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プロフェッショナル・ゼミ

韓国経済は食堂のおばちゃんが支えている!?〜「冬季五輪に魅せられて——天狼院書店特派員ライター・関谷智紀が行く!ピョンチャン五輪紀行〜


 

深夜にうれしい屋台の食べ物

 

連日、オリンピックの会場とソウルをKTX(韓国新幹線)で往復している観客たち。
KTXを使って片道2時間弱の道のりですが、種目によっては朝10時開始というものもあり、その場合にはソウル市内の清涼里(チョンニャンニ)駅などを午前7時過ぎには出ないと間に合わず、帰りも江陵(カンヌン)駅を深夜0時くらいに出て、到着するころには午前2時頃……。

そんな過酷な日々のなかで、体力を維持するために欠かせないものといえば、もちろん「食事」。
実は、会場内のレストランはスポンサーであるコカ・コーラが用意したものと、マクドナルドしか選択肢がありません。パーク内レストランでは簡単なプレートメニューと小分けのピザ、サンドウィッチがあるくらい。場所によっては韓国のスナックもあるのですが、混雑もしているし、試合の合間に小腹を満たす程度に利用するという感じ。
ただ、そのレストランでカップラーメンを売っているの見て、「よくスポンサーがOKを出したな」と驚きました。
このカップラーメンはコンビニ等で売られているごくごく一般的なもの。韓国の観客は、スキージャンプの会場でもどこでも、ずぞぞっ、とカップラーメンをすすりながら観戦しています。
パークのレストラン入口には「韓国のカップラーメンの食べ方」というポスターが貼ってあり、QRコードを読み込むと、ラーメンの作り方の動画が見られるという微笑ましい“気配り”には、ちょっと笑ってしまいました。

そういった飲食事情もあり、私をはじめ旅費に余裕のないファンが非常に重宝しているのが、カンヌン駅前の屋台村テント。
駅前に白い大きなテントが2つあり、そのなかに韓国の街でよく見かけるような、スナック(おやつ)のお店が並んでいます。

皆さんもよくご存じのスナックの定番、細長い円柱状のお餅を赤くて辛いタレで煮込んだトッポッギや韓国風海苔巻きであるキンパ、チヂミ、日本でいう蒸し餃子のようなマンドゥ、トウモロコシを茹でてチーズをかけたものなど、バラエティーに富んだ料理が屋台に並んでいます。

逆にいえば、駅前には駅ナカのカフェとコンビニ、そしてこのテント屋台村くらいしか選択肢がありません。
オリンピック会場と逆の方向に10分ほど歩けば、そこそこにぎやかな場所があり、そのあたりには食堂もあるようですが、前の記事でも触れたとおり、ラブホ街と近接していますから、外国人にとっては非常に敷居が高い。したがって、必然的にテント屋台村で簡単に食事を済ませることが多くなります。
メニューにはハングルだけでなく、手書きで英語や日本語も書いてあって手作り感満載。通っているうちに顔なじみになり、キンパを売っているおばちゃんは「こいつまた来たよ〜」といった感じで出迎えてくれ、時にはペットボトルのお茶をサービスしてくれるようになりました。
また、マンドゥを売っているメガネのお兄さんと話してみたところ、なんと地元で日本語の先生をしているとのこと。いろいろ聞いてみると、この屋台村は自治会のような形で地元の人たちが用意したそうで、「こんな韓国の東の果てまで海外から多くの人が来てくれて本当に嬉しいですね」と日本語で話してくれました。
ちなみに、いつも営業していたチーズがけコーン屋さんが突然いなくなったので、「どうしたの? 売り上げ不振で撤退?」と聞いたら、「なんか親戚の法事があってお休みで。明後日からまた来ますよ」とのこと。ローカル感満載で、ほっとしたものです。

カンヌンはスンドゥプ(純豆腐)がおいしいことでも有名で、この屋台村でも売っていました。大きな鍋で、おぼろ豆腐のような感じのスンドゥプを煮ていて、最初に見たときは「甘酒?」と勘違いしたほど。
これをおたまですくって容器に入れ、醤油ベースでちょっとピリ辛、細かい刻みネギがたっぷり入ったタレをかけていただきます。

ピリ辛な香辛料が入っている分、日本の湯豆腐よりもコクがある感じですが、豆腐はしっかり固めにできあがっていて、口に入れると大豆の香りがふわっと広がり、非常にほっとする味です。寒いところでのスンドゥプは身体も温まりますね。屋台でもこれだけおいしいのですから、市内の名店と呼ばれるスンドゥプのお店はどれだけおいしいのか、ぜひ時間があればトライしてみたいと思います。

