なよなよしている場合じゃない《リーディング・ハイ》
記事:住所不定☆ジョブズ(リーディング・ライティング講座)
僕はもともとビールは好きではありませんでした。というより、アルコール全般が好きではなかったです。父はお酒が好きで、その時呑んでいたのがビールだった事から、一番身近だったアルコールはやはりビールでした。ですので、お酒=ビールという図式が、僕の中では出来上がっていました。
成人してからは呑む機会が当然あるわけなのですが、やはり苦手でした。呑み会の最初の一杯目はビール、が定番だと思いますが、とにかくあのビールの苦味が嫌いでした。だからと言って呑み会に出ない理由にはならないので、ビールに慣れるために、家でいやいや呑んでいる時期もありました。
ある時、スーパーで買い物をしていると、珍しいラベルの缶ビールを見つけました。値段も普通のビールよりも高かったのですが、何となく気になり買ってみました。そして、いつも通りビールを呑む練習をしようと思い、買ったビールを呑んだところ驚きました。これまで呑んだビールとは全く違う味で、ビール特有の苦味も少なく、とてもフルーティーでした。世の中には、こんなビールもあるのかと思い出会ったのが「よなよなエール」でした。この出会いをキッカケにビールが好きになり、これまで苦手としていた普通のビールも段々呑めるようになりました。
普通のビールを飲み始めたというのも、先ほども述べたように、よなよなエールは高いので日常的には買えず、せいぜい週末くらいしか呑めなかったからです。それでもよなよな効果は大きく、さらに小麦を使ったビールにも出会い、僕の中で「よなよなエール」と「銀河高原ビール」はツートップに成長しました。
しかしある時、スーパーの商品棚からそれらのビールが姿を消しました。残ったのは、普通のビールだけです。欲しいと思いましたが無いもの買えないので、別のもので代用していました。そして人の慣れとは怖いもので、いつしかよなよなエールが呑めなくても平気になり、そのまま忘れてしまいました。
すっかりアルコール全般に慣れ、いろいろなお酒を飲み始めましたが、最近の主力はもっぱら「第三のビール」です。やはり、値段が安い事が大きな理由で、毎日呑むのならこれに限ります。第三のビールは微妙に売り場が普通のビールとは違う場所なのですが、久しぶりに美味しいビールが呑みたいと思いプレミアム系の売り場に行きました。すると、思いも寄らず、あの懐かしいラベル缶が売られていました。よなよなエールです。
しかも、隣には姉妹商品も売られています。なんだか旧友に再開した気分になりました。もちろん購入したのは言うまでもありません。しかし、これまでどうしていたのだろう、という疑問もありました。よく見ると、あちこちで売られており、コンビニにすらあります。以前販売していた時には、これほどいろいろな場所で売られてはいませんでした。
気になりだすと、案外助け舟が見つかるものです。何気なく、いつも通り本屋で物色していると、ありました。よなよなエールを販売している会社の社長の本が。タイミング良く見つかるものだと思いましたが、以前、こんな話を聞いた事があります。
実は僕は「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)」の資格を持っています。その時の研修の中で「視覚障害」について学びました。先生が「本日は視覚障害者が持つ白杖について学びました。恐らく今後は、これまでよりも白杖を持っている人に気付くと思います。それは、白杖を持つ人が増えるわけではなく、学習をした事により意識するようになるからです」と言われました。
まさによなよなエールが、僕にとっての白杖となりました。家に帰り早速読んでみると、そんな事になっていたのか、という感じでした。棚から一斉によなよなエールが無くなった時、会社が潰れそうになっていたという事なのですが、そこからの復活劇がとてもドラマチックでした。大きい会社ではない事から、普通の事をやっていてはダメで、僕の感覚としては「想像していた事の上」を行くのではなく、「斜め上」でした。
通常であれば怒られる事でも「マジメにふざけている」となると、話は違うんだ、と思い知らされました。また、会社が潰れるかどうかの瀬戸際で実行した事や、気付かされた言葉の数々には重みがあり、説得力がありました。僕は、本を読む時には付箋紙を準備しています。それは、気になった事や自分にとって重要と思った部分に対して付箋紙を貼るためなのですが、この本にはかなりの数の付箋紙が貼られました。なんだかイソギンチャクみたいです。それだけ僕の心に突き刺さったという事です。
そんな僕にとっては「人生の教科書」とも言える本なのですが、こんなに良い事が書かれていると、何だか人に教えたくなくなります。自分だけの宝物を見つけたというか、掘り出しものを見つけたというか。自分だけのものにしたい独占欲が出てきました。しかし、記事を書く以上は、それではいけません。そこで、本のタイトル「だけ」を伏せたいと思います。本にたどり着くヒントは記事の中に沢山散りばめましたので、万が一にも解答がわかった方は、周りの人に言いふらす事なく、黙ってレジに本を持って行って下さい。大事な事なので、もう一度念を押します。心の中でだけ呟いて下さい。みなさまの大人の対応をよろしくお願いします。
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