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台湾に行き、幸福とは何かを考えた


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記事:ばんり(ライティング・ゼミ平日コース)

「あ~やっと日本に帰ってきた気がする~~」
税関を抜けて、入ったトイレでようやくそんなことを実感した。

つい2時間半ほど前までは薄手のブラウスにデニムを合わせ、サングラスという真夏の出で立ちだったが、3月上旬の日本はまだまだ寒く、スーツケースからあわてて冬物のコートを取り出し羽織った。
楽しみにしていた3泊4日の台湾旅行はあっという間に終わりを告げた。

まず台湾に行って最初に驚いたのが、トイレだった。

日本と違って水圧が弱い為、トイレットペーパーはトイレに流せない。
便器の横にある大きなゴミ箱に使用済みのトイレットペーパーを投げ入れるのだ。
最初の頃は間違ってトイレに流したり、逆に用心してきちんとゴミ箱に流すと、そのトイレは流してもよかったりして、トイレ1つとってもまぁなかなか難易度が高い。
中には水圧が強すぎて、和式便座の淵を思いっきりはみ出し気持ちよさそうに流れているトイレもあった。
もちろんウォシュレットは、大飯店(※1)のトイレにもついていなかった。

3泊4日をかけ、台湾の様々な場所を観光した。
台湾一の都市である台北(タイペイ)。
世界三大美術館の故宮博物館。
「千と千尋の神隠し」の舞台となった九份(キュウフン)。

日本にはない鮮やかな色遣いや龍や虎などの古来の縁起物の動物たち。
どの景色も異国情緒にあふれており、新鮮だった。

私がこの旅で一番楽しみにしていたのは「九份」だった。
子供のころに見ていたジブリ映画「千と千尋の神隠し」の舞台になった場所だと聞いていたからだ。

「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…… 」

「どんな幻想的な景色なんだろう」と胸を躍らせていた私はまったく別の要因で、驚かされることとなった。
「イヤイヤ、こけるって。マジでもう無理」
母に愚痴りながら大股に低めの重心で、次の揺れに備える。

九份は山の上にあり、そこには地元のバスで行く必要があったのだが、そのバスが揺れる、揺れる。乗客の半数ほどが立っているにもかかわらず、現地のドライバーはでこぼこな山道を猛スピード、急ハンドルで駆け上がっていくのだ。
満員のぎゅうぎゅう詰めのバスならまだよかったのかもしれない。しかし、中途半端ゆとりのあるおかげで、立っている人のほとんどが軽い悲鳴をあげ、ときには前後に揺り動かされ目的地に着く頃にはぐったりしていた。

九份の景色はもちろん幻想的で綺麗だった。
赤い提灯が店頭を彩り、露店では民芸品やお茶など「台湾らしさ」を感じさせるものがいたるところに並んであった。
湯婆婆(※2)の湯屋を彷彿とさせる茶芸館もあり、カメラのシャッターを夢中で切った。

しかし、それよりももっともっとバスの衝撃ほうが大きかった。
日本だったら確実にクレームレベルだ。
帰りのバスでは60代くらいのおばあちゃんがこけそうになり、
他の国の観光客が慌てて席を譲るような光景も見られた。
私も揺れに耐えるうちに、いつの間にか首からぶら下げたカメラのレンズカバーを紛失してしまったようだった。

初めての海外旅行はどれも新鮮なものばかりだった。
毎日がお祭りなのかと錯覚してしまうほどの賑やかな夜市。
道の途中にあるガジュマルやハイビスカスといった南国の木々や花達。
生の棗(なつめ)を食べたのも初めてだったし、釈迦(※3)という果物があることも初めて知った。
また、お茶にも料理にも砂糖が入っており、どれも甘みがあった。

しかし、私の中で一番印象的だったのは、台湾で暮らす人々の大らかさだった。

旅の途中、花蓮という都市に向かう為に、新幹線に乗る機会があったのだが電光掲示板には【晩3分】と書かれていた。意味がわからなかった私は、現地ツアーガイドの美仙(びせん)さんにたずねてみた。
「美仙さん、花蓮の右横に書いてある文字はどういう意味ですか?Remarksと書いてあるところの下の部分です」
そういって電光掲示板を指差した。
すると美仙さんは笑いながら
「あれは3分遅れという意味デス。日本の電車正確ネ、台湾の電車時間通りに来ることほとんどナイヨ」と答えてくれた。
言われてみれば花蓮行きの次にくる電車であろう蘇澳と書かれた右横には同じく【晩7分】と書かれてあった。

またバスの中で、美仙さんはこんなエピソードも話してくれた。
「今日の予報は雨ですネ。ただ台湾の予報ほとんど当たらないヨ、日本ほど正確じゃない」
「台湾の信号すごく長いヨ、5分とかよくある。台湾人会社に遅刻するとこう言い訳する、今日信号に3つ捕まりました。」

きっと台湾では、トイレットペーパーは流さないもの。
バスは猛スピードで走るもの。
電車は遅れることが常識。
天気予報も外れるものなのである。

最初からそう考えていれば、ウォシュレットがないことを嘆く必要もないし、乱暴な運転に一々腹を立てることもない。

日本の進化が進む電化製品やきめ細かいサービスは素晴らしいものがある。
しかし、そこを当然と思い生活していると逆に神経をすり減らしてしまうのではないだろうか?
日本の持つ豊かな文明と勤勉で少々神経質な性格が合いまって、少しのことにも過剰反応し、自分で自分の首を絞めている気がしてならないのだ。

電車が遅れただけで苛立ち駅員に詰め寄る人。
赤ちゃんが電車で泣いただけで舌打ちをする人。

私たちは普段笑うことも忘れ、
自分の仕事と向き合い日々を過ごしている。

たまの休みには疲労困憊の体を休めるために貪るように寝て、また週明けから変わりばえない日々がはじまる。
そんな生活を続けているうちに、感謝の気持ちも忘れ、他者への配慮も余裕も忘れてしまっているのではないだろうか。

「何のために生きているだろう?」
仕事仲間に至らない点を指摘され、ときには「お前馬鹿か?」といった罵詈雑言を浴びせられる。
毎日の帰宅はいつも23、24時。土日出勤も当たり前だった頃にそんなことをいつも考えていた。 
毎日のようにシャワーを浴びながら泣いていた。
毎朝の挨拶もついに出来なくなった。
そんな日々を過ごしているうちにいつしか笑うということを忘れてしまっていた。

あの頃の自分に今ならこう声をかけてあげたい。
「体調が悪くなくても休んでいんだよ。笑えなくなるまで働かなくていいんだよ。」
仕事は誰かが休んでも回っていく。
絶対にその人でなければならない理由なんてない。と今ならわかる。

私には世界や社会を変える大それた力はないけれど、
まずは隣の人に優しくするところからはじめてみよう。
きっといつかその優しさが連鎖する日が来るから。

自分の過去と同じような境遇をもった人がいれば話を聞いて、寄り添うことはできる。
自分が一番辛かったときに寄り添ってくれた友人のように……。

トイレに紙を流せるだけでありがたい。
今、この瞬間笑えることがありがたい。
どこか昔の日本を感じさせる台湾の地から日本に戻り、一人物思いに耽っていた。

※1 大飯店 台湾ではグレードのよいホテルのことを指す
※2 湯婆婆 千と千尋の神隠しに出てくる登場人物の名前
※3 釈迦 お釈迦様の頭の形に似ていることからそう呼ばれる濃い緑色のフルーツ

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2017-04-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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