アイドルヲタクという生き方《リーディング・ハイ》
記事:住所不定☆ジョブズ
女性が嫌う男性の趣味についてアンケートを取ると、ギャンブルと合わせて必ず挙げられるのが「アイドル好き」です。夢中になってお金をかけているイメージと、それに対するリターンが全くないという事が理由のようです。また、以前見たテレビ番組のなかで、あるアイドルの密着取材をしていたのですが、握手会の準備をしている時に集まっているファンを見ながらそのアイドルに感想を聞いていました。すると、その回答に凍りつきました。
「気持ち悪い」
女性の感覚としては、自分のために集まってくれたファンでも「気持ち悪い存在」なのかと思いました。「ルックスが良ければ、男なんてバカだからいくらでもお金を出すのよ」という本音が見え隠れした気がしました。
時は流れて、現在は全国各地でローカルアイドルが誕生しています。女の子の憧れだったアイドルに、比較的なりやすい時代となりました。近所のちょっと可愛い娘が、いつの間にかアイドルになっていた、なんて事も現実的にありえます。そして、その身近さがローカルアイドルの魅力といえます。
同時に、私には疑問がありました。先ほど述べたように、アイドルがファンに対してどう思っているのか。アイドルというのはあくまでも職業であって、それ以上でも以下でもない。言葉は悪いですが「鴨がネギを背負ってやって来る」という感覚なのだろうか。ずっと心に引っかかっていました。ここではあくまでも男性に限りますが、ファンとしてアイドルを推していてもほとんどリターンのない世界で、どうやったら熱狂するほどのモチベーションを維持し続ける事が出来るのか。そのひとつの答えとして出されたのが、この本だと思います。
本書は、アイドルとヲタク(ここでは熱狂的なアイドルファンと定義)の距離感について書かれています。実は私も、行きつけのアニソンバーでローカルアイドルの運営をしている事を知り、それから現場に行くようになりました。それまでは、アイドル自体に全く興味が無かったので、ただライブを漫然と見ているだけでした。しかし、周りがどんなに静かであっても、ヲタクはライブを盛り上げようとしてコールを入れます。特に、ショッピングモールなどでのステージでは、集客は良いものの一般のお客が多いので盛り上がりに欠ける事が多く、アイドルにとっては「痛い」ステージになりがちです。そんな時、ヲタクの声援はアイドルにとって励みになっているに違いありません。一般の人からは白い目で見られようと関係ありません。
もうひとつわかったのは、ライブはステージが終わったら終わりではなく、多くの場合はその後に物販が行われる事です。物販のメインは、ブロマイド販売&ツーショットチェキ撮影(インスタントカメラによる撮影)で、併せて短時間のおしゃべり(交流)が出来ます。アイドルとお話しが出来るという事はヲタクにとって至極の喜びであり、ローカルアイドルの強みといえます。テレビで活躍しているメジャーアイドルではなかなかこうはいきません。(呆アイドルグループの研修生ならあるようですが)そのため、お互いの頑張りがダイレクトに伝わります。それこそが、アイドルとヲタクの間に連帯感を生み、アイドルはもっと頑張ろう、ヲタクは推し続けようと思わせるのかもしれません。
そんなやり取りを見ていると、ヲタクはあまり女性慣れしておらず、見た目からは想像出来ないほど(失礼!)シャイで純粋なのではないか、と思えてきます。中には、熱が入り過ぎて世間を騒がせるヲタクもいますが、その多くはルールを守って「オタ活」を楽しんでいる人々です。
間違いなく言えるのは、ヲタクがいなければアイドルは成り立たず、世間が暗いムードに覆われた時、アイドルは元気と勇気を与えてくれる存在だという事です。アイドルの運営をするにしても資金は重要で、そこで一番お金を使ってくれるのはヲタクです。事実、地方再生の切り札として結成されているローカルアイドルも少なくない事を考えると、彼女たちを支えているのはアイドルヲタクという事になります。
一般女性からはキモいと言われ、それでも健気に推し続けるヲタクたち。彼らの元気の源であるアイドルたちのメッセージが詰まった本書は、アイドルヲタクの事を真剣に考えた本だと思います。
▼「アイドルとヲタク大研究読本」(カンゼン)
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