メディアグランプリ

いじめることを辞められない私の告白


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:岩間愛(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
私はいじめをしています。
もう、ずっと、何年も。辞めることができません。
 
ここで話すことで誰かの役に立てば、あるいは、私自身が救われることを願って。
 
最初は悪いことだなんて思いませんでした。
何故なら私は正しいことしか言っていないからです。もっとこうした方がいいとか、その選択は良くないといった、些細な助言のつもりでした。私のアドバイスなら彼女の人生を変えられる自信があります。きっともっと幸せになれるし、そうなることは私にとっても嬉しいことです。
だから、私は正しいことを伝え続けました。
 
「本当にできると思って言ってる?」と現実を見てもらい、
「失敗したら結構恥ずかしくない?」と覚悟の弱さを確認します。
 
危険な道へ進まないようにするのも私の役目。
子供のように目をキラキラさせながら夢物語を語る彼女に、冷静さを教えます。たくさんの現実的な言葉を並べることはとても大切です。既に何度も繰り返してきているから言えるんです。「これなら大丈夫かも」と根拠もなく出してくる提案に呆れながらも、私は諭し続けます。
こうすると極端に、すべてのやる気を彼女は失ってしまうのです。
 
私は彼女を否定したいのではありません。
やる気を出してもらいたいので、彼女にとって輝いてる人たちをどんどん見せていきます。このままではまずいということを実感してもらう必要があるからです。成功者と呼ばれるような人、世のため人のためにと活躍している人はもちろん、友人たちの素晴らしいところも並べていきます。
 
そして言うのです。「彼らと比べて今のあなたは」と。
コツコツと積み重ねることもできていないのに、自分には向いていないとすぐに諦める。それでいて何者かになりたいなど、聞いてるこっちが恥ずかしい。あなたはそもそも努力が足りなすぎます。
多くの人は、学生時代が終われば真面目に働き、向き不向きに関わらず社会貢献に参加しているのです。家庭を持って、人を守る立場になっている人もいます。サボっている間に、周りの人はどんどん先に行っているのです。どうしてもっと焦らないのですか。親孝行もできないあなたが家族からも見放されてしまうのも当然。
ずっと孤独で、居場所がないのは自分のせいでしょう。
 
「何か私が間違っていますか?」
 
こうやって説教をすると、彼女は黙ってしまいます。
何を言っても無表情のまま聞き流されるようになり、そんな勝手な姿に私はイライラするのです。ひとりじゃ何もできないくせにと言い、ついでに今までのダメなところをこれでもかというくらいにぶつけていきます。昔からそれを繰り返しているのです。
 
私はこのようにして、「自分」をいじめ続けています。
ずっと辞めることはできていません。これが何も生まないことも知っています。
 
「自分には無理」と制限をつくり、
「センスも才能もない、凡人な自分」と無力さを伝え、
「簡単なことさえできない、続かない」という挫折感に陥れていく。
 
私はこれで、小さい頃から大好きで描いていた絵が苦手になりました。
そして今、文字を書くことが苦しくなっています。もっと伝えられる文を書きたいと始めた学びの最中で、ついに挫折がチラついてきました。感情にフタをされたような気持ちが続き、書くことが何もありません。あらゆることに興味が湧かなくなっているのです。そんな自分から出てくる言葉はどれも薄っぺらく、誰の役にも立たない駄文しか生み出されません。書いてる側から自分の横で自分が責め続け、「そんなことをして意味があるの?」と問いかけます。
少し褒められて文字を書くのが楽しくなったという軽い動機で決めた学びでした。まぐれで文章を生み出してきたわけですから、「書かなきゃ」と思えば思うほどプレッシャーに押されていきます。そして実際に書けないことで「ほれみろ、言った通りだ」と、いじめる自分に負けてしまうのです。
 
自分を動けなくするような言葉を何度も投げ、重たい感情で心を埋めていく。
こうなってしまうと、誰かに相談したところで意味がありません。いじめている自分の声が大きすぎて、誰からの言葉も受け取ることができなくなっているのです。
ポジティブなことを言われれば、今のダメな自分が際立ちます。見られている自分とのギャップに嘘をついているようで苦しくもなります。いっそコテンパンに言ってもらった方が楽になるのではとも思えます。なのに実際に言われれば「やっぱり」と激しく落ち込むのです。
 
とにかく自己評価が低く、自分自身を受け入れられず、自信を持てない。
そんな自己肯定感のない人間をつくるのが「自分いじめ」なのです。
 
私は今日から、この自分いじめと徹底的に戦うことを決めました。
いじめる自分の言いなりになる必要はないのです。だからどんな言葉が浮かんでも大きな声で叫びます。
 
「そんなことはない!!」
 
少しは何かが変わるかもしれない。そんな希望を抱きながら。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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