何にでも「イエス」と言っていた私が出会った、「ノー」を選択することの大切さを教えてくれた本《リーディング・ハイ》
記事:のんさ~ん!(リーディング・ライティングゼミ)
私は正真正銘の欲張りだと思う。自分で言うのもなんだが、本当に欲深いのだ。これをよく言うとすれば、好奇心旺盛だということだろう。就活時のエントリーシートにはいつも好奇心が旺盛だと書いていた。
私は「欲張り」も「好奇心旺盛」なとこも自分らしくていいところだと信じて疑っていなかった。だって、私のそういう部分が多くの人との出会いを引き寄せ、たくさんの経験という人生の産物をもたらしてくれたからだ。
でも。
果たして本当にそうなのか? という疑問を持たずにはいられなくなった。
「おやつはチョコとクッキーどっちがいい?」
と聞かれたら迷わず「どっちも好きだから両方!」と答え、
サークルもバイトも遊びも海外渡航も全部頑張りたい! 気になるイベントには少しでも気になったら行く! という貪欲な精神。
そんな私で、この先やっていけるのだろうか? いや、こんな私が許されたのは大学生という親から守られた環境にいたからであって、この先、生きていくためには、このような私とはおさらばしなければならないのではないか?
今まで自分がよしとしてきたことが、この本によって一気にひっくり返されたのだ。それはもう、天と地がひっくり返るように。のんきに浮き輪に乗って海にぷかぷか浮いていたら、いたずら男子がやってきて、浮き輪ごとひっくり返され、海にドボンと落ちるように(笑)
私はこの言葉にひっくり返された。
「絶対にイエスだと言いきれないなら、それはすなわちノーである」
私は、は? そんなことできるわけないと思った。やりたいことはいっぱいあって、どれも自分にとって大切なことだと思ったのだ。いろんな人から誘われる飲み会はどれも私は行きたいと思う。チョコレートもクッキーもアイスも好きな私はどれも食べたいと思う。それは自然なことではないのか? しかし、読み進めていくと、自分には絶対にやりたい! というものがないのだと気づかされた。なぜなら、成功する人は絶対にやりたいと思うことにしかイエスといっておらず、残りの大半にノーと言っているのだ。
そういえば、私の身近にもそういう人がいた。彼女は、自分の好きなことのできる仕事に就き、日々の日常から質の高い学びを得ている誰もが憧れを持つような人である。
彼女は好きな洋服しか着ないと言っていた。自分の持っている服はすべて大好きなものである、と。決して中途半端に好きなものはないと。考えてみると彼女は、お金を支払っていようが、時間の無駄だと思うイベントには普通ためらいそうなものだが、すぐに退室していたし、後輩からのお願いに対しても、今は仕事が楽しくてそっちを大切にしたいから、という理由で丁寧に断っていた。後輩も、それなら仕方ないと、いやな顔一つせず、そのことを受け止めていた。
彼女の姿をみて思うことは、周りの目に左右されず、いつも自分にとって本当に大切なものは何かを考え、うまくノーを言っている。つまり、膨大な選択肢の中から、本当に重要な物だけを選び、残りのすべてを捨てているということだった。
考えてみるとそうだ。イチローは幼いころから野球一筋でやってきて、その他のものを捨ててきたからプロ野球選手として、今もなお世界を轟かせている。それが、週に三日を野球。残りの各週二日をバスケと卓球。としていたら、どうだったろうか? 一週間すべてを野球に費やすのと、週に三日を野球に費やすのでは、その後の将来には大きな違いが出てくることは当然のように思う。
だから、自分が好きでやりたいと思うこと一筋にやっている人は、自分のやりたいことで成功しているのだ。何てシンプルな法則だろう。そのことを
「絶対にイエスだと言いきれないなら、それはすなわちノーである」
という言葉に気づかされたのである。
そこで私は、自分にとって今何が一番大切なことなのかを考えることにした。今の自分にはやりたいことややらなければならないことがたくさんある。卒論、ダンス、バイト、演劇、文章を書くこと、本を読むこと……
それらの中で今一番大切なことは何なのか? 優先順位の一位に来るものは何なのか? 考えに考えた末、私は自分の夢を思い出した。文章と身体表現で人に夢や感動を届けたいという夢……
ならば、今一番大切なことはダンスと書くことだろう。私はそれだけにイエスということに決め、日々を過ごし始めたのだ。
すると、色んな誘惑が私を誘ってきた。友人からの遊ぼうというお誘い、突然の魅力的なイベントとの出会い。時には負けてしまうこともあったが、ダンスの練習と魅力的なイベントがかぶった際にダンスを選んだ。すると、その行動を選択した後、やっぱり自分にはコレなんだ! という充実感にあふれた。しっかりと日々を積み重ねている自分に自信が持てた。友人からの誘いも文章を書くために断った。理由を告げると、その友人は私のことを応援してくれた。本当に大切にしたい友人だと思えた。
そこまで重要ではないことにとらわれると、本当に大切なものが分からなくなるが、本当に重要なことを選択すればするほど、自分にとっての大事な物がよく見えてくるのかもしれないとい学びも得ることができた。
しかし、本当に大事なことだけを選び、その他を捨てるのには、痛みを伴うこともある。みんながワイワイと遊びまわる時に自分は必死になって踊り、一人孤独にパソコンに向かい続けるということだからだ。羨ましさが嫉妬に変わり、自分の弱い心の部分が表に出てくるのだ。そこまで大事ではないことを中途半端に選び、人生を楽しむことができたらどんなに楽だろう、と思う。でも、そんな人生で何か大きなものを、自分にとって一番大事だと言えるものを何か得られるのだろうか? 私はやっぱり、自分の夢をつかみたい。だから、今までの少しでも興味があれば欲しがるという自分におさらばしなければならない。本当に欲しいと思うものだけを取り入れていく自分になっていくんだ。私はこの本で、今までの欲張りな自分を捨てることを選択したのだ。
多くのことをするのが悪いとは思わない。でも、これから社会にでて、自立して生きていかなければならない私にとって、勇気をもって多くのことにノーということは一番重要な人生の課題だと思う。本当に重要なことにイエスと言い、それ以外にノーと言えなければ、私の夢はいつまでたってもかなえられないことが分かったからだ。夢をかなえるということは、つまり、好きなことを仕事にするということである。とすると、仕事をするということは、重要なもの以外を捨てるということと同じではないか。この前提には、好きなことを仕事にするという人生を選び、もう一つの楽な人生を捨てるということがあるが。
しかし、人は捨てられないものが多いように思う。いつか着るかもしれない洋服。なかなか別れられない恋人。そういうことが、仕事に生きがいを持てずにいる人と重なっているように感じる。上記の例に出したような彼女やイチロー選手をみても言える。やりたくないことや、まあまあやりたいことを捨てきれずにいると、そういうたぐいの仕事にひとは自ずと就くようになるのかもしれない。
好きなことを仕事にするというのを言葉にすると簡単だが、その中には計り知れないような勇気のいる「捨てる」という選択が詰まっている。今自分のやりたいことを生業にしている人を見ると、その人の上手な「捨て方」に気づけるようになった。
もし、誰もが自分のやりたいことを仕事にしたいと思っているのならば、表にはそれを出せずにいるけれど、本当はそう思っているとしたら、この本はそういう人たちの考え方をひっくり返して技術的にも精神的にも背中を押してくれる本だと思う。
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