第三の起業〔THE THIRD LAUNCH〕《天狼院通信》
ある日のことである。
起業する前から僕を知っている友人にこの前会ったときに、会話の途中で、彼は僕の顔をじっと見つめてこう言った。
「三浦さん、経営者の顔になりましたよ」
「経営者の顔?」
一瞬、言われている意味が、わからなかった。
僕は、小さいながらも会社の社長で、前から一端の経営者のつもりでいたからだ。
「いや、本当に顔つきが変わってきてます。いい顔をしてます」
そう、彼は実に嬉しそうに言うのだ。
彼は僕がまだ小さな書店の雇われ店長だった時代からの付き合いで、今は書籍の編集をしている。
著名な経営者の方たちと仕事をしてきている彼の目から見て、僕は変わったという。
どういうことだろうか、と僕は考えてみた。
2009年4月1日、僕は池袋で株式会社東京プライズエージェンシーという会社を起業した。
今から、もう、6年以上も前のことだ。
会社は6期を経て、今7期目に突入しているのだが、これまでは生き残るのに精一杯で、会社としての体裁を整えるまでには至っていなかった。
たとえば、堅固な城を築く心づもりで冒険に出たはいいが、そこは生きるのも難しいほどの広大な荒野で、命からがらの戦いを繰り広げる中で、自分があまりに粗末な武器だけしか携えていなかったことを思い知ることになった。
そう、ビジネスという名の荒野において、僕はただただ生き残るのに必死だった。
絶望的な日々を過ごす中、幾度となく会社が潰れる危機を迎えながらも、けれどもこうして今、僕は生きている。
会社も存続している。
生き残るために奮闘している間に、僕は知らず知らずのうちにたくましくなっていったのかもしれない。
たとえば、それを「第一の起業」と名づけるのならば、それは何も知らずに荒野に分け入り、なんとか生き残ったまでのストーリーとなるだろう。
そして、天狼院という小さな舟を作り、今度は大海原へと漕ぎだして行くという新しい冒険が始まり、幾度となく沈むかもしれない危機を乗り越えていく中で、やはり、僕は自分でも知らない間に自然と経営者の顔になってきたのだろう。
天狼院を作ったことが、僕にとって、「第二の起業」だった。
まるで映画『フォレスト・ガンプ』において、フォレストとダン小隊長が、嵐の中でシュリンプ船を操船して生きて港に帰ってきたように、なんとかこの天狼院という名の小舟を沈めないで住んだ。そして、この小舟の操船の仕方を身をもって学んだのである。
そして、これから、僕にとっての「第三の起業」が始まる。
「第一の起業」において、僕はビジネスの世界で生き残る術を学んだ。
「第二の起業」において、天狼院という新しい可能性を運営する方法を体得した。
「第三の起業」において、僕がなすべきことは、経営である。
増資もして、新店舗のための新たな資金調達も進んでいる。
手がける事業の規模が拡大する。
そして、組織が多くなり、今よりもはるかに関わる人の数が多くなる。
これまでのように、自分一人が生き延びられればいいという考え方は通用しなくなる。
スタッフたちの人生も、預かることになる。
天狼院を拠り所として、家族が養われていくことになる。
人の幸せのための、元となる収益を担うことになる。
そう、本当の経営が、ここから始まることになる。
あるいは、友人が言った「経営者の顔」とは、まだ潜在的だった僕のそういった想いが、表情として現れてきたのかもしれない。
第三の起業、それは本当の意味での経営の始まり。
僕は、それを目前として、覚悟を決めなければならないのだろうと思う。
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