また、トーストと呼ばれる「焼きサンドウィッチ」(?)の屋台もけっこう見かけます。スキージャンプや距離スキーなどの会場最寄り駅である、珍富(ジンブ)駅は、街から外れた山の中。いつもは駅ナカに小さな売店があるだけのようなのですが、深夜0時を過ぎても駅前の屋台でトーストが売られていました。
このトーストの作り方がおもしろい。まず、マーガリンを塊のまま、まるで車のワックスがけのように鉄板に塗り塗りして油を引くと、食パンを2枚焼き始めます。それと並行して、すでに用意してある溶き卵を四角い型に流し込み、ちょうど食パンと同じ形になるように焼きます。卵が焼けたらそれをハムと千切りキャベツとともに食パンに載せ、ケチャップをかけて食パンでフタをしたらできあがり!
安い割りにボリューミーで暖まるし、おばちゃんが深夜まで切り盛りする屋台は、厳寒の深夜には非常に嬉しいオアシスのような場所でした。

 

「ビールください」を韓国では何というか?

 

試合を観戦して、深夜にソウルの市内に戻るころには、「コンビニしか開いていないのでは?」と思われる方も多いと思いますが、早朝深夜でもある程度しっかりした食事を食べられる強い味方がいるのです。

それは、駅前食堂。

駅前食堂は、ソウル市内ならだいたいどこの駅前にもあり、ハングルで「キムチチゲ」「キンパ(韓国風海苔巻き)」「ラミョン(ラーメン)」「ウドン(そのままうどんですね)」などのメニューがガラス窓に書かれているのが一般的です。

中を覗くと、もじゃもじゃパーマのおばちゃんが一生懸命働いていたり、客がいないときはぼーっとテレビを見ていたりするので、慣れるとすぐに「駅前食堂」だとわかります。

駅前食堂は、たいていの店が深夜までやっていて、24時間営業のお店も。
深夜に駅から出て、食堂の明かりが見えるとほっとします。
そこで、ふらっと店に入り、韓国語で、
「メクチュ ジュセヨー(ビールください)」
と言うと、おばちゃんは、
「ネー」
と言って、ビンビールとコップを持ってきてくれます。その後は、適当にメニューを指差すか、おばちゃんにジェスチャーを交えていろいろ聞くか、そんなことをしながらなんとか注文を通してもらっています。
ちなみに「メクチュ ジュセヨー」は、私が最初に覚えた韓国語です(笑)。

キンパ(韓国風海苔巻き)は、そういう食堂の定番中の定番。日本の「おにぎり」みたいなものでしょうか。注文すると、おばちゃんが具材を手に取り、その場で巻いてくれます。酢飯ではなく普通のご飯を使い、最後に海苔にごま油を塗るのが韓国流。
1本2000〜3000ウォン(200〜300円程度)で食べられるので、私はもっぱらこれを買って、電車の中で食べたりしています。

それにしても、韓国のおばちゃんは本当に「いつ休んでいるの?」というくらいよく働きます。
韓国人のおばちゃんがよくしているもじゃもじゃパーマについて本人に聞くと、「この髪型は本当に手入れが楽なのよ。仕事以外に家のこともあるし、けっこうな数の女性が中年になるとこのパーマにするわね」と教えてくれました。
「逆に、韓国のおじさんは全然働きませんね。まあ、個人差はあるにはあるでしょうが、そんなイメージです」と一刀両断にしたのは、20年ほどソウルに住んでいる駐在員の日本人。
おばちゃんが屋台でかいがいしく働いていても、椅子に座ってタバコを吹かしている、といった映像が私もすぐに脳裏に浮かびました。

深夜にお店に入ると、机に突っ伏していたおばちゃんがむくっと起き上がって、眠そうな目で注文を取ってくれることもしばしば。
深夜であっても、おばちゃんたちはにこやかに、時には無愛想にご飯を作ってくれます。
韓国の経済は、おばちゃんたちがこうやって下支えしてくれているのかもしれません。

 
【プロフィール】
関谷智紀(せきや・ともき)
フリーライター。大学卒業後、TV制作会社にてスポーツ中継や情報番組などのディレクターをしていたが、会社解散にともない紆余曲折を経て情報誌のライターになり、グルメのお店情報から経済関係まで記事を執筆。その後、単行本・ムック本の企画・ライティングも担当。スポーツライターとしては、アイスホッケーをはじめとした冬季スポーツ、バスケットボール、野球などを中心に取材を続けている。
 

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