指し、『邦画』は国の映画のことを指し、『異邦人』は異国の人のことを指すのか。
なるほど、と頷いてしまう。
当たり前のことなのに、まるで初めて漢字の成り立ちを習った小学校一年生の頃のような気持ちになった。
漢字と漢字が組み合わさって意味が生まれるのではなく、意味のある漢字と意味のある漢字が組み合わさって意味を含んだ言葉が生まれるのだということに改めて気付かされた。そしてそれこそが本当の『知っている』なのだと思う。
そんなことはやはり漢字を習い始める小学生の頃に教わっているのだろうけれど、大人になるにつれ沢山の言葉を覚えていき、その段階でその教えを忘れてしまったのだろう。否、正確には気に留めなくなっていったのだろう。
そして新しく知った言葉を疑問も興味も抱かず、そのままに受け入れ、それを常識として知っている『つもり』になったのだ。
この事実は損得で言えば『損』だと思う。
確かに、人に何かを伝える上では今まで通りに言葉の意味が分かっていれば全く問題ないだろう。しかし、言葉の本当の意味をきちんと知っているというのは視えている世界を少しだけ変えてくれると思う。少なくとも私は、『邦』の意味を知ってからは邦楽という言葉に親近感、普段は湧かない愛国精神のようなものを抱いた。『田中さん』と呼んでいた人を『太郎さん』と呼ぶようになったような感覚だ。
相手を知ることで相手に近づく。それは人間同士でなくても出来るようなのだ。
さらに言えば、人間相手だと近づくのには相手の許可が必要な場合もあるが、『常識』
である言葉や物ならばその情報はかなりオープンである。何せ皆が知っている常識なのだから。
自分のことを知っていいよ、と言ってくれているのにすでに知っているつもりになって知ろうとしないのは勿体無いことだと私は思う。
正しく知ることで知識は広がり、新たな興味も湧き、人生がもっと楽しいものになるかもしれない。
そしてそれは明らかに『得』だと思う。
せっかくなら得をしたい。
全てのことを知る必要はないけれど、自分が疑問に思ったことや興味が湧いたものに関しては例え『常識』として知っている『つもり』でも試しに調べてみようと思う。そうやって一歩を踏み出すだけで視える世界は変わるのだから、せっかくの人生、知ることで世界を広げて得をしてみたいと思う。
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