メディアグランプリ

コロナ禍においても私が歌い続けるワケ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西元英恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
コロナ禍においてマスク生活が長引いている。会話をなるべく控えるように言われ、レストランや食堂では「黙食」のポスターが目に入る。こないだなんてリフレッシュのために入りに行った家族風呂でさえ「会話をお控えください」とあって、びっくりした。
 
禁止事項が多く、気分がどうしても閉鎖的になってしまう毎日である。
そんな中、私にはどうしてもやめられないことがある。「このご時世に!?」とひんしゅくを買ってしまうかもしれない。でも、私にとっては健康的な生活を送るうえでの必須事項といっても過言ではない。
 
それは月に一回の「ゴスペル教室」に通うことである。
さすがに第5波というビッグウェーブに世間があっという間に飲み込まれていった際には教室自体がお休みになった。何か月が経過したころだろうか。レッスン再開のお知らせをもらっても尚、感染リスクを考えると教室に行くのが憚られ自主的にお休みしていた。
 
しかし、私が住む都市でも「感染者数ゼロ」になったのをきっかけに「もう大丈夫だよね!?」とレッスンに行くことを再開したのだ。といっても、これまでのコロナ報道で心は十分怯えている。石橋をコンコンと叩くように、教室側が出してくれていた感染症対策の数々を確認し、もちろん自分ができる精一杯の対策を練って出向いた。
 
久しぶりの教室に入ると、歌うことに重きをおいたこれまでの開放的な空間は一変、厳戒態勢が敷かれていた。まず、先生が不織布マスクを二重につけたうえでフェイスシールドを装着している。何かの戦いにでも行くような重装備である。生徒と生徒の間はパーテーションで仕切られており、マイクはもちろん使用禁止だ。ゴスペル特有のステップやダンスをすることで距離が近づいてはならないと、最初から最後まで座った状態で歌うことになっていた。生徒はみな、コックピットに入れられた操縦士のように大きく身動きが取れない状態であった。
 
ここまでして歌わないといけないのか? 私にとってはやはり「YES」なのである。
理由はとにかく気分が開放的になって、鬱々と心に溜まっていたものさえ一瞬で吹き飛ばすほどの威力があるからだ。それは南国の透明感抜群の海にザッパーンと飛び込むほどの爽快感だ。
 
まず、歌うことによる「ストレス解消」の効果はよく言われているのでご存知の方も多いかもしれない。これが「なんとなく楽しいから」という子供だましな理由ではなく、明確な研究結果としてデータがあるのだ。
歌うことによって筋肉の緊張がほぐれると、コルチゾールというストレスホルモンを減らすことができる。きっと南国の海を疑似体験できるほどの爽快感はここからきていると思っている。
 
もうひとつ明らかに効果を実感できているものがある。それは頭痛が治ってしまうということだ。私は以前から頭痛持ちで、月のリズムによって頭痛が引き起こされてしまうことがよくある。こういう時がレッスンに重なってしまうと、いつもの勢いはどこへやら「もう今日は休んじゃおっかなー」と教室に向かう足が重くなる。しかし、そこで「歌えばそんなもの吹っ飛ぶから!」と自分を鼓舞し教室に行って声を出せば、レッスンが終わるころには「そういえば、頭痛いんだった」と忘れてしまうほどに痛みがスーっと消え去っているのである。
 
実は歌うことによって、神経伝達物質であるエンドルフィンが出ることがわかっている。このエンドルフィンはモルヒネに似た鎮痛作用のある物質である。どおりでちょっとした頭痛なら治ってしまうわけである。副作用のある鎮痛剤を飲むより、なんて健康的な治し方なのだろうか。
 
そして何と言っても、やはり一番はグループで歌うことで喜びや感動を共有できることが大きい。私に限らずレッスンを自粛するメンバーも多いなかで、全員が揃うということがこのところかなり難しい状況であった。
 
それが、今日は全員が揃っていた。久しぶりの再会に歓声が上がる。
仕事が多忙で遅れていた最後のメンバーが到着した頃には終了15分前になっていた。
「よし、歌おう!」改めて気合いが入る。
 
ゴスペルはソプラノ・テナー・アルトの三声から成り立っている。遅れてきたメンバーはソプラノ担当。主旋律という、いわば歌の中心となるメロディーラインを歌うことが多い。ソプラノがいないゴスペルは唐揚げのない唐揚げ定食みたいなものだ。もちろんテナーもアルトも大事な要素を担っているが小鉢やみそ汁だけでは満腹にならないのと一緒だ。
 
先生が選んだ曲は「海の声」だった。これはauのCMでも使用されていた為、きっと聞いたことがある方もたくさんいるだろう。オケが流れて三線の音が教室に響く。
 
ゴスペルでは「ユニゾン」といってパートごとにわかれず一つの旋律をみんなで歌う場合もあるが、この曲に関しては歌い始めからいきなり三声にわかれる。そのためみんなの力量が試される曲の一つだ。でも、自分の音程ばかりを気にして歌えばよいというものでもない。お互いの音色に耳を傾けながら自分も発声することによって響き方が何倍にもなるからだ。みんなが気持ちを一つにして歌う事が出来ている時は教室にボワーンと余韻のようなものがこだまして共鳴していく。それはまるで除夜の鐘がいつまでもいつまでも響いて余韻を残すさまに似ている。その心地よさを感じながら歌の世界にどんどんと引き込まれていく。もう、この時は日常生活の一切の事……家で夫と留守番をしてくれている子供たちのことでさえ一瞬忘れ「無」の状態だ。その状態がなんとも言えないほどに気持ちがいい。
 
歌い終わると、みんな満足気に「ふう」と息を吐き切った。
接触を禁じられ、ディスタンスを命じられてきたこのコロナ禍で人との心の距離がこんなにもグッと縮まる事を体感している私は幸せ者だ。だから、みんなで歌うことをやめられない。
 
教室を出ると今日歌った「海の声」を自画自賛しながら笑い合ってお互いの家に帰っていった。
コロナに打ち勝つために免疫の強化も叫ばれているこのご時世、食事・睡眠・運動に加えて「歌うこと」をリストに入れていただくのはどうだろうか。きっと想像以上の楽しさがあなたを待っているかも? しれない。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



関連記事