リーディング・ハイ

この本を読んで、その道のプロになる方法は結局あれなんだな……と思った《リーディング・ハイ》


 

記事:菊地功祐(リーディング・ライティング講座)

 

「来年の目標は何ですか?」

 

去年の12月31日、年越し天狼院の時にスタッフさんに言われた言葉だ。

 

参加者全員が23時30分くらいになったら一人ずつ、来年の目標を発表していく。

 

「プロのライターになりたい」

「小説家デビューしたい」

など、皆さんきちんとした目標を発表していった。

 

ぐるっと回って私の番が来た。

 

私は緊張していた。

目標なんて、その時まで何も考えていなかったのだ。

 

何でみんな、ちゃんとした目標があるの……

ただいまプー太郎のフリーターである私には何も目標が思いつけなかったのだ。

 

どうしよう、もう私の番だ……どうしよう。

とっさに出た言葉。

 

それは……

 

 

「メディアグランプリで一位になりたい」だった。

 

三浦さんは

「いいじゃん。わかりやすい! メディアグランプリで一位になれれば、

どこ行っても、書いて食っていけます!」

と言っていた。

 

10月から通い始めた天狼院ライティング・ゼミ。

そこには毎週一回、メディアグランプリに投稿する権利がもらえる。

私はこの数ヶ月間、毎週欠かさず記事を投稿し続けた。

 

三浦さんからオーケーをもらい、記事を掲載させてもらえる週があれば、

問題点を指摘していただき、掲載できなかった記事もあった。

 

三浦さんから掲載不可のコメントが来た時は、泣くほど悔しかった。

ちくしょうと思った。

 

始めの頃は全く記事が通らなかったが、後半になって、ようやく記事の掲載率が上がってきた。

それと同時にライティング・ゼミ生の記事のクオリティに驚いた。

 

めちゃくちゃバズっているのだ。

自分の記事なんて8位に入るのがやっとだった。

 

福岡の川代さんは毎回一位だし、プロフェッショナルコースの人の記事なんて、完全にプロでしょ? て思うほどうまいのだ。

 

私はどんなに頑張っても最高4位だった。

ちくしょうと思った。

 

一回くらい3位以内に入りたい。

いや、エース川代さんを超えて一位になりたい。

 

 

気づいたら私はライティングにハマっていた。

何が何でも一位になってやると思って、いろんなタイプの記事を投稿してみた。

大学生にして2億8千万の借金を背負った親友の話。

肩まで涙を垂らし、泣いた映画のこと。

 

いろんな記事を試してみた。

なのに結果は最高4位。

 

ちくしょう。

 

何がダメなんだ。

どうすれば川代さんに勝てるんだ!

どうすれば三浦さんに勝てるんだ!

 

そう悩んでいたせいか、年越し天狼院で「来年の目標は?」と聞かれたら

「メディアグランプリで一位になりたい!」

と答えてしまったのだ。

 

いや、心の底で思っていたことだったと思う。

メディアグランプリで一位になりたい。

プロのライターとして通用するようになりたい。

 

 

そう思っている。

 

三浦さんは

「ライティングがうまくなりたかったら、書くしかない。書け!」

と言っていた。

 

 

書け! 書け! 書け!

 

書きまくるしかないのだ。

 

 

 

私は恥ずかしながら今年の目標を発表して、次の人の番になった。

ぐるっと一周しているうちに、最後に三浦さんの番になる。

 

「来年の目標はね〜」

そこで三浦さんは9つくらい目標を言っていた。

 

多すぎ……

 

 

てか、本当に全て叶える気でいるからすごい。

来年は1日も休まずにフルスロットルで働くらしい。

 

その時、ふと思った。

 

 

三浦さんが凄いのは、いつもお客様第一に考えていることだと思う。

 

 

ふつう、「来年の目標は?」と聞かれたら、

自分はこうなりたい!
来年の今頃はこんな風になっていたい! と自分のことを発表するだろう。

 

年越し天狼院に来ていた人も三浦さん以外、全員自分のことを話していた。

 

しかし、三浦さんは違うのだ。

お客様をどうしたいという目標を言っていたのだ。

しかも9つも。

 

来年こそお客様を作家としてデビューさせたい。

お客様中心の雑誌を作りたい。

お客様がこうなってもらいたいなど……自分のことは何一つ考えていないのだ。

 

 

全部、お客様にどうサービスができるのか? という視点で目標を語っているのだ。

 

本当にすごい人だなと思った。

 

