メディアグランプリ

ゴキブリのGはガッツのG


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大村侑太郎(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
僕はゴキブリかもしれない。
いや待って、閉じないで。
ゴ……の部分だけで拒絶反応起こした方ごめんなさい。今度、一杯奢るから勘弁して。
何も人間に変装したゴキブリ型宇宙人ってわけじゃない。それならそれで面白い記事になりそうだけど。
僕が潰されそうになった時、思いのほか人間の生命力を知った。これはそういうお話。
 
順を追って説明しよう。
二年の間に4回、これは僕の転職回数だ。短期間で辞めたものも含めるとはいえ、我ながら酷い数字だ。若くして一つの仕事を長く続けている人たちには頭が下がる。
2011年から2012年の間、僕の人生は暗黒だった。新卒で入った会社を一年で退職。別の仕事に就いたものの、仕事覚えが悪く解雇になったり、精神的な辛さで退職したり、散々な目に合った。その頃の年収は思い出したくもない。特に2012年は二回、無職の期間があった。その間は本当に辛かった。
 
僕も悪い。冷静に考えれば自分に勤まるわけがないと、わかりきっていた仕事にばかり入社していた。
生活のためには働かなければならなかったが、2012年の中盤に建築関係の会社で肉体労働の作業員として働いたことは、本当に自分に合ってなかった。「もしかしたら机仕事より合っているかもしれない」と希望をもっていた反面、心のどこかで合っていないと確信している自分がいた。
辛い仕事に心が折れた。仕事ができない自分が悪いと分かってはいたが限界だった。その会社は三カ月で辞めた。
 
それからが大変だった。履歴書に職歴が書けない。退職後、僕がまず遭遇した問題がこれだ。転職しようにもアピールできるものが何もない。運よく書類選考を通過しても面接で話せるような仕事の成果も無く、仕事は一向に決まらなかった。
「もう俺の人生は駄目かもしれない」本気でそう思った。貯金も底が見え始めていた。
その頃付き合っていた相手はいたが金銭的な援助を求めるわけにもいかず、無職になったと両親にも言えず、八方塞がりだった。
「何でこんなことになったのだろう?このまま飢え死にしてしまうのか」僕は自分の選択を悔やみ自分を責め続けた。気持ちはどんどん落ち込んでいった。暗い表情で受けに行く面接、結果は不合格続き。
 
そんな状況でも、仕事探しを諦めようと思ったことは一度もなかった。
後になって冷静に振り返って意外に感じたのだが、思いのほか僕はしぶとい。
断わっておくとその当時の僕には「生きなければならない」という強い信念も生きる理由も無い。
「働く」ことは使命なのだからそれを放棄するわけにはいかない。そう思っていただけだ。
だけど、「運命に負けたくない」その気持ちが確かにあった。
建築の会社で上司から散々叱られた。罵声や怒声をたくさん浴びた。
「覚えが悪いのか馬鹿なのかどっち?」
これは投げかけられた忘れなれない言葉だ。
「覚えが悪くてすいません……」と僕。
「みんなが出来ていることをできてないのに自分は馬鹿じゃないと?」
自分を馬鹿だと言え、そんなことを求められた。
この時の恐怖は忘れられない。
虫けら扱いされ、自分という存在を全否定された。
 
「ふざけんなよ」
転職活動の不調で眠れぬ夜、未来へ不安を感じ飛び起きた時に僕は叫んだ。
散々酷い目に合って虫けら扱いされたが、どうしてもこのままで終わりたくなかった。
確かに自分は虫けらかもしれない、頑張っても上手くいかないかもしれない。それでも、「生き延びること」が自分を否定し続ける世界への唯一の抵抗だと考えるようになった。
 
僕が考えたことは生活費の節約のために食費を切り詰めることだった。食事は一日に一回。生き延びるために、値段の安いもやしやキャベツを毎日食べた。どうしてもお腹がすいたらチョコレート一切れで飢えを凌いだ。
また、なるべくエネルギーを使わないように仕事探しの時以外は体を動かさないようにした。
最初は気分が悪くなることもあったが、次第にそうした生活に慣れていった。自分が適応していったのだ。僕の持っていた生命力は、ゴキブリ並に僕が思っていたよりずっと強いものだった。
 
季節が冬へと変わった頃、ようやく雇ってもらえる会社が見つかった。最終的にそこも退職することになったが、かなり長く働くことができた。
僕の人生は自分で駄目にしてしまった部分が大きい。それでも、今こうしてここに僕は生きている。順調なことばかりではないけれど、「生きてきて良かった」と思えた出会いや経験をいくつもした。これは全て諦めていたらできないことだった。
 
もし今、仕事で死にたいくらい悩んでいる人がいたらどうか諦めないで欲しい。諦めなければ必ず生きていける。こんな職歴がボロボロで何のスキルもない僕程度でも生きることができたのだから。
人間の持つガッツは貴方が思っているよりずっと強い。
人間の持ち元気は貴方が思っているよりずっと強い。
きっと大丈夫。
 
 
 
 
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2019-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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