狂ったように忙しい毎日から抜け出し、旅にでも出たいよ《リーディング・ハイ》
記事:のんさ~ん!(リーディング・ライティングゼミ)
私は最後の力を振り絞る勢いで天狼院書店のあの急な階段を上った。
その頃の私は毎日がめまぐるしく過ぎ去っていた。早朝から家事をこなし、アルバイトを夕方まで、その足でバタバタダンスのレッスンへ向かう。これが一日の流れであり、それだけを繰り返す日々だったのだ。レッスンが終わり家に着くのは午後十時をとうに過ぎている。それから夕食に、お風呂に、あれやこれやすると十二時を迎える。くたくたで帰ってきたというのに、朝はまた早起きで七時には起きる。そういう生活であった。それだから、遊ぶ暇なんてないし、ましては旅に出るなんて、できるわけがない。それくらい日常に追われていたのだ。
ここで聞きたい。同じ生活ではないにしろ、このような狂ったように忙しい生活を送っている人々は、日本中いたるところにいるのではないか? つまり、何も私だけに限った話ではないということである。おそらくサラリーマンに主婦に、バイトにいそしむ学生に、大企業で働くエリートさん。多くの人々が私と同じように、こう思っているのではないかと思う。
狂ったように忙しいこの日常から抜け出し、ゆったりとした旅にでも出たいよ、と。
あ~。私はこのクタクタになって帰ってくる日常から抜け出し、どこか旅へ出たいのだ。少しでもいいから抜け出したい。抜け出したい。非日常を感じたい。しかし、現実的には、なかなかそんな旅する時間を取ることができない。経済的にも余裕がないのだ。あ~。でも心が癒しを求めている。心が休みたいと言っている。どうしたらいいのだ。そんな自分自身の心の訴えが極限状態に来たため、私は半ば本能的にここ、天狼院書店を訪れていたのである。
とはいっても、一日中この場所でリラックスできるわけがなかった。約一時間後には次のスケジュールが私を待ち構えていたのである。しかし私は、その一時間もない時間の中で確実に旅をすることができたのである。私の、狂ったように忙しいこの日常から抜け出させてくれる奇跡のような一冊に出会ったのだ。
この本を読めば、5分で旅に出て、帰ってくることができる。旅を終えた後、私は心に落ち着きと余裕を取り戻し、よし、もうひと踏ん張りするか、と思えたのである。
この本のすごさはここにある。もったいぶるのはやめにしてここで一気に暴露してしまおうと思う。それほど私はこの本に日々の疲れやうっぷんを晴らしてもらったのである。私と同じ状況にいるであろう多くの人にこの本を知ってほしい。
それは、それは、それは!
あの大人気イラストレーター、ゲミさんが表紙の絵を飾っている
「5分で読める! 一駅ストーリー 旅の話」である。
この小説は、「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した小説家たち39名が○○字で旅のストーリーを完結させている。有名どころの小説家から、マイナーな小説家が物語っていくため、かなり濃密な5分間を味わうことができる。
思えば、旅というものはどんなものであろうか? ドキドキハラハラする冒険のような旅もあれば、美しい景色を眺めながらゆったりとした旅もある。ロマンチックな恋の旅もあれば、背筋がゾクゾクするようなスリルな旅もあるかもしれない。旅の可能性は無限大だ。だから本当に様々な旅がある。旅は無限にある。
この小説はそれを感じさせてくれるのだ。旅をする時間のない私に、まるでガタンゴトンと揺れる列車に乗って美しい山の景色を見ているような旅でしか味わえない感覚を与えてくれる。だから、休む暇なくせっせと働きがちな日本人にはもってこいの一冊だと思うのだ。これを読めば、5分で旅に出て、日常生活から抜け出せる。非日常生活が私たちの心をいやしてくれる。
私はこの本を天狼院のスタッフの方に教えてもらった。疲れ切っていた私ではあるが、そんなそぶりを見せないよう、いつも通りの会話していたところ、この本を勧めてもらったのだ。あの方は私の心の叫びを感じ取っていたのだろうか、やっぱり本好きの天狼院書店のスタッフさんは一味違うなと感じる。と言いつつ、その書店員さんがすすめてくれた本の中のお話は、不倫が原因で旅先で女が男を殺してしまおうとする物語であったのだが(笑)まあ、これも想像もできない偶然の驚きという旅の醍醐味であるとしよう。
狂ったように忙しい毎日を過ごす人は、旅することを諦めてしまうように思う。しかし、この本に出会って、諦めることなんてないと思うことができた。どこへ行き、どんな旅をしたい? 目次をみれば、ワクワクするような多種多様な旅がすでに準備されているこの本を、ぜひ忙しい毎日を過ごしている人にこそ、読んでみてほしい。そしたら、狂ったように忙しい毎日を送る人にも、旅をする自由が開かれる。
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