チヤホヤされるDJになるためには
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:富山幸代(ライティング・ゼミ平日コース)
「DJとは……音楽を交互にかけて、チヤホヤされる人のことだ」
上記は、DJ仲間のムラマツヒロキ氏が描いている、漫画『DJ道』の名ゼリフである。
さて、私はコミュニティFMで、ラジオパーソナリティ・レポーターを職業としている。
小さい局なので、ワンマン放送と言って、番組構成とディレクション、ミキサーの操作や選曲、メールやFAXの紹介などを、すべて一人で担当するスタイルを取っているのだが、中でも音楽リクエスト番組を担当していた時が一番楽しかった。
元々私自身がレコードのコレクターだったこともあり、好きが高じて立場を利用し、ディスクジョッキーの役割として、曲を通してリスナーと会話のやりとりをしていた。
ある日、地元のバーで飲んでいた時、マスターから「レコードを持ってるなら、うちでDJやってみない?」と声を掛けられた。
局のミキサーの操作はお手の物だが、DJのミキサーやターンテーブルは触ったことがなく、一瞬不安に駆られたが一つ返事でOKした。
理由はもちろん、「チヤホヤされたかった」からである。
緊張しながら会場に向かった、DJ初日。
ラジオのDJの技術はあるが、交互にターンテーブルを操作するDJの技術はまったくないため、試行錯誤の上、曲のつなぎの時に、曲紹介や時代背景などを喋ってごまかすスタイルを取っていたら、そのプレイが珍しかったらしく、会場にいたお客様やDJ達から、あれよあれよと「ラジオを聞いているみたい!」「面白いね!」「良かったよ!」「ずるい!」などと声を掛けられた。
なんと、いきなり「チヤホヤされた」のである。
私としては、人生最初で最後のDJのつもりだったのが、他のDJから「うちの箱(※)でやりませんか?」とスカウトされ……
この日がきっかけで、調子に乗ったまま、私のDJ道がスタートすることになったのだ。
(※箱=DJイベントを行う会場や、DJバーのこと)
以後今では、私がプレイする度に、その場にいたお客様や、一緒にDJイベントに参加するDJ達が面白がってくれて、別の箱に誘われることが多くなり、浅草、渋谷、恵比寿、下北沢、高円寺、町田、大宮など、様々な土地と様々なイベントを渡り歩き、気づくと週1回はどこかでターンテーブルを回す日々を送っている。
ところで、DJ道をスタートして半年ほど経ち、チヤホヤされることに慣れてきた頃、ある事件が起こった。
その日は、とある老舗の箱で回すことになった。
私よりも十は歳の離れているベテランDJの次に担当することが決まっていた。
店や出演者に一通り挨拶や自己紹介をしたあと、緊張のあまりお酒が進み、だんだん調子に乗ってきて、その上会場のお客様と会話が盛り上がりすぎてしまい、DJ交代の時間に間に合わなくなってしまったのだ。
ベテランDJが何とか曲を繋げてくれたものの、DJブース内で「馬鹿野郎!」と丸々一曲分、ずっと説教をされた。
それが怖くて怖くて、涙でいっぱいになった目ではレコードの針も上手く落とせず、その日のDJは散々な結果に終わった。
ここで気づいた。
今まで出会ったDJ達は、とても優しかったのだと。
機材の事がわからなかったり、音のレベルが合わなかったりしても、飛んで助けに来てくれた。
それが当たり前だと思っていた。
今までの私は、なんて愚かだったんだろう。
この日を境に、チヤホヤされるためには、練習して技術をもっと上げなければならないし、今まで以上に気を配らなくてはならないし、DJ達が優しくしてくれた分、しっかりお返しをしていこうと決心した。
それからの私は、まず、人との関わり方から見直した。
基本的な挨拶から始まり、会場にも最初から最後までいるようにする。
仕事でどうしても入り時間に遅れるときは、前もって連絡とお詫びの言葉を添える。
DJ交代の時も時間通りに交代するために、5分前にはブース近くで待機し、時間的に余裕を持たせ、次のDJにも「あと2曲で交代お願いします」と声を掛けるようになった。
ちなみに、前のDJが時間を押しても文句は言わないし、会場が盛り上がっていたらそれでよいと思っている。
また、機材回りも次のDJが使用しやすいように、ミキサー内にある音量調整つまみや、ターンテーブル内のピッチコントローラー(曲のテンポを変えるもの)を、正常値に戻し、引き渡している。
トラブルが起ったら皆で助け合うし、DJ仲間やお客様の対話も楽しむことも大事!
結局、DJも他の仕事も「関係性」が非常に重要で、そこさえ大事にしていれば「チヤホヤされる」、つまり、誰からも愛されるDJ、あるいは人、になれるのではないかと思っている。
DJで学んだことは、人として基本的なスタンスであり、持続していくには、日々筋トレのような努力が必要なのである。
※参考文献
ムラマツヒロキ『DJ道』(秋田書店)
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