「聞いてませんね?」
記事:山田将治(ライティング・ラボ)
先週の事である。
週末の三連休の一日と明けの一日、続けざまに天狼院のビジネス系イベントが有った。
パネラーは共に、天狼院店主の三浦氏とアット・オフィスの代表である大竹社長。私も、旧知のお二人であるが、既にかなり深くビジネス面では関わっていらっしゃるお二人だ。
表題の発言は、その大竹社長から三浦氏に向けて発せられた。当然、我々受講者の前でである。一面的に見れば、問題発言である。大の大人に向かって、社会的に地位の有る方の発言であるからだ。
しかし、現場に居た受講者には、なんらの問題も感じられなかった。
大竹社長に「他人(ひと)の話、聞いてませんね? 」と問われた三浦氏がとっさに「ハイ。聞かないです」と笑顔で答えたからだ。
ポイントは、「聞いてない」との大竹社長の問いに、「聞かない」との三浦氏の答えにあります。一文字“て”が入るのと入らないのでは、全く違うのです。
大竹社長は単に、「今この話を聞き逃すな」または「ここが重要なのに聞いているようには見えない」と仰りたかったのではのでしょうか。
一方の三浦氏は、「今の話、耳には入ってます。でも、私は我流で行くので、人の意見は参考にすれど決定は自らします」という意味での発言だろう。
第一線で活躍中であるお二人の、素晴しい信頼関係を感じ、清々しい思いをした一瞬であった。
話が変わるが、ラグビーのスクラムを想像してもらいたい。
スクラムを組んだ経験がある方はお解かりだろうが、あの姿勢は、相手が居る事を前提にしています。しかも、“必ず”自陣に向かって押してくる事も、前提にしています。何故なら、相手が押してこなければ、これまたすぐに崩れてしまう姿勢だからである。
スクラムを崩したり、(まずこれは有り得ないが)故意にスクラムを引いたりすると“コラプシング”という、数あるラグビーの反則の中で、最も恥ずべき反則となる。
一般の社会でもそうだ。相手の信頼を裏切る事は、最も恥ずべきことである。
意見の相違は有るとして、必ず相手に正対する事から、信頼は生まれる。この意見に対して、必ず反論してくる前提が有るからこそ、全力で発言できるのだ。これは、正対してくれる相手に対する礼儀でも有る。
礼儀なくして、信頼は生まれない。
今年に入り、私が最も感銘した映画の一本が『セッション』だ。
音楽学校を舞台にした、厳しく生徒を鍛え育てる教師(これが何と、三浦氏が微妙に被るんだ)と、厳しい指導に萎縮しつつも、真っ向から反抗し、向き合う生徒の物語だ。
そこには、生徒の潜在的能力を感じ、見出し、育てるようとする音楽教師と、その指導に付いて行き、何者かに成らんとする生徒との、揺るがない信頼関係が観て取れた。
そんな二人の関係を、音楽用語を使った題名『セッション』としたあたりに、この映画の制作陣のなげかけを、私は、信頼する事にした理由が有るのかもしれない。
先週末、私が出会ったのは、揺るぎない信頼関係を基にした、本物のセッションだったのだろう。
ただし、ショート・ジャムセッションではあったが・・・・・・
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