リーディング・ハイ

脳にむらむら《リーディング・ハイ》


よしのくん 考える人

記事:toki(ライティング・ゼミ)

 

僕は、至って、極めて、甚だ、平凡な人間です。

ただ、脳にむらむらするのです。

 

 

ぼーっとしながら大型書店の文庫本の棚を眺めていた時です。むらむらセンサーが反応しました。僕は、むらむらセンサーが察知した本を手に取り、カバーのタイトルを見ました。

 

『考えるヒト』

 

むら。

 

著者を見ました。「養老孟司」

 

むらむら。

 

帯を見ました。「世界は脳より広い」

 

むらむらむら。

 

本を開いて目次を見ました。

 

むらむらむらむらむらむらむらむらむらむらむらむらむらむらむらむらむらむら。

 

という訳で、僕はこの本を買いました。

 

脳、脳科学、脳研究というものに対してむらむらするようになったのがいつの頃からか考えてみますと、やはり小学1年生までさかのぼることになると思います。

当時の僕の愛読書、それは養老孟司の『バカな大人にならない脳』です。内容は、子供の脳に対する素朴な質問に養老先生が優しく、分かりやすく答えるというものでした。この本が僕の脳みそに何かしらの刺激を与え、むらむら回路を開いたのは間違いありません。

 

 

書店からの帰り道。僕は我慢できずに本を開いてしまいました。

 

”脳のことはむずかしい。わからない。人はよくそういう。そういっているは、だれか。その人の脳である”

 

なるほど、そういうことか、と僕は納得しました。つまり、僕がこの一文を読んで「なるほど、そういうことか」と納得したのは、僕の脳が納得したということなのです。ん? そういうことだよね? つまり、今「そういうことだよね?」といったのは僕の脳がいったということなんだよね? あれ? なんだか混乱してきた。 ん? 混乱しているのは僕なのか? それとも僕の脳なのか? え? そもそも「僕」って何? 「僕の脳」って何? 分かんない。分かんないよ…………。

 

すみません。ちょっと1分ばかり時間をください。

 

(1分後)

 

”脳のことはむずかしい。わからない。人はよくそういう。そういっているは、だれか。その人の脳である”

 

そうそう、落ち着け、そういうことだ。うだうだと考えて、結局分からないと結論を出したのは僕の脳なのだ。ということは、「僕」=「僕の脳」だといえるんだよな。いや、そもそも、その「僕」っていうのも「僕の脳」から生まれたものだといえるのではないか。そうだよな。

じゃあ、僕が脳にむらむらするのは僕の脳がむらむらしているということか。『考えるヒト』を買おうと判断したのも僕の脳。その本を読んで紹介しようと思ったのも僕の脳。この文章を書いていて、どんどん予想外の展開になっていると混乱しているのも僕の脳。ここからどうしようかと途方にくれているのも僕の脳。一旦書くのを休んで、録画していた「ガキ使」を観ようとしているのも僕の脳。「だめだめ、それでも書き続けなきゃ」といっているのも僕の脳。

あはは、何をしても、何をいっても、何を考えても、全部「僕の脳」なんですよ。分かります? 分かりませんか?

 

それでは、ここまで読んで「つまんない。時間返せ」と思ったあなた、それはあなたの脳が思ったのです。「そんなの当たり前じゃん」ていうのもあなたの脳。「ちょっとうるさいな」ていうのもあなたの脳。「くどい」ていうのもあなた脳。「もう読まない」ていうのもあなたの脳。「今回のこの記事はちょっと…………」と思ったのは、おそらく天狼院書店スタッフの川代さんの脳なのです(ごめんなさい川代さん)。どうでしょう。分かったでしょう。え? まだ分からない? つまり、今「分からない」といっているのがあなたの脳なのです。

 

「やばい。ここまで書いてきた~と思っているのはあなたの脳、ていうのは『考えるヒト』の13ページのパクリになっている。まずいな。消してしまおうか。でも、ここまで書いて消すのは嫌だな。もうパクリですと書いてるしいいんじゃないか? ダメかな。怒られるかな。それは怖いな。でもこの本、めちゃくちゃ面白かったんだよな。読んで欲しいな~。読んでくれるかな? きっと読んでくれるよな。そんなことより、ここまで僕の文章を読んでくださったあなた、めちゃくちゃでごめんなさい。あと、本当にありがとうございました。ぜひ『考えるヒト』読んでください。きっとあなたもむらむらしちゃいますよ。面白いですよ~。ね、読みたくなったでしょう? あなたの脳が読みたいといっていますよ」ていうのは僕の脳なのでした。

 

”とこういうふうに、なにをしても、それは脳だよ、といわれてしまう。つまりそれが人間なのである”

 

***
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2016-05-28 | Posted in リーディング・ハイ, 記事

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