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ジョイナーがいた!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤 みー作(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
高校の同窓会のLINEグループに一つのYouTubeの動画が送られてきた。
母校では今、「自由」が脅かされているという告発の動画である。
 
思えば、数年前から、同級生と会う度に話題になっていた。
我々が通った高校はかつての自由な学校ではなくなってきていると。
 
昭和も終わりかけの頃までは確かに東京の都立高校は自由な校風が売りだった。
私が青春時代を過ごした高校はそんな都立高校の中でも「自由の〇〇」と言われる程、ひときわ自由な校風で有名だった。
 
校則はほとんどなく、「高校生として学ぶ場にふさわしいふさわしい頭髪・服装」という校則がその「自由」の象徴であった。
だが、この校則が今や有名無実化しているらしいのである。
 
我々の時代では、「高校生として学ぶ場にふさわしいふさわしい頭髪・服装」という校則の意味は、「たとえどんな頭髪であれ、服装であれ学ぶ気持ちさえあれば問題ない」ということだと生徒にも先生にも理解されており、実際我々は本当に自由な頭髪と服装で学校生活を送っていた。
 
我々が高校生だった時代は当時トレンディー女優として名をはせていたW浅野の髪型が流行った時代で、女子はこぞって髪を伸ばして、当時「ソバージュ」と呼ばれていたかなりきつめのパーマをかけていた。
私なぞは肌の色も黒かったので「ジョイナー」というニックネームを拝命し、同級生はもとより先生からもそう呼ばれていた。
文化祭の際はアメリカ国旗のレオタード(!?)を着用し、仮装大賞までありがたくいただいていた。
「ジョイナー」がわらかない年配の先生からは「アマゾネス」と呼ばれ、かわいがっていただいたものだ。
髪の毛が金髪だった同級生は、その当時、髪の毛を染めると頭髪が薄くなるという噂があったので、将来の頭髪問題を同級生からも先生からも心配されていたものだった。
 
服装だって、ないはずの制服を1年中来ていた生徒もいれば、1年中革ジャンを着用していた生徒もいた。
 
今思えば、差別的な表現になりかねない事態であったことは禁じ得ない。
でもその髪型や服装が「学ぶ場にふさわしいかどうか」を指摘した人は同級生にも先生にもいなかったのである。
だって、髪型や服装は学ぶことに何の支障もきたさなかったから……
 
そんな時代を過ごした私には共有された動画の中で、先生が「学ぶ場にふさわしい頭髪」を学校説明会の場で長さや色についてこと細やかに説明していたり、金髪の女子学生が「全校生徒の前に出る時はかつらを着用しなさい」と指導されていたり、PTAまでもが会報誌には髪の毛の色が明るい生徒が映っていない写真を使用するように指導されていたり、何よりも「頭髪検査」が実施されているシーンには本当に驚いてしまった。
 
もし私が今母校に通っていたら完全に指導対象だったであろう。
 
そして何よりも残念だったのは学校側がまるで生徒達の疑問に耳を貸そうとしないのである。
生徒達からの先生からの頭髪指導への疑問について「髪の毛の色が、君たちの言う自由なのか?」と、動画の中の先生は反撃していた。
 
だが、先生、たかが頭髪、されど頭髪なのである。
あらゆる自由は小さなところから脅かされ、やがて茹でカエルのように本当の自由が奪われてしまうのである。
直感から「なにか変だ?」と思って動画を作った生徒達は、「自由」が奪われかねない事態を取材を通して確信したに違いない。
「本当に自由がなくなってからでは遅いのだ!」と……
 
だが、動画を見ているいうちに残念な気持ちと同時に希望がふつふつと湧き上がってきた。
 
1時間を超えるその動画は実に良く取材されていた。
現役の生徒側からの主張だけではなく、先生、保護者、そして我々卒業生、それも70歳を超えるかなり昔の卒業生、先生まで実に丁寧に取材していたのである。
 
そもそも母校で自由が重んじられるようになった背景は、戦前はかなり軍国主義が強い学校であり、戦後、戦争に対する反省からであった。
ただ、その「自由」についても何度か脅かされる事態にはなり、その度に生徒と学校側が衝突していた。
衝突はしていたが、生徒と先生の対話によって平和的に解決されていたのがまた母校の特徴であった。
生徒と先生の「平和的な解決」が新聞記事になっていたこともあった位である。
 
動画では当時の様子を現役の学生達が演じて再現するような内容も含まれていて、そんな歴史があったことを聞いてはいたが、実際はどんな様子だったか知らなかった我々卒業生は改めて当時の状況をする機会にもなり、実に興味深い内容だった。
 
そして、我々はたまたま「自由」が許されていた時代に生きていて、それがあたり前であると思いこんでいただけだったことを思い知らされた。
 
東京の都立高校は現時点で186校だ。
母校はその中のたった1校に過ぎず、また我々が高校生だった時代には都立と言えば自由であった校風も今はどこも管理主義がまかり通っていて、数年前には「時代の流れ」と母校の現状はいたしかたないかとも思っていた。
 
だが、その動画は限定公開だったにも関わらず、3日で1万を超える視聴数を記録し、新聞の記事にもなり、今後は連載記事になることが決まっているそうだ。
 
かつて我々が愛した「自由」の校風が脅かされる事態をたった1つの高校の中での問題ではなく社会にも訴えかけることに成功した後輩達を祝福したいし、今後を心から応援したい!
 
 
 
 
***

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2021-05-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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