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片脚のないソラ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岩本 敏昌(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
暗いよ……。
 
寒いよ……。
 
あれ? 雨が降ってきた……。
 
お腹すいたな……。
 
また温かいミルク飲みたいな……。
 
あれ? 遠くで車の音が聞こえる……。
 
ねぇ、誰か助けて……。
 
僕には脚が無い……。
 
 
我が家には3歳のオス猫がいる。
名前はソラだ。
 
3年前、冷たい雨の土曜日。私は車で人里離れた山の中を車で走っていた。本当に偶然だと思う。外の空気を吸いたくなり、路肩に車を停めて、パワーウィンドウのボタンを押して窓を開けた。
 
ラジオのボリュームも下げて、静寂の中、雨が車を静かに叩く音、そして鳥の鳴き声がかすかに聞こえる。
なんだか気持ちいい。
 
私は耳を疑った。
いるはずの無い子猫のかすかな鳴き声が聞こえた。
 
 
人里から離れた山の中。民家も無いし、食料も無い。猫がいたらきっと何かの動物に食べられてしまうだろう、もしくは飢え死に違いない。
 
だけど、やはりかすかな鳴き声が聞こえてくる。
 
路肩を少し歩くと、道脇の草むらの中に、真っ黒な子猫が怯えながら、びしょ濡れでうずくまっていた。
 
親猫は? 兄弟猫は?
あたりを見回してもいない。気配もない。何より子猫は衰弱していた。
 
顔はお世辞にも綺麗ではないし、真っ黒だ。
 
捨てられたのかな?
そんなことをふと思ったとき、目が合ってしまった。
 
ただ直感的に連れて帰ろう。
そう思った。
 
 
我が家はネコをずっと飼ってきたが、ここ3年は飼っていなかった。これも何かの運命なのだと、そう考えることに決めた。
 
 
ただ、私は言葉に出来ない違和感があった。
 
なんだろう?
 
子猫を抱え上げたときに分かった。
 
 
それは、この子猫はあるはずの脚が無かったということ。
正確に書くと左の後ろ足、膝から下が無かった。傷はまだ新しい。
 
 
何か動物に襲われたのかな? それとも飼っていた人が捨てたのかな?
理由は分からない。
 
今更、やっぱり連れて帰らない、という考えは持てなかった。
連れて帰ると決めた。
 
これも偶然が重なりあった出会い。
 
ソラと名付けたネコは我が家の一員となった。
 
 
ソラが我が家にやってきてもうじき3年だ。
初めの頃は、人は信用しないよ、そんな悲しい顔をしていた。
でも今はとても明るい顔で、とてもワンパクで、イタズラが大好きだ。
 
3本脚だけど、上手に歩くし、走る。そして、ジャンプもする。
ただ家のワックスがかかっている床や廊下だとたまに脚を滑らせてこけてしまう。
 
撫でてあげると、とても気持ちよさそうに音を鳴らす。
 
最近は刺身の味を覚えたようだ。
 
そして、好きな場所は母の膝の上。
 
そんな元気なソラ。
 
 
 
ある日、私は仕事から帰ってきて、ソラと遊んでいた。すると、急に涙がでてきた。こんなに泣いたのは久々だ。
 
何がなんだか分からなかった。
ソラは怪訝な顔をしている。
 
ふと言葉が降りてきた。
 
「ソラはネコらしく生きている」
 
脚が一本なくても、不自由でも、そんなの関係ない。脚が一本なくても俺はネコだ。
猫の生き様を全うしてやる。そんな思いを感じた。
 
 
足が無いからって、卑屈にはなっていない。猫として、本能にまかせて、3本脚で一生懸命に私が動かしているおもちゃをおっている。
 
猫らしくいきている。
そう足がなくても猫らしくいきている。
 
猫として一生懸命にいきている。
 
猫として、猫の人生を全うしようとしている。
 
足がないからって、文句は言わない。
 
出来ない理由は言わない。
 
なんだかそんなことを考えていると涙が溢れてきた。
 
 
 
私は大切なことに気づいた。
人間らしく私らしく生きよう、という言葉の意味。
 
上辺だけの言葉から、肚落ちすることが出来た。
あ! そういうことか!
 
 
私らしく、人間らしく、いきるってどういうことだろうって。
 
言い訳ばかり考えて、自分がやりたいことを避けていない?
余計なことを考えて、卑屈になっていない?
 
ソラのように一生懸命に全力で生きている?
 
ソラは脚が一本無いけど、私には両手両足の全てがある。
 
何を躊躇しているの?
あなたの得たいことは何?
 
もっとシンプルに歩んだら?
人間らしく、あなたらしく生きたら?
 
 
そのころ、色々とプライベートや仕事で悩みを抱えていた私には強烈な学びとなった。
 
そんな気付きを与えてくれたソラ。
もしかすると、ソラが我が家にやってくるのは必然だったのかもしれない。
 
あの日、車でドライブをしていた私、あの日、路肩でうずくまっていたソラ、聞こえてきた鳴き声。そこからの物語。全てが繋がっている。
 
人生の生き方の意味を教えてくれた片脚の無いソラ。
まるで、人生の大先輩のようだ。金八先生かもしれないし、スラムダンクの安西先生かもしれないし、もっと他の人かもしれない。
 
どちらも私の人生をより豊かにしてくれる。
 
もしかすると、本やテレビのメディアの作られた情報以上に、身近な生活の中により大きな学びが眠っているのかもしれない。
 
そんなソラは私の横でスヤスヤと眠っている。
 
あなたのあなたらしく生きるとはどういう意味ですか?

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2018-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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