この場において自分の目標でなく、自分以外のお客様をどうしたいという目標を話すなんて……

 

 

 

天狼院を作り上げたり、ライティング・ゼミでプロ級のライターを育てたりしている三浦さん。

多くの人が三浦さんのことを宇宙人だ、化け物だ、天才だと言っていたりする。

 

個人的にも三浦さんは天才だと思う。

だけど、三浦さんが一番すごいのは常に相手のことを第一に考え続けられることだと思った。

それこそ三浦さんの才能なのかもしれないなと思う。

 

そんな三浦さんだが、最後の目標に

「時間が空いたら出家したいんだよね」

と言っていた。

 

 

そこで私は大学の授業で「禅」というものに興味を持ち、京都の寺に修行しに言った日々を思い出していた。

 

その先生は小説家だった。

芥川賞を受賞したことのある小説家だ。

文章講義の授業だったと思うが、そこで私はその先生から「禅」について話を伺った。

 

その小説家も若い時に本気で禅僧になろうと思って寺で修行をしていたらしい。

そこで瞑想しているうちに何かに気づいて、すぐに小説を書き、その作品が編集者の目に止まり、あっという間にデビューとなったのだ。

 

 

 

その時、私は禅というものを体得できたら自分もクリエイターになれるんじゃないかと思ったのだ。

スティーブ・ジョブズも禅に傾倒していたし、シリコンバレーの人は皆、禅の考え方を大切にしているという。

 

私は京都の寺に行ってみたり、禅関連の本を読むようになった。

 

 

禅を解説することは難しい。

 

言葉以前の領域を文章に落とし込むのは一筋縄ではいかない。

 

そんな時、授業で小説家の先生が解説していた本に出会った。

 

「日本の弓術」という本だった。

西洋の合理主義的な精神の影響を受けて育ったドイツ人の大学教授が、

日本で弓術の師範と出会い、いかにして日本の非合理的で、直感的な思考を必要とする弓術を会得し、禅の境地を体感したかを詳しく書かれた本だ。

 

この本がすごいのは論理的な思考を持つドイツ人教授が、日本の直感的な精神を、祖国の人に紹介する程で書かれていることだ。

 

 

言葉以前の直感的な日本独特の「禅」文化は海外では受け入れにくい。

 

構造的なことを考えてしまうので、直感的な部分までを理解してもらえないのだ。

この本の作者は6年以上師範のもとに通い、毎日何時間も弓術の稽古をする中で、無意識のうちに弓を射る師範の凄さを体感し、弓術をいかにして会得していったかが詳しく書かれてある。

 

この本の中で師範は真っ暗闇の中、弓を射て、一矢目はもちろん、的の真ん中に命中する。そのまま二矢目を打つと、なんと一矢目の矢を真っ二つに切り裂いたという。

 

真っ暗闇の中でそれをやってのけたのだ。

 

「的に当てるのではなく、自分をいるのです」

 

毎日何10回、何100回、何1000回と弓を射る中で、呼吸と同様に筋肉の力を込めることなく射れるようになる。

 

師範クラスの弓術の達人になるまでには血が滲むような鍛錬が必要なのだ。

 

心を無にして弓を射る。

 

その先に弓術の境地があるのだ。

 

そこに禅の境地があるのだ。

 

 

 

 

三浦さんは20代の頃、本気で小説家になろうと1日1万6千字の文章を書いていたという。

その結果、今では無意識の領域で、会議中でも文章が書けるようになったという。

 

真っ暗闇の中、無意識の領域で弓をいた師範のように、三浦さんは無意識の領域でも文章が書けるのだ。

 

本当にすごいと思う。

 

三浦さんはその領域まで達するのに1日1万6千字の文章を書くことを10年間続けた。

 

10年間……

 

 

私は禅を学べば、三浦さんのように、何かクリエイティブな才能を手に入れられると思っていた。

 

しかし、違うのだ。

その道のプロになるには、三浦さんのように血が滲むような努力をしなければならないのだ。

近道などないのだ。

 

私は、2017年はとにかく書いて書いて書きまくろうと思う。

メディアグランプリでも一位になってやる。

 

そのためにも書いて書いて書きまくるのだ。

 

三浦さんは言っていた。

「とにかく書け!」

 

 

書いて書いて書きまくる!

 

そして、いつかメディアグランプリで一位になってやるのだ。

 

 

  
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2017-02-04 | Posted in リーディング・ハイ, 記事

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